通信ネットワーク最前線(第25回) 

ティーペック(株) 

ティーペック(株)は、業界初の電話健康相談専門会社。同社がフリーダイヤルで24時間・年中無休で受け付ける「ハロー健康相談24」について話を聞いた。

業界初!! 24時間・年中無休の電話健康相談を開始

 ティーペック(株)は、21世紀の超高齢化社会を迎えるに当たり、厚生省の助言、指導のもと、北欧や米国の医療・介護関連の制度やシステムについての長年にわたる研究を経て、1989年6月に日本で最初に設立された電話健康相談の専門会社である。設立時には、医師・看護婦・保健婦などの有資格者が、健康相談、および、夜間・休日にも診療を行っている医療機関の問い合わせを24時間・年中無休、フリーダイヤルで受け付ける「ハロー健康相談24」のみを行っていたが、その後、会員のニーズに合わせて提供サービスを拡充。現在では、人には聞きにくい悩みに音声応答システムでアドバイスを行うサービスをはじめ、自宅にいながらわずかの血液や便・痰を簡単な器具で採取し、郵送するだけで検診が受けられる「郵便検診」や健康情報誌『さわやか』の発行など、法人または個人を対象とした合計9種類のサービスを提供している。
 その一方で「ハロー健康相談24」にもさまざまなサービスが加わり、現在では、健康相談・医療相談・看護相談・介護相談・メンタルヘルスなどの各種相談と、医療機関情報・夜間や休日の医療機関の案内・介護などに関するシルバー情報・医薬品に関する情報など幅広い情報を提供している。同サービスは会員制となっており、主に健康保険組合、共済組合など各種団体や流通関連会社などでは社員・職員の福利厚生として、メーカーや通信、金融関連会社などでは顧客サービスの一環として利用されている。
 契約には、一般の契約のほかに専用回線契約がある。専用回線契約とは、専用のフリーダイヤル番号を設け、契約先が希望する名称で相談を受け付けるもの。顧客サービスの一環として「ハロー健康相談24」を利用している企業には、顧客に独自の事業としてアピールできるメリットがある。
 現在の契約数は、一般契約が約800件、専用回線契約が約370件。同サービスは、基本的に法人を対象としたサービスであるが、希望すれば個人が会員になることもできる。入会金は無料。毎月1,300円の会費を納めるだけでいい。現在同社では、約300名の個人会員を有している。

「ハロー健康相談24」のパンフレット。同サービスの歩みはティーペック(株)の歩みでもある

「ハロー健康相談24」のパンフレット。同サービスの歩みはティーペック(株)の歩みでもある

東京コールセンターのオペレーション風景

東京コールセンターのオペレーション風景


相談件数が急激に増加 9年間で150万件の相談を受け付け

 「ハロー健康相談24」の受け付けは、東京・大阪の2カ所のコールセンターで担っており、名古屋を分岐点とし、東は東京、西は大阪のコールセンターで受け付けている。大阪のコールセンターは、相談件数の増加にともない1996年3月に開設された。前述の通り、受付時間帯は24時間・年中無休。フリーダイヤルで受け付けを行っている。
 現在相談には、総勢259名の相談員がシフトを組んで応対に当たっている。相談員の構成は、各科の医師(内科・小児科・産婦人科・心療内科・精神科・海外感染症科など)48名、ヘルスカウンセラー(保健婦・助産婦・正看護婦・臨床心理士などのキャリアのある相談員)179名、研修により豊富な知識を身につけたメディカルオペレーター32名。特に深夜などには緊急の相談が多く、経験豊富な医師による的確な判断が必要とされる。そこで同社では、常に迅速で的確な解答ができるよう、医師の24時間常勤体制を敷いている。最近では、人体を切らずに行う手術など高度医療に関する相談が増えていることからも、医師の常勤の必要性は今まで以上に高くなっているという。
 主な相談内容とその割合を見ると、気になる体の症状についての相談が最も多く33%。続いて、現在治療中の人からの治療に関する相談が30%、母子保健・育児に関する相談が15%、家庭看護・介護に関する相談が11%、ストレスおよびメンタルヘルスに関する相談が5%、健康保持・増進に関する相談が3%、夜間・休日の医療機関の案内が3%。また、情報サービスの利用を見ると、専門医療機関情報が41%、近くの医療機関についてが34%、シルバー・介護関連が14%、人間ドックについてが8%、その他が3%となっている。
 「ハロー健康相談24」に寄せられる相談件数は、1カ月に約5万7,000件。1日の相談件数は2,000件前後。過去9年間に受けた相談件数は約150万件にもおよぶ。
 「ハロー健康相談24」を開始して間もない1991年の相談件数は7,649件であった。以降、契約件数が増えるとともに相談件数も着実に増え続け、1995年には15万6,285件、1996年には30万6,369件、1997年には42万9,691件の相談が寄せられた(図表1)。同社では、1998年の相談件数は、65万件を上回るものと予測している。

【図表1】相談件数・スタッフ数の推移

データベースの拡充により利用者のニーズに対応

 このように、年々急速に相談件数が増えるとともに、相談内容も多様化しているのが現状。最近は特に、高度医療や薬品に関する質問が増える傾向にある。同社では1993年、厚生省の公益法人である(社)日本生活問題研究所 保健医療情報センターの協力を得て、日本全国にあるすべての医療機関情報をデータベース化した。登録されたデータは、合計24万4,739件。これらは、「医療機関情報」「シルバー・介護情報」「医薬品」の3つに大きく分かれており、さらに「医療機関情報」は病院情報、特定機能病院、リハビリテーション施設など各種医療機関情報、夜間・休日の医療機関、専門窓口別医療機関情報に、「シルバー・介護情報」は公的福祉施設、民間による在宅・福祉サービス、各種相談窓口、ボランティア団体に分かれている。同社では、これらをNTTとの共同開発によるTS-200をベースとしたオリジナルのオペレーション・システムと連動させることにより、利用者の多種多様なニーズへの対応を実現させた。
 ここで、オペレーションの流れを簡単に紹介しよう。まず、電話を受けた相談員は利用者がフリーダイヤル番号を何で知ったか、企業・団体名などを尋ねる。そして、契約先名称、契約先への提供サービスの内容など契約先情報を見ながら、どの契約先の会員であるかを確認する。確認が済むと、用件をうかがい、医療機関などの問い合わせについてはデータベースを検索し、回答。健康相談については、相談員が知識を活かして回答をする。
 医療機関の紹介などの情報提供に関しては、24万4,739件に上る情報が蓄積されたデータベースの活用によって、スピーディーで的確な対応が実現されている。たとえば夜間・休日の医療機関に関する問い合わせの場合、夜間・休日の医療機関のデータベースにアクセス。次に、都道府県検索メニューで利用者が住んでいる県を選択。さらに、市区町村検索メニューで市区町村を選択すれば、指定した地域内の病院の一覧表が画面に表示される。そして、病気やけがの症状によって、医療機関を選定し、その所在地や詳細データを見ることができる(図表2)。
 データベースの拡充と、医療状況の蓄積、相談員への徹底した研修と経験の蓄積により、各種問い合わせ・相談への即答率は確実に向上している。現在の即答率は、応急・救急に関する相談の場合は100%。高度医療などの場合は98%で、残りの2%についてはいったん電話を切り、調べた後にコールバックするという方法で対応している。また、提供する情報や、相談に対する回答の内容もますますレベルアップしている。
 同社では、毎年、利用者を対象としたアンケートを実施しているが、同社のサービスに満足していると答えた利用者の割合は、1989~1991年までが70%台、1992~1995年までが80%台、1996年以降は常に90%以上を占めている。利用者が、サービスの充実・向上を実感・評価していることが、この調査結果に表れていると言えよう。

【図表2】オペレーションの流れ

新商品開発・サービス内容の充実に医療状況を活用

 「ハロー健康相談24」に寄せられた問い合わせ、および、相談内容は、会員情報と併せて相談員がすべて受付カードに記入。記録済みの受付カードは、OCRで読み込み、データベース化されている。こうして蓄積された利用者の年齢・受付時間帯、相談内容などの医療状況は、毎月契約先別に「健康相談報告書」としてまとめられ、専用回線契約を結んでいる企業・団体にフィードバックされる。また同社では、相談内容の分析を行ってその傾向を探り、質問が多いものに関しては早急に対応策を考えるほか、従来の商品に新たな機能を付け加えるなど、サービス改善、および、新商品開発に役立てている。医療状況の構築・分析によって、人々の潜在ニーズを顕在化できると同社は考えているのである。
 その最近の例として、1998年6月に新検索システム「専用窓口別医療機関情報」を導入したことが挙げられる。「専用窓口別医療機関情報」とは、専門医や専門外来、また女医のいる産婦人科などの情報を提供するもので、利用者のニーズによりきめ細かく対応するためのもの。地域や診療科目、設備など、項目が細かく分類されており、たとえば産婦人科では、無痛分娩、更年期障害、更年期外来、不妊症外来、立ち会い分娩、ラマーズ法、女医のいる産婦人科、子連れ出産可能な病院など、個人では調べることが難しかった情報の提供を可能にした。

多くの人々の健康づくりのために

 今後同社はインフラ、およびサービス面の充実に力を入れていく意向だ。インフラ面では、毎月全回線について実施しているNTTのトラフィック調査を継続して行い、話し中があれば回線数を増設。24時間話し中がない状態を維持していく。また、相談員に関しても、相談件数の増加に比例して増員を図っていく意向。加えて、相談件数の多い地域については、コールセンターを新設する計画もあるという。一方、サービス面では、すべての相談に対する的確で確実な回答を目指し、相談員の教育を強化。新薬の知識などに関する研修を随時行っていくほか、高度化がめざましい医療機器の情報をどのように相談マニュアルに採り入れるかを検討していくという。
 今日、医療には“治療する医療”だけでなく、“予防する医療”が求められている。同社では、約150万件の相談に対応してきた経験を活かし、健康づくりのためのより高度な電話健康相談サービスを提供していく意向。これからも利用者の満足を高めていけるよう、常に利用者の立場に立ち、ニーズに合ったサービスを提供していきたいとしている。


月刊『アイ・エム・プレス』1998年10月号の記事