1968年に創業した大手通信販売会社の(株)ベルーナ。同社では、アクティブ顧客の減少を機にリピーターの増加を目指し、2006年から11の業務改革に着手した。そのひとつとして、受注業務などを行うオーダーレセプションセンターの運用強化を図った結果、顧客満足度が高まり、アクティブ顧客の増加に寄与することができた。
アクティブ顧客が減少 リピーターを増やせ!
(株)ベルーナは、アパレルや雑貨などの総合通信販売や食品・酒類の専門通信販売などを手掛ける一部上場の通販会社である。主力カタログ数は、総合と専門を合わせて30種類に及び、年間総計1億冊を発行。受注チャネルには、NTTコミュニケーションズ(株)のフリーダイヤル電話とファクス、ハガキ、Web、モバイルを活用し、年間1,001億円を売り上げている。なお、このうち総合通販の売り上げは650億円を計上、同社の中核事業となっている。
これまで同社では、新聞折り込みチラシで新規顧客を獲得し、既存客にはセグメント別にマッチしたカタログを送付、リピート購入を促すという手法で売上拡大を図ってきた。同社が特に重きを置いていたのは新規顧客の獲得であったが、2005年ごろから離脱顧客数が増加し、徐々にアクティブ顧客数が減少していることに気付いた。
そこで同社では、新規顧客獲得からリピーターの増加に力点をシフト。①注文からお届けまでに要する時間が管理されていない、②お届け予定日を明確に案内できない、③問い合わせへの一次完了率が管理されていない、④スピーディーな回答を実現するためのデータベースが未整備、⑤顧客のコンタクト履歴が一元管理されておらず、一貫性のない対応をしたり、何度も同じことを尋ねたりしてしまう、⑥7つのセンターを設けてエリア別に電話を受け付けていたため、センター間で繁閑の差が生じる、といった数々の問題点を解決するべく、2006年よりまずは総合通販業務において11の改革に着手した(図表1)。具体的には、安価で高品質な商品の投入、在庫の持ち方の見直し、TMS(輸配送管理システム)と連携した物流システムの導入、オーダーレセプションセンターの運用強化によるお客さま対応力の向上を開始した。
オーダーレセプションセンターは、受注および問い合わせに対応するコンタクトセンターである。同社の主な顧客は40〜60代の女性で、受注チャネルの中では電話の利用が53%と最も多いことから(図表2)、同センターは受注チャネルの中でもとりわけ重要性が高い。同社では、まずは同センターでのサービスレベル、および顧客満足度を高めることに主眼を置き、取り組みに臨んだ。
埼玉県春日部市にあるオーダーレセプションセンターの様子。オペレーションシステムには、クレーム情報と購買履歴から顧客の気持ちを判断してイラストで表示する、遊び心のある機能も付いている
改善① プロセスと組織の変更
オーダーレセプションセンターにおいては、プロセスと組織、システム、評価指標の改善を行った。
プロセスと組織の変更においては、IPテレフォニーを導入し、これまで個別に運用していた7つのセンターをバーチャルに統合。ロケーションの異なるセンターをひとつのコンタクトセンターとして運用できる体制を整えた。
加えて、オペレータのスキルを定義し、問い合わせはベテランオペレータ、受注は新人オペレータが担当するというように役割を明確化。フリーダイヤル番号とスキルレベルをキーに、用件に応じて適切なオペレータにコールを着信させる仕組みを取り入れると同時に、窓口バックアップチームを新設し、回答に時間を要する問い合わせや、対応が難しい問い合わせに関しては同チームにエスカレーションするよう、オペレーション・フローを変更した。これにより、7センターで総合通販の業務を担う計470席、1,030名のオペレータを効率的に活用できる体制を作り上げた(図表3)。
改善② システムの変更
同センターでは、取扱説明書や商品の詳細情報は紙ベースで管理・保管しており、閲覧する際にはいったん電話を保留にするか、お客さまにコールバックを約束して席を立たなければならなかった。そのため、ひとつの質問に付随して別の質問が投げ掛けられると再度、保留にせざるを得ないこともしばしばあった。また、ナレッジ・データベースを用意していたものの、アクセス端末が限られており、オペレータが応対をしながら閲覧できる環境にはなかった。こうしたナレッジの未整備により質問に即座に答えられないことが、お客さまの不満を招いていたことから、同社ではナレッジ・データベースを再構築。取扱説明書、商品情報などをすべてデータ化して蓄積し、常に最新の情報による回答を可能にするとともに、全オペレータ端末でナレッジ・データベースを閲覧できるようにした。また、物流システムとの連携を図り配送状況を把握することで、お客さまにお届け予定日をピンポイントで伝えられるようにした。
加えて、コンタクト履歴を一元化。フリーダイヤル電話、eメールなどで寄せられたコンタクトを時系列で閲覧できるようにしたことで、過去の経緯を踏まえた対応ができるようになった。
改善③ 評価指標の変更
応対品質が高くても1時間当たりの応対件数が少ないようでは、ビジネスチャンスを逃してしまう。逆に、応対スピードが速くても一方的な対応をしたのでは、顧客満足度は下がってしまう。応対においては、応対品質と業務効率のバランスが不可欠だ。そこで同社では、効率を評価する用件別標準通話時間、用件別標準後処理時間、1時間当たりの処理件数、稼働率といった指標のほかに、応対品質を評価するための一次完了率、正確さ、好感度といった指標を追加。オペレータが効率を意識し過ぎるあまり電話を切り急ぐといった状況を解消した。
業務効率と顧客満足度を高めリピート率の向上を実現
数々の取り組みの結果、通話・後処理時間の短縮、お客さまへの折り返し電話数の低減、オペレータ教育の期間短縮、窓口バックアップチームの専門知識蓄積による業務効率の向上、集中マネジメントによる管理業務の効率アップなどを実現し、総体的に業務効率を高めることに成功。一方、用件に応じて適切なオペレータに電話をつなぐことで、高い応答率と応対品質を可能にするとともに、一次完了率94%を達成し、顧客満足度を高めている。
このほか、オペレータの満足度も高まった。「今まで、商品のお届け日に関する問い合わせが多かったが、明確なお届け予定日を案内できるようになったので、自信を持って答えられるようになった」「コンタクト履歴を共有できるので便利になった」「オペレータ画面で商品の詳細情報を検索・閲覧できるようになったため、その場で回答できるようになった」などの声が寄せられているという。
オーダーレセプションセンターの改善効果だけでなく、商品企画や物流システムの改善なども奏効し、同社のお届けリードタイムは10.4日から4.98日に短縮。キャンセル率も5.95%から3.96%に低下した。その結果、当初の目的であったリピート率も49.3%(2009年3月期)から53.0%(2010年3月期)に向上。現在では、アクティブ顧客数が増加に転じている(図表4)。同社では、今後もオーダーレセプションセンターの改善を続けるとともに、今まで以上に顧客の声活用による商品、およびサービス力の向上に取り組むほか、ハガキやファクスによる受注の処理スピードを高めるなどして、さらなるリピート率アップを目指していくという。2011年3月期には60.0%にまで高める意向だ。
CTIとテキストマイニングの導入を検討中
サービスレベルの向上で顧客の離脱防止に成功したベルーナ。今後はCRM戦略を課題とし、改善に取り組んでいくという。
具体的な取り組みとしては、リピーター対応に有効な情報ポップアップを実現するCTIの導入を検討している。このほか、通話内容をテキスト変換してマイニングを実施。オーダーレセプションセンターに寄せられる顧客の声に潜むニーズを発見し、マーケティングに活用していく構え。今期の総合通販においては、売上二ケタ増を目標としている。
主力カタログの一例