1999年7月に東西の「お客様ご相談センター」を大阪本社内に集約した松下電器産業(株)。同社センターの現状と今後の展開について話を聞いた。
東西のご相談センターを大阪本社内に集約
松下電器産業(株)お客様ご相談中央センターでは「すべてのお客様に最高の満足を」「お客様の声を経営に活かす」という基本方針のもと、「365日、いつもあなたと。」をキャッチフレーズに、フリーダイヤル0120-878-365(パナは365日)で問い合わせ、および相談を受け付けている。
同社が生活者からの相談受付業務を開始したのは今を遡ること33年前、東京支店内にインフォメーションセンターを設けたことにはじまる。その後、1971年には、全国24カ所の支店、および営業所に「お客様ご相談センター」を設置。同時に商品分野別の事業部にも「お客様相談室」を設けて、連携体制を敷きながら各種問い合わせへの対応を行ってきた。さらに1991年には、これを旧サービス本部の名称を改めたCS本部内の組織として一元化。1996年5月には、コールセンターを東日本お客様ご相談センター(東京)と西日本お客様ご相談センター(大阪)の2カ所に集約し、これまで一般加入回線だった受付窓口に60回線のフリーダイヤルを導入した。また、体制の見直しにともなって受付方法も変更。以前はすべての相談員があらゆる問い合わせや相談に対応していたが、商品群別に「AVグループ」「電化最寄りグループ」「情報家電グループ」「季節・設備グループ」をつくり、それぞれの専任相談員が対応する方法を採用した。お客様の問い合わせや相談に的確に回答することでサービス・レベルを向上させること、および、お客様に通話料金の負担がかからないフリーダイヤルを利用することでより多くのお客様の声を収集し、商品やサービスの改善を推進することが目的であった。
さらに1999年7月、同社では東日本と西日本のコールセンターを大阪の本社内に集約、その名称を「お客様ご相談中央センター」に変更した。あわせて、これまで商品別に4つに分かれていたグループをさらに細分化し、同社の分社と関連会社の計10社にそれぞれお客様ご相談センターを設置。「AVC社」ではテレビ・ビデオ・オーディオ・ワープロなど、「電化・住設社」では洗濯機・掃除機・電子レンジなど、「エアコン社」ではエアコン、「松下冷機」では冷蔵庫など、「松下精工」では空気清浄機や換気扇など、「松下通工」では電話機など、「九州松下」ではファクシミリなど、「松下寿」ではコタツなど、「松下電池」では乾電池など、「松下電送」では、業務用ファクシミリや家庭用普通紙ファクシミリなどといった具合に、それぞれの商品を製造している会社でお客様からの問い合わせを受け付けることで、より一層専門的な対応ができる相談体制を整えた。このほか、広告やサービスに関する問い合わせには、中央センターの相談員が対応している。
お客様からの電話は、まず中央センターの受付専任のオペレーターが受け付け、用件を確認してから、その内容に応じて最適な相談センターに転送するという仕組みだ(図表1)。
全国のお客様からフリーダイヤルで電話を受け付けている同社にとって、コールセンターの集約は通話料金の増大につながる。また、相談対応の細分化はオペレーション効率の低下にもつながる。それでもあえて実施に踏み切ったのは、①事業部の近くにコールセンターを置くことでお客様と各事業所を直結し、ものづくりに必要な情報の迅速なフィードバックを実現する、②お客様のニーズに応えるために用件別相談体制を強化する、③トータルなCSの向上に向けて、情報の共有化に基づく効果的な運営を推進するため。つまり、相談センター全体の運営が円滑に行われるよう総合運営を推進することにより、同社が提供する商品とサービスの双方からお客様の満足度を向上させることがその目的である。
10月よりIVRを活用した受け付けを開始
前述の通り、同社では、ご相談センターの受付窓口にフリーダイヤルを導入。フリーダイヤル番号の告知には、商品に必ずついている取扱説明書、カタログ、新聞・雑誌、NTTの電話番号案内、ホームページなどを活用している。
現在のところ、中央センターに寄せられるコールの約95%が各相談センターに転送されているという。同社では、一部の相談内容に限ってオペレーターを介さずにご相談センターにつなぐことで、オペレーションの効率アップを図ることを検討。コールセンター・システムにIVRを導入し、この10月より運用を開始した(図表2)。もっとも多く相談が寄せられるテレビやビデオについてはAVC社へ、また洗濯機については電化・住設社へ直接つなぎ、その他製品の相談については、従来通りオペレーターが受け付けてから各社お客様ご相談センターにつないでいる。
同社では、IVRの導入に当たり、メッセージが長くなりすぎないように注意を払った。また、お客様が戸惑うことのないシンプルなコールフローを実現するために、問い合わせが多く、どこのご相談センターで対応するのかが明確なものからスタートした。
相談に対応するために必要な商品情報、および受け付けられた相談内容などの情報はすべて、お客様ご相談中央センター内にあるデータベース・サーバに蓄積されている。相談員はデータベース・サーバにアクセスして必要な情報を検索し、それを閲覧しながら対応することができる仕組みになっている。1日に蓄積された相談内容は、夜間、お客様情報検索サーバに自動転送されるため、翌日には最新の情報をもとにオペレーションができる。
各種相談の受付時間帯は、午前9時~午後8時まで年中無休。オペレーター数は、一次受付のオペレーターが26名、中央センターと各社相談センターの相談員が約200名。相談員はほぼ全員が同社社員で構成されている。
また、受付状況を見ると、ご相談センターに寄せられるコール数は年々増加の傾向にあり、1995年度までは約35万件だったコール数が、1996年度には約65万件、1997年度には約98万件と増え続け、1998年度にはついに100万件を上回り、約116万件を記録した。1999年度には約130万件にまで達する見込みだ。また、曜日別にみると、月曜日が最も多く約5,300件、その他の平日が約4,600件、土曜日が約2,500件、日曜・祝日が約1,500件。前年度と比較すると、特に土日・祝日のコール数が増加しているという。同社では、今後のコール数増加を見込み、東西のご相談センターを集約する際にフリーダイヤルを80回線に増設している。
ちなみに相談内容の内訳は、商品の「使い方相談」が約40.5%と最も多く、以降「修理相談」が約27.5%、「買い物相談」が約22.8%となっている。
修理の相談窓口にナビダイヤルを導入
同社では、修理相談の場合、お客様との対話の中で実際に修理が必要と思われるケースについては相談員がサービス会社の電話番号をお知らせするというかたちで対応している。
修理依頼の受付から実際の修理までを全面的に担っているのは、同社の関連会社のひとつである松下テクニカルサービス(株)。テクニカルサービスは、全国に約100の拠点をもっているが、そのうちの約60拠点で修理相談の受け付けに当たっている。
これまで相談窓口には一般加入回線を利用していたが、現在、NTTのナビダイヤルに切り替えを図っている最中だ。ナビダイヤルは、0570ではじまる一般加入回線の電話番号とは異なる専用の番号を使用して、より効率的な電話受付を可能とするサービス。全国の複数の事業所で共通の番号を使用でき、導入企業が指定した地域からの通話を指定した着信先に接続することができる。また、オプショナル・サービスを利用すれば、ひとつの番号でも発信地域によってあらかじめ指定した着信先に接続したり、本来の着信先の回線が話中の場合には、あらかじめ指定したほかの着信先に迂回させることも可能だ。同社では、このオプショナル・サービスを利用して、お客様から最寄りのサービス会社に電話がつながる仕組みを採っている。
導入の目的は、電話番号を全国共通番号にすることで効果的な告知を行うことと、サービス会社を紹介する相談員の負担を軽減すること。さらには、サービス会社の移転にともなう電話番号のメンテナンスの手間を省くといった意味合いもある。ナビダイヤルは発信者課金サービスであるため、導入することにより、ある地域からは非常に遠方へ電話をかけなければいけないというイメージを与え、サービスが低下すると誤解されがちだが、同社では各県にひとつ以上の受付拠点を設けているので、料金面でのサービスの低下はしな
いと考えた。
松下電器産業では、ナビダイヤルの導入によるメリットを3つ挙げている。ひとつめは、電話番号のメンテナンスの遅れによって生じる「掛けたけどつながらない」というトラブルを解消することができる。2つめは、オペレーターが各サービス拠点の電話番号を確認する手間がかからないため、よりスムーズなオペレーションが実現する。3つめは、修理相談はナビダイヤル、問い合わせはフリーダイヤルと、窓口がシンプルかつ明確になるため、お客様の混乱を避けることができるといったこと。
現在、ナビダイヤルの告知には、オペレーターがお客様に口頭でお知らせしているほか、NTTの電話番号案内を利用。また今後は、新製品の取扱説明書から順次、ナビダイヤルを記載していき、既存製品の取扱説明書についても徐々に切り替えていく予定。修理相談はナビダイヤル、問い合わせはフリーダイヤルというように、窓口を明確にしていく意向だ。しかし、携帯電話やPHSを利用しているお客様を対象に、一般加入回線での受け付けも継続していくという。
お客様ご相談中央センター 一次受付の様子
さらなるCSの向上を目指して
受付体制の細分化を図って専門性を高めるとともに、コールセンター・システムを再構築しても、それだけでは単にインフラを整備したに過ぎず、最終的に同社が目指すところの「顧客満足の獲得」には至らない。そこで同社では、現在、対応力の向上と全社的なCS向上に向けての風土づくりに取り組んでいるという。
対応力を向上させるためには、相談員の育成が不可欠なのは言うまでもない。そこで同社では、商品知識、電話応対、同社のサービスに関連した相談対応、パソコン操作などの研修から、日々のOJTに至るまで、より一層徹底した教育を行っていく意向。
また同社では、全社的なCS向上に向けての取り組みを強化するために、通常の業務ではお客様と接する機会のない事業部の社員を対象とした体験研修を行っている。設計や企画、技術のスタッフに対応を経験させることで、お客様のニーズの多様性を実感する機会を提供し、従業員ひとりひとりが真剣に顧客満足について考える環境を提供していこうというのがその狙いだ。全従業員が常に顧客満足を念頭に置いて業務に携わることが、真の顧客サービスにつながると同社では考えているのである。
顧客本位を実践し続ける松下電器産業。今後もその動向に注目していきたい。