通信ネットワーク最前線(第50回):アウトソーシングとIVRの活用で生産性を向上

日興ビーンズ証券(株)

日興証券のオンライン・トレード専門会社として設立した日興ビーンズ証券(株)。営業開始から約1年を経た同社のコールセンターについて話を聞いた。

老舗証券会社がオンライン・トレードの専門会社を設立

 近年に見られるインターネットの目覚ましい普及と金融業界における規制緩和により、電話やインターネットで金融取引ができるようになり、誰もが今まで以上に金融機関と密接な関わりをもちはじめている。中でもオンライン・トレードは、インターネットが可能にした新しい証券取引のスタイルだ。
 日興ビーンズ証券(株)は、日興證券が設立したインターネット証券取引の専門会社。1999年5月に設立し、10月1日より営業を開始した。
 オンライン・トレードの最大の魅力は、いつでもどこでも、思い立ったら即座に取り引きができるところにある。刻一刻と変化する株式市場に対応するためには、誰にでも簡単でスピーディーに利用できるインターフェースが必要だ。同社では、取り引きの手順を徹底的に分析し、お客様がより短時間に、ストレスを感じることなく目的を達成できる優れた操作性に留意してホームページを構築した。
 また、パソコンに不慣れなお客様や移動中でも取引機会を逃さないよう、電話、携帯電話、PHSでも取り引きができる体制を整えている。
 営業開始以降、着実に口座数を獲得。9月末における開設口座数は、5万7,000口座となっている。

証券・パソコン初心者にも快適な取引環境を提供

 同社の社内では、オンライン・トレードの開始にあたり、ホームページへアクセスしてくるお客様の属性をめぐり議論が繰り広げられた。議論の焦点は、オンライン・トレードにアクセスしてくるのは、40代以上の証券取引はあるもののパソコンに不慣れ、もしくは利用経験がないお客様が主体か、それとも、40代未満のパソコンに抵抗はないが、証券取引の経験がないお客様が主体かという点にあった。
 結果、同社では証券取引がはじめて、パソコンがはじめてというお客様でも安心して快適に利用できるよう、電話によるサポート・サービスを提供。さらに、パソコンがはじめてという方のために、提携パソコン・メーカーによる自宅へのパソコン設置から初期設定、さらには個別講習サービスを用意し、すべてのお客様への快適なオンライン・トレード環境の提供に努めている。

サービス内容別にフリーダイヤルを導入

 コールセンターの開設は1999年9月。営業開始に先駆け、1カ月前の9月1日よりプレセールスを開始した。
 コールセンターは2つ。口座開設を済ませていないお客様(見込客)用と口座開設者用とに分けられており、前者では、資料請求受付と口座開設に関する問い合わせを受け付け。後者では、各種取引や株価照会の受け付けからインターネットの操作に関するテクニカル・サポートまでを担っている。
  資料請求の受け付けには、電話、FAX、ウェブ、ハガキを使用。一方、各種取引や株価照会の受け付け、インターネットの操作に関するテクニカル・サポートの受け付けには、電話、ウェブを使用している。
 電話による受付窓口には、用件別に異なるフリーダイヤル番号を採用。フリーダイヤル採用の目的は、お客様サービスの向上にある。全国が商圏となるオンライン・トレードの場合、遠方のお客様でも通話料を気にせずに電話をかけられる環境は不可欠と言えよう。
 また、いずれも携帯電話とPHSから利用することが可能。携帯電話やPHSからのコールは、電波の状況によって途中で通話が切断されることが懸念されるが、今までそれが原因でトラブルになったことはないという。
 見込客用のフリーダイヤル番号の告知媒体には、テレビ、CATV、ラジオ、新聞、雑誌のほか、ウェブ、バナー広告、街頭で配布するティッシュ、スターター・キットを活用している(資料1)。中でも街頭でのティッシュ配布は、ひとり当たりの見込客獲得コストが安いため、有効的な告知手段と認識している。
 告知頻度は相場の善し悪しで変更。現在は株価があまりふるわないため、営業開始当初の約1/5に止めているという。
 一方、口座開設者用のフリーダイヤル番号の告知媒体には、口座開設通知書とホームページを活用。ホームページではログイン後の画面に表示される。

【資料1】
左下が資料請求者に送付されるスターター・キット、上が街頭で配布されているポケット・ティッシュと資料のセット。いずれも見込客専用フリーダイヤル番号0120-725-410(ナイス日興よいオンライン)が記載されている

左下が資料請求者に送付されるスターター・キット、上が街頭で配布されている
ポケット・ティッシュと資料のセット。いずれも見込客専用フリーダイヤル番号
0120-725-410(ナイス日興よいオンライン)が記載されている

オペレータはカスタマー・サポートに注力

 見込客用コールセンターの電話による受付体制は、席数40席。受付時間帯は、平日の8時から20時までと、土日・祝日の9時から17時までとなっており、約60名のオペレータが対応に当たる。
 一方、口座開設者用コールセンターの電話による受付体制は、席数60席、オペレータ数は約80名。受付時間帯は、IVRによる受け付けが5時から翌3時まで、オペレータによる受け付けが8時から20時までとなっている。
 口座開設者用のコールセンターには、独自に開発したCTIシステムを導入している。
 着信呼はすべてIVR(自動音声応答装置)で受け付けており、株価照会、株式注文、約定照会、注文取消は基本的にはセルフ・サービスで提供。オンライン・トレードならではの取引ルール、およびお客様が求める情報がウェブ上のどこにあるか、あるいは操作方法に関する問い合わせといったテクニカル・サポートについては、オペレータが対応に当たっている。セルフ・サービスでも十分な情報はIVRに任せ、オペレータはお客様のサポートに努めているのである。

東京本社内にある口座開設者用コールセンターのオペレーション風景

東京本社内にある口座開設者用コールセンターのオペレーション風景

効果的なアウトソーシングを実施

 同社では、お客様のコール・パー・トレード(1トレードに要したコール数)の減少に努める意向。具体的には、新規に口座を開設したお客様でも、取引開始から1~2カ月後には、問い合わせをしなくても取り引きが行えるよう、サポートしていきたいとしている。
 一口でオンライン・トレードといっても同社が取り扱う商品数は株式3,500銘柄、投資信託約100銘柄と多く、それぞれに株価や配当金といった複数の情報が不可欠。また同社では、27種類の保険商品も取り扱っている。さらにこれらの取扱商品に関わる情報だけでなく、インターネットの操作方法に至るまで幅広い情報提供が求められる。そのため、オペレータの負担を軽減し、コールセンターの生産性を高めるために、口座開設者用のコールセンターは、東京・中央区の本社内に開設。込み入った内容のお問い合わせがなく、証券外務員資格も必要ない業務は、センター運営からオペレータの教育などのすべてをアウトソーシングしている。

受付状況について

 資料請求件数は、広告の出稿やイベントの開催などプロモーション・スケジュールに左右されるが、平均して1日当たり数千件。受付チャネル別では、電話が数百件、ウェブが数百~数千件、ハガキが0~1,000件、FAXが少々となっている。
 一方、口座開設者用コールセンターに寄せられる1日当たりのコール数は約1万件。そのうちの8割が株価照会、1割が約定照会と注文、残りの1割が各種問い合わせ受付となっており、株価照会の大半はIVRで対応している。現在の陣容でこれだけのコールに対応できるのは、IVRを利用しているからこそと言えるだろう。
 見込客用、口座開設者用のいずれのセンターも、コール数が最も多い曜日は週のはじめの月曜日と週末の金曜日。時間帯は、朝の9時30分と12時30分が最も多く、1日のコール数の45%が集中するが、市場が終わる15時以降は当然のことながらコールが減少する。
 平均通話時間は3分20秒。長い場合は、1時間にもおよぶという。たとえば、50銘柄を保有しているお客様が全銘柄の株価照会をするといったケースがこれに当たる。
 ちなみに、1日当たりのウェブへのアクセス数は、120万PVに達するという。

東京本社内にある口座開設者用コールセンターのオペレーション風景

日興ビーンズ証券(株)のホームページ

人材の確保と育成が課題

 証券取引は証券外務員資格保持者でなければ行ってはいけないと業法で定められているため、コールセンターでは外務員資格保持者の獲得が課題となっている。
 外務員資格は、現在証券会社に務めている人、もしくは証券会社のOB・OGのみがもっている資格のため、人材不足は深刻。資格保持者だけで十分な人材を確保することは難しいのが現状だ。そこで同社では、外務員資格保持者の採用と並行して、社内での資格取得をサポートしている。ちなみに、二種であれば1~2カ月で取得が可能だという。
 しかし、資格保持者を採用したところで、すぐコールセンター業務がこなせるわけではない。コミュニケーション・スキルが必要であるのはもちろん、オンライン・トレードならではの取引ルールを熟知していることも不可欠だ。また、規制緩和によって取り引きがお客様主導となった結果、問い合わせ内容の幅が広がると同時に、お客様自身が容易に情報を収集できるようになったため、問い合わせ内容のレベルも高くなっている。お客様からのあらゆる問い合わせに対応するためにも、改めて専門知識を修得する必要があるのだ。
 そこで同社では、教育カリキュラムを自社で開発し、オペレータの育成に取り組んでいる。
 研修内容は基礎研修とOJTに大別されており、まずはじめにコミュニケーション・スキルや同社の業務や商品などに関する基礎研修を受けた後、経験豊富なベテランのオペレータのもとでモニタリングをしたり、実際に電話を受けながらのOJTを行い、晴れてひとり立ちとなる。
 研修期間は、基礎研修が20日間、OJTが1カ月間となっている。同社では、コールセンターをカスタマー・サービスの一環と位置付けていることから、「気持ちよく電話を切っていただく」をスローガンに掲げ、研修に取り組んでいる。

内容を特化した受付体制を推進

 同社では、コールセンターの営業開始以降、約1年を経たこの8月14日より、コールセンター内に投資信託専用のお客様相談デスク「投信i-desk(アイ・デスク)」を開設した。これは株式売買とは別に投資信託に関する質問を受け付ける専用窓口がほしいというお客様の声に対応したもの。「投信idesk(アイ・デスク)」の“i”はInternet、Information、そしてInvestmentを意味している。
 「投信i-desk」では、投資信託の専門知識をもった投信i-deskスタッフが、投信に関するあらゆる質問に対応。個別商品の推奨や、商品販売を行うのではなく、専門家の知識をもとにお客様自身の判断により、投資信託を購入していただくことを目指している。
 将来的には、株式、保険など他の商品についても専門窓口を開設する予定。同社ではこれらの窓口を通して、お客様にとって利便性の高いサービスを提供していきたいとしている。

CRM推進への取り組み

 同社では、より一層お客様のニーズに合った、使いやすいインターフェースを設計するために、さまざまなお客様の反応の中から求められるサービスを模索しているが、思うようにポイントをつかめないでいるのが現状。そこで、お客様の要望を明確に把握するために、ナレッジ・マネジメント・ツールを導入して、お客様情報を科学的に分析し、ウェブに反映させていく計画を進めている。
 さらに同社では、データーベースを活用したアウトバウンド・コールの展開にも乗り出す意向。
 具体的には、新規口座開設者へのサンキュー・コールが挙げられる。以前、資料請求者を対象に試験的にフォロー・コールを実施し、フォローした資料請求者とフォローしなかった資料請求者との口座開設率を比較したことろ、前者がはるかに後者を上回ったという。
 また、アウトバウンド・コールを通してお客様の課題やニーズを掘り起こし、CRMを推進していきたいとしている。


月刊『アイ・エム・プレス』2000年11月号の記事