通信販売事業を第2の柱に

サンスター(株)

「健康道場」が生んだ新製品

 歯磨き、へアケア製品などの日用雑貨メーカ一大手、サンスターが通信販売に乗り出したのは 1992年 3 月。図らずも通信販売向け商材が開発されたことが、通販参入のきっかけを作った。
 同社には福利厚生施設「健康道場」がある。これは、大阪府八尾市にある甲田病院が提唱する玄米生菜食療法を採り入れたヘルスケアセンター。糖尿病などの成人病の予防、あるいは克服に役立つ 5 泊 6 日の健康管理プログラムは、現在までに延べ3,000人以上の杜員が体験済みだ。玄米生菜食療法では、緑黄色野菜を材料にした青汁が朝食。プログラムを終えた社員から、青汁を飲み続けたいが新鮮な野菜の確保やジューサーの洗浄に手間がかかる、もっと美味しい青汁がほしいといった意見がいくつも出された 。この声に応えて“健康道場樫黄野菜”を開発・発売したのが 1989年のことだ。
 続いて 1990年には“健康道場黄実野菜”を発売。この2 商品は、社員向け販売のほかに、ギフトショップや百貨店などに、徐々に販売ルートを拡大していった。
 いずれのルートでも好反応が得られたためより広範囲に販売活動を展開したいと考えたが、これらは「美と健康」をキャッチフレーズとする同社のコンセプトに合致した商品ではあるものの、同社の主力製品とはジャンルが異なるので、既存の販路を活用することはできない。
 同社では早くからダイレクトマーケテイングに高い関心を持っていた。 1940年代には“サレーヌブランド”で高級基礎化粧品の訪問販売を開始。 1984年からは化粧品ブランド“ラ・プレリー”を全国の百貨店で対面販売してきたが、ここでも積極的に顧客の生の声を収集している。だが、通信販売は手つかずの分野だった。
 同社では健康道場から生まれたジュースこそ通信販売に適した商材ではないかと考え 、1992年 3 月 、歯周病予防歯磨き“G・U・M”のアンケートハガキ返送者などの顧客リストに基づき、計約 5 万人に対し、テスト的に“橙黄野菜”と“黄実野菜”の通販DMを送付。その結果、約 3 % という高いレスポンスを得ることができた 。

B-カロチンブームに合致

 同社の通信販売事業はここから本格的にスタートすることになった。
 通信販売チャネルを念頭に置いて開発されたはじめての商品は、 1992年9 月に 発売した“サンスター緑黄野菜ジュース”。 93年 1月に朝日新聞のテレビ欄下に10段広告を出稿した結果、直前にβ-カロチンがガン予防に効くという報道があったことも幸いし、3 % を超えるレスポンスを獲得。それまでの専任 1 名体制では注文を裁き切れなくなり、急遽93 年 4月、コンピュータ・システムを導入し、通販営業部を設立した。
 その後は本来のフィールドに返って、育毛剤“薬用フサラ”、ボディシャンプーとスキンケアクリームの“アトピロジー”シリーズ、健康食品“サンスター S・ コラーゲン”など、次々と新商品を開発。 現在約 10 品目の自社開発商品がラインナップされている。また、羽毛布団やダイエット食品などの仕入れ商品も取り扱っている。
 自社開発商品はいずれも従来の主力商品よりワンランク上を狙っており、店舗と通販、 2 つのチャネルの棲み分けを図っている 。その一方で、ボディシャンプーなと従来のチャネルでは扱っていない商品を取り上げてニースを探るなど、通信販売は同社のテスト・マーケティングの場としての意味合いも持っている。
 ジュース類には 1995年 3 月、“おいしい青汁”が加わり4 品がそろった。ジュースは現在も通販売上の 80% 以上を占めており、 1995 年 3 月期には 15億円を売り上げた主力商品群。この中で“サンスター緑黄野菜ジュース”が80%以上を稼ぎ出している。価格は“サンスター緑黄野菜”ジュースが30缶セット 7,500円、ほかの 3 品が30缶セット6,000円。
 毎日飲みたいというファンのために毎月自動的に 30缶ずつ届ける頒布会制度も設けており、これを利用すると1年 12回分が11回分の価格で購入できる。頒布会会員は、現在9,000人近くを数える 。
 ジュース類は通信販売のほかに、米穀店、酒販店などでの店頭販売も行っており、現在店頭販売と通信販売の比率は約 3: 7。30缶のセット販売が基本なので、これらの店舗の宅配機能が物を言う。また、特に“おいしい青汁”についてはまず1缶試飲してから買いたいという人が多く、店頭やイベント会場での試飲会で多くの新規顧客が獲得されているという。

新規顧客開拓は主として新聞広告で。レスポンスは当日と翌日に集中するため、広告効果を素早く判断、次のマーケティングに結び付けることができるという

新規顧客開拓は主として新聞広告で。レスポンスは当日と翌日に集中するため、広告効果を素早く判断、次のマーケティングに結び付けることができるという

リピート率は30%

 通信販売における新規顧客開拓には新聞、新聞折り込みチラシ、テレビ、ラジオ、雑誌など多くのメディアが使われているが、メインは新開。掲載商品やクリエイテイブを毎回変えて、反応をテストしている。
 注文の約75% は、 0120-831-181 (野菜いっぱい)のフリーダイヤル電話で受け付けられる。 受付時間は 1年 365日、午前 9 時から午後 9 時まで 。営業時間内は通販営業部のスタッフ8 名と、テレマーケティング・エージェンシーである NTT テレホンアシスト(株)が、連動体制をとって対応している。残りの約25% はハガキ、 FAX 、そして 1995 年11月に開始した NIFTY Serveのオンラインショッピングと、 1996 年 1月から出店しているインターネット上のバーチャルモールによるものだ 。
 通販営業部の顧客リストは 20万件を超えているが、そのうち 2 回以上の購買歴があるリピーターは約 50% だ。リピート促進のために、同社では顧客データベースに基づいて、数種類のツールを活用している 。
 ひとつは 2 カ月ごと、年 6 回発行している小冊子『健康道場通信』。健康に関する知識や同社のジュースを使った料理などが掲載されており、 一度商品を購入した顧客には、 1 年間は継続して送付する。また休眠顧客には、以前購入した商品の種類によって、関心があると思われる新商品案内のダイレクトメールを送る。前述の頒布会会員には年 2 回発行する A4変形判 24ページの健康情報誌『くらしにほへと』を送付している。そのほか取扱商品の総合カタログを作成しており、希望者に無料で提供している 。
 通販の顧客は40 ~50代が中心で、男女比は約 5:5 。 同社ではここ数年で顧客リストを 40万~ 50万件まで増やしたいと考えている。現在、通販売上高は店販チャネルの 1割に満たないが、その時この比率はどう変わっているのだろうか。

健康道場野菜ジュースの頒布会会員約 9,000 人には、健康情報を満載した会員誌 『くらしにほへと』が届けられる。

健康道場 野菜ジュースの頒布会会員約 9,000 人には、健康情報を満載した会員誌 『くらしにほへと』が届けられる。


月刊『アイ・エム・プレス』1996年4月号の記事