コンタクトセンター最前線(第80回)問い合わせ対応センターから生活提案の発信基地へ

(株)Tカード&マーケティング

企業の枠を超えた共通ポイントサービス「Tポイント」およびTカード発行を展開する(株)Tカード&マーケティング。同社では、TポイントおよびTカードに関する問い合わせに対応するTカードサポートセンターを運用すると同時に、同センターに集まった情報をサービスの改善や提携企業のマーケティングに活かす取り組みに注力している。

サービス拡充に伴い重要度を増すTカードサポートセンター

 近年、企業の枠を超えた共通ポイントサービス「Tポイント」が、顧客サービスの向上策を検討する企業や、ポイントサービスを有効に活用したいと考える生活者に注目されている。
 Tポイントは、TSUTAYA やTSUTAYA online を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)グループである(株)Tカード&マーケティングが2003年10月より提供を開始したサービスである。Tポイントを貯めるには、まず、ポイントカード機能のみの「Tカード」もしくはTカードとクレジットカードの機能を持つ「クレジット機能付きTカード」に入会。TSUTAYAや提携先での利用時にカードを提示すれば、利用金額に応じてTポイントが貯まる仕組みになっている。一方、貯めたTポイントは、TSUTAYAや一部の提携企業での買い物のほか、ANAのマイルや楽天ポイントに交換することもできる。サービス開始以降、会員数、提携企業数は着実に拡大。2008年4月末時点の会員数は2,788万人、提携企業数は43社、利用可能店舗数は約2万9,000店舗に達している。
 Tカード&マーケティングでは、今後も提携企業数を増やし、Tポイントを貯めて、使える拠点を全国に拡大していく意向。最終的に、日本最大規模の共通ポイントサービスを通じて、提携企業に精緻なマーケティングデータを提供することにより、生活者と企業の双方にメリットを提供し、新しいバリューチェーンを構築することを事業の目標としている。
 同社の目標達成において次第に重要度を増しているのが、Tカードサポートセンターだ。同センターの発足は、ポイントサービスの提供開始と同じ2003年10月。当時は「Tポイント問い合わせセンター」の名称で、会員を対象としたポイント照会および提携企業へのサポートを目的としていた。その後、提携企業でもカード発行を可能にするなどポイントサービスの拡充に伴い、同センターが担う役割の幅も広がっていった。そこで、窓口の役割をよりわかりやすくするため、「Tカードサポートセンター」に改称。現在では、会員および提携企業のサポート業務を行っているほか、コールデータのマーケティングへの活用を推進している。

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TSUTAYA発行のTカード。左がクレジット機能なしで、右がクレジット機能があるタイプ。クレジット機能付きカードには、このほかに提携企業が発行するものもある

低コストでのセンター運営や将来の受付体制拡充を見据えナビダイヤルを導入

 Tカードサポートセンターの具体的な業務内容は、① Tカードに関する問い合わせ受付、② Tポイントに関する問い合わせ受付、③ Tサイト(TポイントとTカードの総合Webサイト)に関する問い合わせ受付、④ Tポイント照会、⑤そのほか登録情報に関する問い合わせ受付。年中無休で、10時から21時まで対応している。提携企業店舗の営業時間はまちまちで、24時間営業や22時ごろまで営業している店舗は少なくないことから、同センターでは受付時間帯を長めに設定した。
 受付チャネルには、NTTコミュニケーションズ(株)のナビダイヤルを使用している。会員の年齢層を見ると20代が約752万人と最も多いことや、CCCグループで携帯サービスを提供していることから、携帯利用者が多いと判断。携帯電話からの着信も可能にしている。実際、電話を掛け直す場合に電話番号を尋ねると、携帯電話の番号であることが多いという。
 ナビダイヤル導入の目的としては、センター運営にかかる費用を抑えることが挙げられる。ポイントの対象が主に客単価の低い商品であることから、一般加入回線と同様に通話料は100%発信者側の負担としているが、通話時間が長くなる場合は、センターから電話をかけ直して対応している。ちなみに、平均応答時間は約15分(2008年4月実績)で、通話時間と後処理時間の比率は1対1であるという。
 また、将来への備えも目的としている。同社では、この秋には会員数が3,000万人に達すると予測していることに加え、その後も新たな提携企業を増やしていくことを考えると、受付体制の拡充が必要になる可能性がある。その際、ナビダイヤルであれば柔軟に対応できると考えたのだ。
 同センターでは、もうひとつの受付チャネルとしてeメールも用意しているが、キャンペーンなどに限定して使用しており、通常はナビダイヤルだけで受け付けている。

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センター運営はアウトソーシングを選択 月間1万件のコールに対応

 会員および提携企業への対応に当たるのは、約30名のスタッフたち。常時、コミュニケータ14名、スーパーバイザー(SV)3名の17名体制で対応している。
 もともとCCCグループの別のコールセンターの運営をアウトソーシングしていたことから、Tカードサポートセンターの運営も同様にアウトソーシングすることになった。アウトソーシング先への情報提供や管理は、Tカード&マーケティングのCS担当者が行っている。
 現在、同センターに寄せられる問い合わせ件数は、月間約1万件。提携企業の増加に伴い会員数が増え、コール数も増加傾向にある。問い合わせ者の構成を見ると、3〜4割が提携企業、6〜7割が会員となっている。また、提携企業はTカードサービスに関する問い合わせ、会員はポイント照会での利用が多い。

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Tカードサポートセンターのオペレーション風景。手前はSV席。壁には、キャンペーンのポスターなどが貼られている

スキルベースルーティングで新人を即戦力に

 特に、Tカードサービスに関する問い合わせへの対応は、同センターの中で一番難しいとされている。提携企業ごとに異なる提携条件など、豊富な知識が必要となる上、提携企業が増え続ける中、コミュニケータが取得しなければならない知識は増えるばかりだからだ。当然、すべての知識を覚えることは難しいため、同センターではコミュニケータに対してひとつの業務ごとに研修を行い、地道に知識を積み重ねている。具体的には、新人はTポイント照会や登録情報に関する問い合わせ受付からスタートして、Tサイトに関する問い合わせ受付、Tポイントに関する問い合わせ受付、Tカードに関する問い合わせ受付へとスキルアップしていく。
 同センターでは、IVR(自動音声応答)のアナウンスに従って発信者に用件を選択してもらうことで、スキルに基づくコールの振り分けを行い、適切なコミュニケータにつないでいる。こうすることで、新人を即戦力にしているのだ。しかし、これからも提携企業が増えることは明らか。今後は、専任制の導入を検討していくという。
 なお、目標としているサービスレベルは、応答率95%以上。同センターでは全コミュニケータが通話中の場合はSVが対応することで呼損を防止しており、予測を上回るコール増といった特別なことがない限り達成できている。

応対履歴の活用と課題

 Tカードサポートセンターに集まった応対履歴は、Tカード&マーケティングのCS担当者が分析し、次の3つの用途に活かされる。
 ひとつ目は、ポイントサービスの運営面における改善への活用である。CS担当者が作成したレポートを社内の関連部門にフィードバックすると、関連部門で改善に当たる仕組みになっている。この具体例としては、FAQの作成が挙げられる。Tサイトのリニューアルに当たり、リニューアル前の数カ月間に寄せられた問い合わせ内容を基にFAQを作成し、Tサイトへ掲載した。以降は、サービスの追加に合わせてFAQを追加している。
 2つ目は、コスト管理である。店舗別に問い合わせ対応に要する費用を算出して理論上のコストを明らかにすることで、コスト削減に努めているのだ。
 3つ目は、提携企業へのマーケティング支援だ。提携企業ごとにコール状況などのレポートを作成し、提供しているのである。
 ただ、コール数が多いことは悪いことだと一概には言えない状況にあったり、提携企業によって重視する情報が異なったりすることから、どのような切り口でレポートを作成するのが良いのか判断が難しく、同社ではこの点を課題としている。加えて、利用可能店舗数が約2万9,000店舗に及ぶことから、同社で店舗マスターを管理していない店舗については、店舗での応対履歴の分析やフォローが難しいという。現在、同社では、店舗マスターを管理していない店舗においてもお客様の声をサービス改善につなげていくための方法を模索している。
 このほか、難しいお客様への対応方法なども提携企業間で共有していきたいとしている。
 最終的に、日本最大規模の共通ポイントサービスを通じてまったく新しいバリューチェーンを構築することを目標としている同社では、今後は、Tカードサポートセンターを問い合わせに対応するだけの窓口にとどめることなく、会員、提携企業本部、提携企業店舗のニーズを吸い上げ、新しい生活提案をする活動に深く組み込んでいく意向。同センターに集まった情報から、生活者の日常を豊かにする多くの生活提案が生まれることを期待したい。

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TポイントとTカードの総合サイト「T-SITE」内の「よくあるご質問」のページ。たいていの疑問はここで解決できるくらい豊富な情報量が特徴。ここで問題を解決できなかった方のために、ページの下部でTカードサポートセンターのナビダイヤル番号を告知している


月刊『アイ・エム・プレス』2008年7月号の記事