フランスの香りあふれる引出物を満載 ボン・メサージュ

(株)プランタン銀座 クラブ・ドゥ・マリアージュ

2人だけの挙式をコーディネート

 プランタン銀座では、開店から 3 年後の 1987 年、 1 年以内に結婚を控えたカップルの挙式、新生活をお手伝いする会員組織「クラブ・ドゥ・マリアージュ」をスタートした。同店のコア・ターゲットは 20 〜 30 代の女性。ちょうど結婚を考える年齢にある彼女たちのために、心に残るひと味違った“結婚”を提案、サポートすることが目的だ。
 入会案内は基本的に店内で行っている。貴金属、パーティウェア、食器、家具などのブライダル関連用品の各売場に案内のボードを常時、設置。また同店では毎年春、秋の 2 回、それぞれ約 2 カ月間ずつ「プランタン銀座 ブライダルフェア」を実施しており、この期間中には店内ポスターなどでもクラブの案内を行う。
 入会金や会費は無料。入会申込書に㈰カップルそれぞれの氏名、生年月日、住所、勤務先名、㈪挙式日、会場名、挙式スタイル、㈫クラブを何で知ったか、㈬これから用意する予定のものを記入し、クラブ・ドゥ・マリアージュのカウンターか、貴金属、またはパーティウェアの売場に提出するだけで入会できる。期限は挙式の翌月まで。
 入会者には会員証「マリアージュ・パス」が発行される。同店内で買い物をする際にこのパスを提示すると、売場係員がレシートにスタンプを押す。これをクラブのカウンターに持参、パスに金額を登録すると、退会後にまとめて総金額の 5%の商品券が郵送される仕組み。プランタン銀座カードの割引サービスとの併用も可。またパスを提示することによって、 途、パーティウェア、ジュエリー、寝具、海外ハネムーンなどブライダル関連商品の 5 〜 10%割引特典が受けられる。
 会員は入会から 1 年以内に退会し、入れ替わっていくわけだが、入会者数は半年に約 2,000 人で、常時平均約 3,000 人の会員を抱えている。女性は 25 歳前後、銀座近辺の企業に勤めている人が多い。会社帰りに女性がひとりで相談に立ち寄り、希望を具体化して、休日に相手の男性とともに確認や申し込みに訪れるといったパターンが目立つという。

1カップルが平均3〜4点のサービスを利用

 クラブ・ドゥ・マリアージュが提供するサービスは、式場紹介、式のプロデュース、ブーケや会場装花の手配、リムジン・サービス、招待状作成、ヘアメークなど多岐にわたり、そのサービスひとつひとつに、クラブ・ドゥ・マリアージュならではの工夫を凝らしているのが特徴。たとえば式場については、「クイーン・アリス」「オテル・ドゥ・ミクニ」などの都内各地の人気レストランでのレストラン・ウェディングを提案している。また、最も利用が多い「アーティスティック・ブライダルアルバム」の撮影は、広告や美術写真で活躍中の 8 人のカメラマンの中から指名できるシステム。式当日、会場に飾るウェルカムボードは、今人気のカリグラフィーのものを用意。同店でカリグラフィーの講座を持つ、日本カリグラフィー協会の小田原真喜子氏が監修のもとに製作する。また、招待状に使うカードを、提携先であるフランスのパリ・プランタンから取り寄せるといった具合だ。
 クラブの運営に当たる 5 人のスタッフが、フランスを中心としたヨーロッパのトレンドを採り入れながら、品質が良く、しかもリーズナブルな価格で利用できるサービス、商品をラインナップ。これを会員のニーズとマッチングさせていくわけだが、できるだけ結婚する 2 人の希望を採り入れられるように、クラブ・ドゥ・マリアージュでは各サービスをセットではなく、単品で提供している。平均して 1 カップルが 3 〜 4 点のサービスを利用するという。

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店内で配布している「クラブ・ドゥ・マリアージュ」の入会案内パンフレット

選べる引出物「ボン・メサージュ」

 クラブ・ドゥ・マリアージュの人気メニューのひとつに、1990 年に開始した「ボン・メサージュ」がある。これは結婚式に招かれたゲストが好きなものを選べるカード式の選べるギフト。カード式のカタログは、ハードカバーが付いたノートの扉裏側のポケットに、商品の写真と説明が掲載された 20 枚のカードが入った凝った作りだ。料金は送料・システム料込みで 1 件 4,500 円。ワイン、クッキーなどの食品・飲料から、システム手帳、パスタパン、ヘンケル万能バサミ、洋食器、和食器、パジャマ、水彩色鉛筆など、ハイセンスな品物が 38 アイテム揃っている。スタッフが同店の取扱商品の中から暮らしを豊かにするハイセンスな商品を選び、また、申し込みの動向を見ながら年 1 回のペースで掲載商品を入れ替えているが、洋食器をはじめ、フランス製品が1/4 以上を占める。グリルパン、パスタパンなど実用的な家庭雑貨の人気がやや目立っているというものの、すべての商品にまんべんなく注文がくる。注文ハガキのフリーアンサー欄には「とても素敵なものが多くて、選ぶのが楽しかった」「どれもほしくて選ぶのが大変でした」といったコメントが多数寄せられるという。
 ボン・メサージュは年間約 350 人の会員に利用されている。結婚式の引出物として、また二次会の出席者への記念品として 1 回に約 50 〜 100 件まとめて使われるケースがほとんどだが、結婚や出産の内祝いとして数十件の単位で利用する会員もいる。

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「ボン・メサージュ」のカタログはおしゃれなノート仕立て。いつまでも記念に残るように、と考えられたかたち

クラブをきっかけに、末永いお付き合いを

 クラブからの発信は、挙式予定の 3 カ月前に送るダイレクトメールのみ。会員とのコミュニケーションは、ほとんどが会員が自発的に訪れるカウンターで交わされる対話だ。入会手続きのために、店内の買物金額を登録しに、また、種々の相談のために、約 1 年にわたって会員と交わす会話時間は合計すると長時間におよぶ。退会までには名前を覚え、顔馴染みになる会員が大半だ。
 挙式が済んで、会員が退会のためにパスを返却しに訪れたら、クラブとのお付き合いはひとまず終了。その後は、第一子誕生を電話で通知すると、記念品としてベビー服がプレゼントされるという“おまけ” がつくが、これで会員はクラブ・ドゥ・マリアージュを卒業していく。
 しかし同店と会員 OB、OG とのお付き合いはこれで終わるわけではない。プランタン銀座ではプランタン銀座カード会員など、さまざまなクラブを組織しているが、これらの顧客データベースは一元管理されている。クラブ・ドゥ・マリアージュ会員にはブライダル関連商品の売場やイベントの案内が、また、OB、OG にもベビー服などの案内が継続して届けられるシステムになっている。
 全店をあげて、一生に一度の晴れの日を彩るサービスを提供する。「ここでご満足いただくこと」(サービス事業部 クラブ・ドゥ・マリアージュ ブライダルビジネス担当次長 熊本満里子氏)で、コミュニケーションを強化、顧客固定化を図ることがクラブ・ドゥ・マリアージュの究極の目的なのだ。


月刊『アイ・エム・プレス』1997年4月号の記事