コンタクトセンター最前線(第90回):情報発信基地としてご指摘対応の「30分ルール」の遵守やお客さまの声活用を推進

キリンビバレッジ(株)

キリンビバレッジ(株)では、エンドユーザーとの貴重な顧客接点であると同時に情報発信の場として、1993年にお客様相談室を開設。お客さまからの問い合わせへの対応に加えて、お客さまのご指摘対応においてはエリア担当者と連携して「30分ルール」の遵守を徹底するとともに、近年ではお客様相談室に寄せられたお客さまの声の活用にも注力している。

お客様相談室は貴重な顧客接点

 キリンビバレッジ(株)は、キリングループの一員として清涼飲料の商品企画から研究開発、製造、販売までを一貫して担う総合清涼飲料メーカーである。20年以上にわたり多くの方に愛飲されている『午後の紅茶』をはじめ、『生茶』『ファイア』『ボルヴィック』『アルカリイオンの水』といった基盤ブランドや時代のニーズを先取りした商品の提供を通じて、お客さまの健康、楽しさ、快適さに貢献することを目指している。
 ご存じの通り、同社で製造した商品は、小売店や自動販売機などを通じて最終的にエンドユーザーの手に渡る。このビジネス構造故に、同社にはエンドユーザーの声が届きにくい。そこで同社では、エンドユーザーの声に直に触れ、かつ直接情報を発信するために、1993年にお客様相談室を開設した。同相談室は、社内において貴重な顧客接点であると同時に、情報発信基地と位置付けられており、広報部の傘下に置かれている。

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東京の本社内にあるお客様相談室。即時対応率を高めるために、オペレーションブースのそばには大量の商品見本が用意されている

応答率96%を達成しながらも残り4%への対応にも意欲的に取り組む

 お客様相談室の業務内容は、各種問い合わせ受付、およびご指摘・意見・感想・提案への対応である。受付チャネルとしては、電話とWebサイト上に問い合わせフォームを用意している。電話窓口にはNTTコミュニケーションズ(株)のフリーダイヤルサービスを導入し、月曜から金曜日の午前9時から午後5時まで受け付けている。さらに、受付時間外には時間外ガイダンスを流し、受付時間内での掛け直しを促している。
 スタッフ数は、マネージャー2名、一次対応者11名、二次対応者1名、情報担当者1名の計15名。長年、お客様相談室のスタッフは社員で構成していたが、2006年からは派遣社員の起用を開始。一次対応者のうち5名が派遣社員となっている。
 社員と派遣社員とでは若干業務内容が異なり、派遣社員は電話受付のみを担当。一方、社員は電話対応に加えてWebメールへの対応も行う。また、二次対応者はヘルプ対応と呼ばれ、一次対応者からエスカレーションされたコールに対応する。ただ、エスカレーションが発生するケースは少なく、ほぼ一次対応者で回答できているという。情報担当者は、VOC活動の推進を使命としているが、昼休みなど一次受付が手薄になる時間帯には電話対応も行う。
 一次対応でほとんどの用件に回答できていることと、フレキシブルなスタッフィングの効果か、応答率は96%を達成。高いレベルを維持しているものの、お客様相談室では残りの4%のコールにも対応していこうと意欲を見せている。

大半の問い合わせにフリーダイヤルで対応

 お客様相談室の開設当初、電話窓口には一般加入回線を使用していたが、2001年にNTTコミュニケーションズのフリーダイヤルに切り替えたところ、コール数が増加。フリーダイヤル導入以前は月間2,000件前後だったコール数が1.5倍程度に増加した。今ではフリーダイヤルの導入に伴うコール増は収まっており、2006年、2007年の総受付件数は3万6,000件(月間3,000件)程度で推移。2008年は4万件と若干増加している。
 2008年のコール数の内訳をチャネル別に見ると、「フリーダイヤル」が86%と大半を占める。「Webサイトの問い合わせフォーム」は11%で、パソコンやブロードバンドが普及しても、依然として電話による問い合わせが多いことに変化は見られない。残りの3%は「手紙など」となっている。
 内容別に見ると、「各種の問い合わせ」が最も多く73%。具体的な内容は、成分、取扱店、CMなどに関することとなっている。次に多いのが「ご指摘」で16%。「意見・感想・提案」が11%となっている。

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キリンビバレッジWebサイトでは、お客様相談室フリーダイヤル番号の告知とともに、通話を録音していることを知らせている(上)/Webサイトに用意されている問い合わせフォーム(下)

ご指摘対応では「30分ルール」を遵守

 お客様相談室では、「ご指摘」はお客さまが商品に対して不安や不満を感じ、その不安や不満を払拭するために営業対応が必要なもの、「意見・感想・提案」は、味への感想などキリンビバレッジに対する要望と定義。ご指摘対応については明確にルールを定め、これを徹底している。そのルールとは、お客様相談室でご指摘を受け付けてから1時間以内に当該エリアの担当者からお客さまに必ずコールバックするというものである。
 具体的な流れを見ると、まず、お客様相談室でご指摘事項を整理して「かすたねっと」に入力した後、該当エリアの進捗管理責任者に電話をかけて対応を依頼。進捗管理責任者は「かすたねっと」に入力された内容を確認しながら、同時に言葉のニュアンスなど文字では伝えきれない情報を収集する。ここまでの作業は30分以内で行わなければならず、時間を厳守するために、エリアの責任者が会議中であってもお客様相談室からの電話が優先されるようになっている。次に、ご指摘対応依頼を受けたエリアの進捗管理責任者は、お客様相談室より連絡を受けてから即時に対応担当者を決め、必ず30分以内にお客さまにコールバックするというフローになっている。このルールは、エリアのコールバック対応のタイムリミットが30分であることから、社内で「30分ルール」と呼ばれている。

「かすたねっと」でお客さまの声を共有

 お客様相談室で受け付けた内容は、「かすたねっと」というシステムに蓄積している。通常の問い合わせでは、その場で回答できず、調べて折り返し電話をかける場合などを除いてはお客さまに個人情報を聞くことはない。しかし、ご指摘として対応をしたお客さまやWebサイトから問い合わせてこられたお客さまについては、住所、氏名、電話番号などを伺い登録している。
 「かすたねっと」に蓄積した情報は、お客さまの生の声として日々全社で共有するほか、商品の改善提案など技術やマーケティングに関することは、お客様相談室で改善提案書を作成し、各部門へ提出している。各部門への提案書の提出は定期的ではなく、お客さまの声から改善すべき事柄が見つかる都度、行っている。提案には、比較的すぐに解決できるものと長期間を必要とするものがあるが、これまでにお客様相談室から提案した案件については、各部門とも大半の案件に対応する姿勢を見せているという。

お客さまの声をラベル改善などに生かすとともにWebサイトを通じて発信

 これまで同社では、お客さまの声を生かした数々の改善例を誕生させており、その取り組み状況を、Webサイトを通じてお客さまに発信している。以下に、ラベルの改善例を2つ紹介したい。
 ひとつは、ペットボトルのラベルをはがしやすくするための改善である。リサイクルやゴミの分別回収が進む中、ペットボトルのラベルがはがしにくいという声が多く寄せられた。これを受けて、お客様相談室ではラベルの改良を提案。その結果、2007年3月6日にリニューアル発売した生茶の2リットルペットボトルを従来のラベルからロールラベルに変更し、ラベルのつなぎ目部分に特殊な糊付けをすることで、簡単にはがせるようにした。併せて、はがし口を矢印と文章でわかりやすく表記するという改善策も講じている。
 小型のペットボトル商品についてもラベルの表示を変更。小型のペットボトル商品は、ボトルの形状やラベルの大きさによって、上からか下からか、はがしやすい場所も異なる。そのため新発売やリニューアルに合わせて、商品のラベルに「ここからはがしてください」という表記と矢印を加えた。このほか、ラベルのミシン目を1本から2本に増やすなど、ラベルをはがしやすくするために数々の工夫を施している。
 もうひとつは、残量が見えるようにするためのラベルの改良だ。「小岩井 無添加野菜32種の野菜と果実930gペットボトル」と「小岩井 無添加野菜31種の野菜100%915gペットボトル」は、一度に飲み切るのではなく何度かに分けて飲まれる可能性が高い商品である。しかし、注ぎ口を除いたペットボトルの大半をラベルで覆っているため、残量が見づらいという指摘が寄せられた。そこで、ラベルに窓を付けて中身が見えるように改善を施した。

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ラベルをはがしやすいようにミシン目が二重に付けられている。ラベルの端のはがし口上部がつまみ状になるように工夫されているものもある。

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Webサイトの「お客様の声から」というページに、お客さまの声を商品の改善に生かした事例を掲載。ラベルに透明なラインを設けた『小岩井 無添加野菜』の事例も紹介されている。

お客様相談室の課題と今後の展開

 お客様相談室の課題のひとつに人材育成がある。現在、社員には、電話対応に関する研修を重点的に行い、派遣社員には、会社やブランド、商品への理解を深める研修を行っている。このような取り組みによってお客さま満足度の高い対応に努めているのだが、スタッフの大半が社員のため、数年で異動してしまうことから、スキルレベルにばらつきが生じがちな点が悩みだ。
 もうひとつの課題として挙げられているのが、情報の発信方法である。電話だけでなくWebサイトの活用も含めて、キリンビバレッジの情報発信基地として、お客さまに対して適切な情報を発信するための方法を模索している。
 キリンブランドには、飲料のほかビールをはじめとする酒類、健康・機能性食品、医薬、アグリバイオといった事業がある。各事業を運営する企業は異なるが、お客さまはすべてをキリンと認識している。そのため、キリンビバレッジお客さま相談室での対応はキリングループ代表の対応であり、キリンブランドの対応として評価される。こうした中、同相談室では、キリンブランドのイメージアップを図るためにも、お客さまにご満足いただける対応を行うよう、努力していきたいとしている。


月刊『アイ・エム・プレス』2009年5月号の記事