マタニティ&ベビーカタログが新規顧客開拓に大きく貢献

(株)千趣会

職場を離れても末永いお付き合いを

 通販業界第 2位 の(株)千趣会では、ゼネラルカタログ 3 種類、アイテム別・ターゲット別のスペシャルカタログ 15 種類、合わせて 18 種類余の主要カタログを発行、1996 年度で合計約 9,000 万部を配布している。
 同社は全国のオフィスで働く、主に 20 代女性のグループに、オリジナル商品を頒布方式で提供する“職域販売”で成長してきた企業。しかし、女性が職場を離れると、それっきりお付き合いがなくなってしまうという課題があった。そこで「ベルメゾン家族」など、ファミリー向けのカタログを充実させ、徐々に個人顧客を拡大してきた。
 同社が 1987 年 11 月に創刊した「Maternity & Baby」、さらに 3 年後の 1990 年に創刊した 1 〜 13 歳児向けの「CHILD」は、言うまでもなく個人向けのカタログだ。妊娠・出産・育児という女性の人生の中で最も大切な時期をサポートすることがこれらのカタログの目的であるが、これをきっかけとして、一生を通じて、また、家族ともどもお付き合いいただける顧客を開拓し、育てていくという意味合いも大きい。「Maternity & Baby」は有効期限が 1 〜 8 月の春夏号、9 〜翌年 2 月の秋冬号の年 2 回の発行。「CHILD」の発行は、有効期限が 1 〜 6 月の春夏号、4 〜 7 月の夏号、8 〜 12 月の秋冬号の年 3 回である。

カタログ請求者の半数弱が新規顧客

 カタログの告知は、自社媒体と育児雑誌に出稿する広告の 2 本立てで行っている。自社媒体としては「ベルメゾン家族」などのゼネラルカタログを活用するほか、「Maternity & Baby」で「CHILD」を、「CHILD」では第二子出産を控えた人のために「Maternity & Baby」を相互に紹介し合う。また、特に短い妊娠期間を対象にした「Maternity & Baby」の場合には確実に妊娠中の女性の目に触れるよう、頻繁に広告を出稿することが必要との考えから、『ひよこクラブ』『マタニティ』『ベビーエイジ』『わたしの赤ちゃん』などの中から、毎月 5 〜 6 誌にカタログ請求ハガキを添付した広告を出稿。ほかに、(財)母子衛生研究会が発行する母子健康手帳副読本「赤ちゃん そのしあわせのために」にも、カタログ請求を募る広告を掲載。またカタログそのものに、妊娠・子育て中の友人・知人を紹介してもらうためのハガキを綴じこんでいる。
 また、カタログ請求の際には、名前や住所のほかに、出産予定日や、何番目の子どもかを記入してもらっており、「Maternity & Baby」で商品を購入し、次のカタログの発行時にまだ出産を迎えていない人には、改めて請求がなくても新しいカタログを送っている。一方で購入歴があり、すでに出産予定日をすぎた人には「CHILD」が届く仕組みだ。同じく「CHILD」の実績顧客には、次号を引き続き送付する。
 カタログ請求件数は発行部数以上に多く、次のカタログが発行される約 1 カ月前には在庫がなくなる状態。請求者に次号発行までお待ちいただくことも稀ではない。「Maternity & Baby」「CHILD」とも、自社媒体によるカタログ請求が半数強、残りが前述の育児雑誌などへの広告出稿によるものだ。

信頼、安心を得る“好品質”“高付加価値”商品の提案

 掲載商品の開発・選定に当たって最も重要視しているのは、商品の信頼性、安全性、および価格に見合った価値を持ち、お客様から好まれる“好品質”性だ。さらにオリジナル商品には、機能性、ファッション性など、同社ならではの付加価値がプラスされる。
 たとえばマタニティ用のスパッツは、母体を冷やさないように、また着用が楽なように股上を十分にとりながら、流行を採り入れて足首を細く仕上げてある。国内では年間に数件、乳幼児窒息死などの事故があるために、同社では“うつぶせ寝”に対応したベビー寝具は取り扱わないが、ベビーベッドのマットを、万が一うつぶせに寝ても危険が少ないように硬めのものを採用した。またマタニティ専用のインナーウェアに関しては、メーカーとの協力体制により、独自のカラー展開をするといった具合である。
 現在取り扱っている商品のうち、衣料品はほとんどがオリジナル。商品企画はカタログ発行の約半年前にでき上がるが、MD スタッフは今売られている商品の動向をみながら、生産に入る直前まで変更、改良を繰り返す。
 仕入商品については、業界基準をクリアした高品質の商品を選び、市場競争力を保つため、同社が主導して価格を決定。最近では、大手メーカー 3 社の紙おむつ 4 パックをセットにして特価で販売し、顧客の支持を得ている。
 商品以外にも細やかな気遣いが必要な面は多い。たとえば懇切丁寧な商品説明。はじめて出産を迎える女性には、わからないこと、不安なことが多い。ベビー用のインナーは赤ちゃんの肌を痛めないように縫い目が外側にあるといった、半ば「当たり前」のことであっても、カタログで詳しく説明する。また、“死産”“苦労”と読める 4,300 円、9,600 円などの値付けは極力避けているという。
 同社では、年間 6 回、モニター会を開催している。テーマによって、顧客、カタログ請求はしたが購入していない人、これまで同社とお付き合いのない人などさまざまなグループから出席者を募り、商品やカタログについての率直な意見を収集。これをカタログや商品の企画に反映している。

新市場開拓に貢献

 「Maternity & Baby」の掲載商品は約 1,300 点。商品ジャンル の掲載シェアは、マタニティウェア、インナー、ナイティを含むマタニティ衣料が約 62%、ベビー衣料が約 10%、内祝いギフトが約 10%、以下、インテリア、家庭雑貨、服飾雑貨の順に続く。
 妊娠 2 〜 3 カ月目にカタログを取り寄せ、6 〜 7 カ月目にマタニティ衣料を、8 〜 9 カ月目にベビー衣料を、それぞれ数万円ずつまとめて購入するというのが平均的な購入パターンだ。一般衣料では春先に半袖が売れるなど、シーズン前倒しで商品が動くが、マタニティの場合には必要な時になってから注文するという傾向が強い。
 「CHILD」では衣料品が掲載シェアの約 70%を占める。中でも値頃感を追求したオリジナルの遊び着とブランド衣料に人気があり、最も良く売れているのは 100 〜 120cm サイズのもの。衣料品以外のオリジナル商品として、写真を整理するための可愛らしいシールなどが付いたアルバムや、子ども部屋のファブリック用品などを販売しており、好評だ。ほかに、入園・入学式用のフォーマルウェア、ランドセルなども扱っている。客単価はこちらも数万円である。
 「Maternity & Baby」「CHILD」の実績顧客には次号の同じカタログのほか、「ベルメゾン家族」が届けられる。また、商品に同梱するパンフレットなどで同社が発行しているほかのカタログについても紹介し、カタログ請求を促進している。
 「Maternity & Baby」と「CHILD」は、顧客を“オフィス”から“ファミリー”につなぐ橋渡し役であると同時に、オフィスで出会えなかった新規顧客を開拓するツールでもある。入口は、より広く。顧客接点は、より厚く。この両面から、2つのカタログは同社の「ファン拡大に大きく貢献している」(ベルメゾン第一事業部 衣料一部 次長 加藤斉氏)のである。

「Maternity & Baby」と「CHILD」

「Maternity & Baby」と「CHILD」


月刊『アイ・エム・プレス』1997年5月号の記事