カード利用促進に確かな手応え

マスターカード・インターナショナル・ジャパン・インク

クローズド懸賞でカード利用を促進

 マスターカードは、日本では 17 のカード会社と提携し、2,480 万枚以上のカードを発行している。最近ではメーカーや流通業がポイント・システムを付与した新たなクレジットカードを発行する動きが相次いでいることなどから、カードホルダーの数は順調に増加を続けている。しかし肝心なのは、カード利用額の向上である。
 そこでマスターカードでは、①カード利用促進、 ②会員が保有しているカードの中でのマスターカードのメイン化、③休眠会員の活性化、④ブランドイメージの向上、⑤新規会員開拓を目的に、1993 年から 1995 年までは年に 1 回、1996 年には春と秋の年 2 回、ギフトカードや各種プレゼントが当たる懸賞を実施している。スタート当初から応募受付方法のひとつに音声自動応答装置を採用してきた。
 この懸賞は、キャンペーン期間中の利用が一定額に達すると応募の権利を取得できる仕組み。
 マスターカードの場合、直接カードを発行するのは、たとえばユーシーカードや日本信販などの提携先。ともすれば、カードホルダーには「マスターカードを持っている」という意識が希薄になりがちだ。キャンペーンの実施には、カードホルダーに意識してマスターカードを利用してもらい、その使い勝手の良さを再認識してもらうことによってロイヤリティを高めようという狙いがある。またこれは同時に、提携先カード会社を側面から支援するという意味合いを持っている。

幅広い層に支持される景品の設定

 1996 年春のキャンペーンは、5,000 円の利用で約 1 万円相当のプレゼントが当たるコースと、3 万円の利用で 5 万円のギフトカードが当たるコース、いずれかに参加できる仕組みだった。口数にして 17 万の応募を得てキャンペーンとしては成功を納めたが、会員にギフトカードかプレゼントか、いずれかのコースを選ぶ手間をとらせるために仕組みがわかりにくい、1 万円相当ではプレゼントの選定に限界があり、結果としてギフトカードのコースに人気が集中したなどの反省点があった。
 96 年 4 月の景表法改正によって提供できる景品の額が拡大すると、同社ではプレゼント内容のグレードアップを図った。10 月から実施した「ホットチャレンジ ’96」では、3 万〜 5 万円相当のプレゼントを 4 つ設定。内容は「マスターカード PGA グランドスラム・オブ・ゴルフ キャディバッグ」「ブリヂストン マウンテンバイク」「オプティマ製ピクニックセット」および「ワールドカップ・フランス ’98 オリジナルグラウンドコート(ペア)」。マスターカードがスポンサーになっている PGA やワールドカップのオリジナル製品は、ほかでは手に入らない品物。どれも、自分ではなかなか購入しないがプレゼントされれば嬉しい、それがあることによって生活に潤いが生まれるといった付加価値を基準に、100 以上の候補の中から選定した。高額ということだけではなく、ひと味違うエッセンスが備わったものを提供することによって、マスターカードのイメージの向上と定着を狙っている。
 1 回の応募でチャンスは 3 回。まず応募者は全員、 100 人に 10 万円分のギフトカードが当たる「ギフトカード賞」にノミネートされる。これにはずれた人は、前述の 4 つのプレゼントのうち希望の品がそれぞれ 300 人に当たる「アクティブグッズ賞」、さらにこれにはずれると、5,000 人にオリジナルテレカが当たる「マスターカード賞」への参加権が得られる。
 カードホルダーは 18 歳から 70 代以上まで実に幅広い年齢層にわたる。いかにプレゼント品を厳選しても、すべてのカードホルダーの要望に応えることは難しい。そこで懸賞の入口には、10 万円のギフトカードを置いた。加えて前回までと異なり、応募に当たってコースを選択する必要のないシンプルな仕組みを採用し、より多くの応募を喚起したのである。
 「ホットチャレンジ ’96」は、期間中の利用額 1 万円につき 1 口、2 万円なら 2 口、3 万円なら 3 口…というように、ひとり何口でも応募ができる。10 月 1 日から 12 月 31 日までの利用が対象で、応募期間は 97 年 1 月 16 日まで。さらに 1 回の応募で何口分応募してもいいシステムを採用しているため、端数の利用額も有効に活用できる。と言うのは、たとえば利用額が 1 万 3,000 円であった場合、1 口ずつしか応募できなければ 3,000 円の端数は切り捨てられることになるが、複数口の応募が可能ならば、あと 7,000 円の買い物をして2口分申し込めば良い。これによってカードホルダーは、「あともう少し…」と、さらに利用意欲を向上させることになる。

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提携カード会社の受付カウンターに貼り出したポスターと、必要事項を書きこむだけで応募できる申込専用ハガキ

応募はひとり平均6口

 キャンペーン前の買い控え防止のため、告知はキャンペーン開始当日から開始。カードホルダーの活性化が第一の目的であるため、告知は主に、請求書に同封するパンフレットと会員誌で行った。また、提携カード会社の窓口にも応募専用ハガキを置いた。
 そのほか請求書を送らない休眠会員と、見込客向けには、新聞および雑誌広告を活用した。新聞は朝日と読売の全国版にそれぞれ 1 回。雑誌広告は『週刊文春』『週刊現代』『an an』『SPA』『FRIDAY』『レタスクラブ』の 6 誌に期間中 3 回ずつ出稿した。
 その結果、応募総数は約 15 万、口数では約 100 万に上った。ひとり平均 6 口以上、応募している計算である。応募者の男女比は約 5:5 で、男性では 25 〜 35 歳と 50 代、女性では 20 〜 25 歳と 50 代の、大都市圏居住者が多い。これはカードホルダー全体の属性分布とほぼ重なっている。
 応募方法はハガキ、電話(音声自動応答装置)、FAX の 3 種類を用意したが、このうち音声自動応答装置で約 30%を受け付けた。送料、および通話料金は応募者の負担で、受取人払いやフリーダイヤルは利用していない。アクティブ・ユーザーにあまねく配布され、フォーマットに沿って記入するだけで良い応募専用ハガキの利用が最も多かったが、音声自動応答装置の利用は増加傾向にある。この大きな理由には、24 時間いつでも都合の良い時に応募できること、フルプログラムは約 3 分間だが、慣れてしまえばガイダンスを飛ばして約 1 分間で応募を完了できるという手軽さが挙げられる。一方で、現在のところ電話受付窓口が東京 1 カ所であるため、居住地域によって負担する通話料金に不公平が生じる、ガイダンスにしたがって手続きを完了しても受け付けられたがどうかの確証が持てず、ハガキや FAX で二重に応募してくる人がいるといった課題もある。20 回線を用意し、ピーク時には 1 日に音声自動応答装置で 900 件、FAX で 2,000 件の応募を受け付けたが、締切間際には電話が混み合い、話中で受け付けきれない場面もあった。

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雑誌広告はすべて見開きで展開。マスターカードのイメージ向上にも一役買った

 音声自動応答装置で受け付けたものに関してはデータ・エントリーを自動化できるが、ハガキや FAX で受け付けた応募は、まず、記入事項が正確かどうか、応募が重複していないかをホストコンピュータのデータとマッチングして確認した上で、手作業でエントリーを行う必要がある。データには 1 口なら 1 個、2 口なら 2 個というように口数分のエントリー・ナンバーが振られ、このナンバーによって期間終了後に自動的に抽選が行われる。
 期間中は、3 回線のフリーダイヤルでキャンペーンに関する問い合わせを受け付ける「キャンペーンダイヤル」を設置。5 人の専任スタッフが、平日午前 10 時から午後 6 時まで対応した。ここには 1 日平均 200 件、キャンペーンが終了に近づいた年末には 1 日 300 件のコールがあった。スタッフはマスターカードを代表してカードホルダーと接するため、キャンペーン以外の問い合わせにもひと通り対応できるよう、教育、研修を行った。
 キャンペーン開始直後には「9 月○日の利用は対象にならないのですか」といった問い合わせが相次ぎ、その後は「一度に何口まで応募できるのか」というような応募方法についての問い合わせが多くなった。また、意外に多かったのが「私のカードは対象になるのですか」という類の問い合わせ。提携カード会社の会員誌に掲載した告知広告を見たが、自分のカードが果して「マスターカード」なのかわからない、あるいは、「マスターカード」ではないのに音声自動応答装置にアクセスしてエントリーできなかった人が、問い合わせをしてくるのだ。これも「意識してマスターカードを使ってもらう」という目的が達成されたひとつの表れと見なすことができるだろう。

得られた情報を次のキャンペーンに生かす

 懸賞応募の際に記入(入力)が必要な項目は、①カードの会員番号、②性別、③年齢、④自宅の電話の市外局番、⑤「アクティブグッズ賞」の希望プレゼント、 ⑥カード利用内容(利用日、利用金額など)、⑦利用合計金額。
 これらのデータは、次回のキャンペーン企画に活用される。どのような人が、どんなプレゼントを望んでいるかを集計し、広告媒体の選定、クリエイティブ、商品設定などに反映していくわけだ。
 カードホルダーと 1 対 1 でコミュニケーションをとる機会がほとんどない同社にとって、このキャンペーンはカードホルダーから直接、要望を吸い上げる貴重な場ともなっている。今後も積極的にイベントやキャンペーンを企画・実施することによって、カードホルダーとの関係を強化しつつ、提携先カード会社の売上促進にも寄与していきたい考えだ。


月刊『アイ・エム・プレス』1997年3月号の記事