通信ネットワーク最前線(第57回):「ヒューマンタッチ」をコンセプトに顧客満足度の向上を目指す

日本ゲートウェイ(株)

パソコンのダイレクト販売のリーディング・カンパニー、米国ゲートウェイの日本法人として1995年に設立した日本ゲートウェイ(株)。カスタマーサポートに定評がある同社の、受注センターとサポートセンターについて話を聞いた。

パソコンダイレクト販売のリーディング・カンパニーとして日本に参入

 日本ゲートウェイ(株)は、米国ゲートウェイの100%子会社として1995年5月に設立された。以降、パソコンのダイレクトマーケティングのリーディング・カンパニーとして、フリーダイヤル、ホームページのオンライン・ショップを通じて製品を販売。また、実際に製品を見たいというお客様のニーズに対応するべく、全国18カ所の直営ショップ「ゲートウェイカントリー」を開設し、製品を販売。クリック&モルタルを展開している。
 ダイレクトマーケティングの要となるのが、問い合わせや注文、クレームなどを受け付けるコールセンターだ。同社では、設立と同時に、受注センターとサポートセンターの2つのコールセンターを開設した。
 コールセンター開設にあたり、留意した点は2つ。ひとつ目が、お客様をお待たせしないこと。2つ目が、お客様からのすべての電話に対応するために十分な回線数を確保することだ。同社では、数年先のビジネスの成長を予測し、キャパシティを大きく設けた。

24時間、年中無休の受付体制で顧客サービスを充実

 受注センターは、神奈川県・横浜市の1カ所。テレホンダイレクトセールスが管轄している。
 主な業務内容は、パソコンの購入を検討しているお客様からの製品に関する問い合わせ、および注文受付。新聞、雑誌、ホームページのほか、同社が月刊で発行しているカタログ「Gateway SUPERBOOK」を活用して製品を告知し、お客様からのコールを募っている。
 受け付けには、NTTコミュニケーションズのフリーダイヤル100回線を利用。導入の理由は、米国でも800番(着信課金サービス)を利用していること。また、NTTコミュニケーションズのフリーダイヤルは、無料で通話できることが一般に広く浸透していることの2つ。同社では、20~30種類の番号を使い分けることにより、広告媒体の効果を測定している。ちなみに、携帯電話・PHSからは一般加入回線で受け付けている。
 同社では、9:00~21:00までだった受付時間を、2000年8月より24時間、365日年中無休体制に拡充した。目的は、深夜や早朝でもお客様がパソコンを購入したいと思った時に対応できるようにすることと、日中仕事をしている方が帰宅後にゆっくりと問い合わせや注文ができるようにすること。同社では、電話によるカスタマーサポートと、オンライン・ショッピングでの注文受付を24時間、年中無休で行っていたが、電話での受注と問い合わせ受付も24時間対応可能とすることで、より一層、顧客サービス充実を図った。現在、オペレータとセールスコンサルタントを合わせて、約100名が対応に当たっている。

Gateway SUPERBOOK Gateway SUPERBOOK

書店、およびゲートウェイカントリーで無料配布されているGateway SUPERBOOK。製品情報だけでなく、パソコン用語やパソコンのあるライフスタイルの提案など興味深い内容が盛りだくさんだ。巻末には問い合わせ先が記載されている。2001年3月より、取扱書店やゲートウェイカントリーが近くにないお客様のために、定期購読をスタートした


オペレータ対応で放棄呼を減少

 お客様からのコールには、まずはじめにオペレータが対応。お客様の用件に応じて、セールスチームのセールスコンサルタントに電話をつないでいる。お客様が製品の購入に至るまでには2~3度やり取りが交わされる。同社では、受注業務用のコンタクト履歴データべースを構築し、いつ誰が出ても的確な対応ができるようセールスコンサルタントをサポート。コンサルティングから受注までの一連の業務をセールコンサルタントが担ている。
 それでは、オペレータは単にIVRの代わりに電話を転送しているだけなのかというとそうではない。「パソコンの使用歴」「新規顧客かリピーターか」といった約10項目におよぶアンケートを実施して、顧客のデータを収集しているのである。収集したデータは、製品に対する顧客満足度調査などに活用している。
 開設当初はIVRを利用して、セールスコンサルタントへの転送やデータの収集を行っていたが、1999年より、お客様への対応をよりヒューマンタッチなものにすることを目標とし、オペレータ対応に切り替えた。これにより、お客様がどの項目を選べばいいのか迷うことがなくなり、放棄呼が減少。現在の放棄率は約3%となっている。また、電話の転送が減り、確実な対応ができるようになった。
 オペレータが対応することは、当然、コストアップにつながる。しかし、費用の負担もお客様満足には変えられないというのが同社の考えだ。
 受注センターでは、電話のほかに、FAXBOXでの情報提供とEメールでの問い合わせ受付も行っている。
 受付状況を対応メディア別に見ると、電話が60%と最も多く、FAXBOXが20%、Eメールが20%となっている。
 また、受注センターでは、Gateway SUPERBOOKの請求者を対象に、送付後のフォローコールを実施している。現在、アウトバウンド業務にプレディクティブダイヤラーを導入することを検討中だ。

評価はポイント制で昇給に反映

 受注センターでは、いつ誰が電話に出ても的確に対応できるよう、サービスの均一化を主眼にオペレータ、およびセールスコンサルタントのスキルチェックを実施。日々教育を行っている。具体的な内容は、4名のリーダーによるモニタリングだ。評価基準に沿って言葉使いやマニュアルに則した対応ができているか、クローシングの方法、受注率などを評価。評価はポイント制になっており、このポイントが昇給に反映される仕組みとなっている。

迅速で的確なテクニカルサポートを可能にする2つのデータベース

 受注センターが購入前のお客様を対象としているのに対し、一方のサポートセンターでは、購入後のお客様を対象に、納期に関するお問い合わせを受け付けるカスタマーサービスと、技術的な問い合わせを受け付けるテクニカルサポートを実施している。センターを管轄しているのは、クライアントケア。昨年、カスタマーサポートから名称を変更した。
 コールセンターの所在地は、受注センターと同じく神奈川県と大阪府の2カ所。受付時間は、個人のお客様と法人のお客様とで分かれており、前者が24時間、365日年中無休、後者が月~土曜日の9:00~18:00となっている。対応に当たるのはテクニシャンと呼ばれる約150名のエンジニアたちだ。
 受け付けには、NTTコミュニケーションズのナビダイヤルを利用している。回線数は神奈川と大阪を合わせて約100回線。用件別に番号を設定しており、はじめから製品に精通したテクニシャンが対応できる体制を整えている。
 告知媒体には、製品に必ず付いている保証書、パソコンのハードそのもの、ホームページ、GatewaySUPERBOOKを活用。また、付属のマウスパッドには、ホームページのアドレスと受注センターのフリーダイヤル番号を印刷している。
 コールセンターシステムには、営業やマーケティングでも利用している基幹システムとしてJDEを使用。これには個人情報、販売履歴、修理履歴のほかに問い合わせなどのコールトラッキングが蓄積されている。また、イントラネットを利用したHTML形式のデータベースと、ナレッジデータベースを併用することにより、キーワードでなく自由文での検索を可能にし、スピーディーな対応を実現している。

問い合わせ画面

問い合わせ画面。購入前の製品に関する問い合わせ、購入後の納品に関する問い合わせなど、
用件ごとに窓口が分かれている

電話対応チーム

電話お問い合わせ状況画面。過去1週間の電話での問い合わせ待ち時間を1時間単位で表している。
情報は毎日更新される


月間6万件のコールに対応

 サポートセンターでは、電話のほかにEメールでの問い合わせにも対応。Eメール対応開始は1998年。専任のスタッフが対応に当たる。Eメールは、受け付けから24時間内に返信するよう決められているが、早いレスポンスを希望するお客様には、9:00~17:45までの受付分に限り、2時間以内に返信するサービスと4時間以内に返信するサービスを有償で提供している。
 受付状況を見ると、テクニカルサポートに寄せられるコール数は、月間約6万件。内訳は、個人のお客様が90%、法人のお客様が10%で、平均通話時間は11分。まれに2~3時間におよぶケースもあるという。カスタマーサービスに寄せられるコール数は、月間約6,000件。こちらの平均通話時間はテクニカルサポートの半分以下の4分となっている。最後にEメールによる受付件数は、月間2万件におよぶ。
 同社では、テクニカルサポートとカスタマーサービスの電話の接続状況をホームページで案内。平均待ち時間を1分以内、3分以内、5分以内、10分以内、10分を超えるの5段階に色分けして表示している。こちらへのアクセス数は月間3万件。また、携帯電話でも同様のサービスを提供しており、月間約2,000件のアクセスがあるという。

サポートランキングで2年連続第1位を獲得

 サポートセンターでも受注センターと同様に、サービスの均一化を主眼としたテクニシャンの教育に力を入れている。研修内容は集合研修で製品に関する知識を教えるほか、リーダーが日々の応対をモニタリングして話法を指導。さらに、モニタリング専任者が毎月各テクニシャンのコールをモニタリングし、名前を名乗ったか、お客様の用件を的確に把握しているかなどを評価している。評価は項目ごとにポイント制となっており、これが昇給に反映される仕組みになっている。
 同社のサポートセンターは多くのお客様から評価されている。日経パソコン誌が実施したパソコンメーカーサポートランキングでは、同社のテクニカルサポートが1999年、2000年と2年続けて第1位を獲得した。
 電話やインターネットを活用したダイレクト販売をメインとする同社にとって、お客様と直に接するフロント業務を担うコールセンターは重要な存在と言える。お客様に高い満足を提供できる日本一のコールセンターを目指す、同社の今後に期待したい。

電話対応チーム

サポートセンターの様子。隣の人の声がじゃまにならないよう、電話対応チームの
パーティションはEメール対応チームのパーティションより高めになっている


月刊『アイ・エム・プレス』2001年6月号の記事