新鮮さをそのままお届け フットワークうまいもの便

フットワークインターナショナル(株)

道外でも「夕張メロン」に舌鼓

 フットワークインターナショナル(株)が、単なる物流に終わらない付加価値の高いサービスの提供、宅配便の需要創造を目的に「フットワーク うまいもの便」をスタートしたのは 1982 年。「うまいもの便」開始に当たって設立されたフットワークインターナショナル(株)が企画・仕入れを、フットワークエクスプレス(株)とそのグループ会社が物流を担当している。
 当時、迅速な物流網が整備されていなかったために北海道内でしか消費されていなかった夕張メロンが、道外でも手軽に味わえるようになったのは、同社の功績だった。札幌中央市場や太田市場経由では時間がかかり過ぎて食べ頃を逃してしまうが、「うまいもの便」なら注文を 1 日単位で集計して FAX で産地に連絡、翌日には産地を出荷し、フットワーク便の空・陸リレーで全国のご家庭にお届けができる。
 また、消費者の手元にいつ届くかわからないために、きつく塩を利かせた新巻鮭とは違い、あっさり刺身でいただけるルイベ鮭も「うまいもの便」のロングセラー商品。在庫を持たず、産地から消費者へ直接届けるのがサービスの基本であるが、ルイベ鮭だけは毎年注文受付開始以前に一定 を確保しているという。
 今年の「お中元特集」カタログでは、北海道産のでんすけすいか、沖縄産の宮古島完熟マンゴーに人気が集中し、瞬く間に売り切れになってしまった。
 「うまいもの便」の商品選定基準は、美味しくて、目新しく、希少価値のあること。たとえ数が限定されていて安定供給が望めないとしても、毎回「ここでしか買えない」付加価値の高い商品を開拓し、紹介している。その情報拠点は全国約300のデリバリーセンター。知る人ぞ知る、地元のうまいもの情報が、フットワーク便のドライバー、約 7,000 人を通じて同社に集まってくるのである。

日本全国の特産品が勢揃い。見るからに美味しそうな「うまいもの便」のカタログ

日本全国の特産品が勢揃い。見るからに美味しそうな「うまいもの便」のカタログ

ドライバーが窓口に

 カタログ請求や注文の受け付けは、フットワーク便の取次店や、電話、FAX でも行っているが、ここでも最も大きな役割を果たしているのがドライバーである。
 同社では季節ごと、あるいはギフト用に、年間約 10 種類の商品カタログを作成している。A4 判 2 〜 12 ページ、もしくはタブロイド判のこれらのカタログは、ドライバーの手を通じてフットワーク便の顧客に届けられる。掲載アイテム数はカタログによってさまざまだが、たとえば今年の歳暮用カタログでは180 アイテム。
 ドライバーは、顧客からの申し出があれば申込用紙を必要枚数だけ持参し、また、記入済みの申込用紙を回収する。代金は注文時に現金で支払うのが原則だが、法人ユーザーについては請求書が必要な場合も多い。このような要望にきめ細かに対応できるのも、お客様を知り尽くしたドライバーならではだ。
 商品の配送は、カタログの有効期限内であればいつでも OK。注文後 3 日目以降であれば、期日指定が可能だ。たとえば歳暮の注文は、毎年 10 月 1 日から受け付けている。
 新規顧客開拓のための広告展開は、ラジオ、新聞、 NHK の「きょうの料理」のテキストなどで行っている。新聞、雑誌広告はギフトシーズンを中心に、各々年に約 2 〜 3 回の出稿だ。
 利用者は個人が約 9 割で、残り 1 割が企業。ギフトシーズンにはギフト需要が 8 割以上に上るが、年間をならすと約 6 割。ギフトでは平均してひとり 5 件の申し込みがある。利用者は 30 代後半を中心とした男性のグルメ層が多い。居住地域でみると、首都圏、関西圏を筆頭に、やはり都市部に集中している。
 「うまいもの便」はマーケットにすっかり定着し、いまや前年度比伸び率が 2 ケタに達することはないというが、なだらかな伸びを続けている。平均商品単価は約 5,000 円。歳暮期にはおよそ 60 万ケースの注文があるという。
 昨年はフリーチョイスの「選ぶ うまいもの便」をスタート。これは 3,500 円、5,000 円、7,000 円、1 万円の各コースごとにそれぞれ設定された 20 アイテムの中から、贈られる側が好きなものを選べるシステムだ。贈り先に届けられるキットは、美しい商品写真に説明が添えられたメニューカード 20 枚と、申込ハガキ、申込説明書。ハガキに必要事項を記入して投函すると、指定日に、選んだ品物が産地から直接届けられる。滑り出しは好調で、特に手頃な 3,500 円コースの人気が高いという。

贈り先に届けられる「選ぶ うまいもの便」の注文キット。ハガキ大のカードにひとつひとつ商品が紹介されている。結婚式の引き出物として、また企業がギフトに使うケースも多いという

贈り先に届けられる「選ぶ うまいもの便」の注文キット。ハガキ大のカードにひとつひとつ商品が紹介されている。結婚式の引き出物として、また企業がギフトに使うケースも多いという

“産直”を“物流”と並ぶ大きな柱に

 同社では昨年、ドライバールートの産直品販売とは別に、通信販売を開始した。名称はどちらも同じ「フットワークうまいもの便」。カタログ掲載商品も大半が重複しているが、前者がややギフト需要に重きを置いているのに対し、後者はよりグルメ志向の強い層にターゲットを絞り、品目や量を調整して自家消費の拡大を図っている。カタログ送付先の中には法人も約 2 割含まれており、こちらはやはりギフト需要が狙いだ。
 1996 年の保存版冬カタログは、定型の封筒に収まる縦 19.5cm× 幅 11cm で 40 ページ。約 70 アイテムを掲載している。 通販の実績客のほか、クレジットカード会社とタイアップし、ゴールドカード会員向けに送付することで新規顧客開拓のツールとしても活用している。発行部数は約 100 万部。
 通販の顧客情報は、ドライバーが開拓した顧客とは別個にフットワークエクスプレス(株)が一括管理。本業のフットワーク便とはまったく別に、積極的に「うまいもの便」の顧客拡大を図ろうという戦法だ。
 十余年にわたる産直事業の展開は、全国に散らばる産地との強力なネットワークを作り上げた。また一方で、フットワーク便を通じて培われたドライバーとユーザーとのコミュニケーションは、さまざまな川下情報の収集を可能にしている。この 2 つを結び付けた新規事業が、言わば自然発生的に立ち上がってきた。そのひとつが、有機野菜や海産物を仕入れ、量販店の食品売場に毎日、納品するというビジネスである。「うまいもの便」の看板こそ出ていないが、実質的には同社のインショップ展開に等しい。商品供給だけでなく、専門的な商品知識を持った同社の社員を販売員として派遣してほしい、同社のデリバリーセンターでストック商品を管理してほしいといった要望も受けているという。ギフトシーズン以外の平月の売り上げ確保のために、同社はこの事業を今後ますます拡大していきたい考えだ。
 物流システムという経営資産を基盤にスタートした「うまいもの便」は、いまや物流と並ぶ大きな柱に育ちつつある。が、そればかりではない。フットワーク・グループの新たな核となり、ビジネス領域を広げる原動力としてパワーを発揮しているのである。


月刊『アイ・エム・プレス』1997年1月号の記事