愛知県名古屋市を拠点に通販事業を営む(株)名鉄百貨店の子会社、(株)めいてつホームショッピング。同社のフリーダイヤルの活用と今後の展開について話を聞いた。
通販事業部を独立させ通販専門子会社を設立
(株)めいてつホームショッピングは、今から約3年ほど前に(株)名鉄百貨店の通販事業部を分離・独立するかたちで設立された通販専業企業。
東海地方は、市場がそれほど大きくないことに加えて、交通手段として車を利用する人が多い。そのため、自宅に居ながらにして買い物が楽しめる通信販売へのニーズはそれほど高くはないと言われてきた。しかし、そのような中でも同社では受注窓口にフリーダイヤルを導入し、「便利でお得」という付加価値を付けることで、通信販売の利用を促進する環境作りに取り組んできた。また今年10 月に開始されたばかりのNTT の新サービス「ナンバー・ディスプレイ(発信電話番号表示サービス)」をいち早く導入。さらなる顧客サービスの向上と業務の効率化に取り組んでいる。
現在、同社の年間売上高は24億円に達している。
フリーダイヤルの導入で顧客サービスの向上とイメージアップに成功
(株)名鉄百貨店が通販事業に着手したのは1978 年のこと。当時は一般加入回線を使用して受注業務に当たっていたが、1985 年12 月にフリーダイヤルを導入。導入の目的は、顧客サービスの向上。着信側が通話料金を負担するフリーダイヤルは、お客様にとって、通話料金を気にせず気軽に電話をかけることができる、便利でお得なサービスだからである。
最近では、通信販売の受注窓口に限らず、メーカーなど幅広い業種において、顧客サービスの一環として、フリーダイヤルの導入が進んできている。しかし、当時はNTT がフリーダイヤルサービスを開始してまだ間もない頃。フリーダイヤルの導入は、同社の通信販売への注目度を高めるという狙いもあったわけだ。
同社では現在、フリーダイヤルの電話とFAX のほか、一般加入回線の電話、ハガキ、現金書留、名鉄百貨店内に設置した「通販コーナー」でお客様からの注文や問い合わせを受け付けている。
フリーダイヤル番号は、電話が0120-252525(ニコニコツーハン)、FAX が0120-257625。他社に先駆けていち早くフリーダイヤルを導入したため、語呂合わせの良い番号を選ぶことができた。ニコニコツーハンは、親しみやすく、また、大変覚えやすいと、お客様の評判も上々。フリーダイヤルの導入は、期待通り、同社のイメージ・アップにつながったのである。
(株)めいてつホームショッピングでは、(株)名鉄百貨店時代に導入したフリーダイヤルを、(株)めいてつホームショッピングとして独立してからもそのまま使用している。そのため、新会社設立に当たって改めて番号の告知をする必要もなく、お客様に戸惑いを感じさせたり、不便をかけることもなかった。
これらの番号の告知には、さまざまな媒体が活用されている。主な利用媒体は、ハウスカタログ、新聞の折り込みチラシ、既存顧客へのダイレクトメール、共同企画のラジオ通販(東海ラジオ・KBS 京都)、共同企画のテレビ通販(東海テレビ)。
告知頻度が最も高いのはラジオ通販。毎週月曜日から木曜日までの毎日、放送を流している。次に多いのが新聞の折り込みチラシで、月に4?6 回、東海地区に各50 万?100 万部ずつ配布している。ハウスカタログは年に4回、毎号13万?15万部発行。既存顧客へのダイレクトメールは年に2 ?3回、約10万ずつ発送している。
フリーダイヤルのサービス地域は20県に限定
常にお客様との信頼関係を第一に考え、地域密着型のサービスで東海地区の人々に親しまれている老舗百貨店、(株)名鉄百貨店の子会社だけに、同社のお客様の約85%は愛知・三重・岐阜の3 県に集中している。そこで同社では、フリーダイヤルで注文、および問い合わせを受け付ける地域を、愛知・岐阜・三重・静岡・山梨・富山・石川・長野・福井・滋賀・奈良・大阪・京都・兵庫・和歌山・岡山・広島・徳島・香川・愛媛の20 県のサービス地域に限定。サービス地域以外のお客様からの注文、および問い合わせには、一般加入回線で対応している。ただし、フリーダイヤルのFAXは、全国からのアクセスが可能だ。このように同社では、フリーダイヤルと一般加入回線を使い分けている。
97年11 月に岡山・広島・徳島・香川・愛媛の5 県を加えるなど、同社ではフリーダイヤルを利用できる地域を徐々に拡大してきた。しかし、今後も地域密着型のビジネスに徹していくとの考えから、サービス地域を全国にまで拡大する意向はない。
フリーダイヤル番号を掲載しているハウスカタログ「CLOVER MATE」 (左)とチラシ(右)
年中無休・24時間の受付体制を実現
ここで、同社の受付体制を見てみよう。
受注センターは愛知県名古屋市の1 カ所。注文は年中無休で受け付けており、オペレーターによる注文の受付時間帯は、月?土曜日の午前9 時から午後7時までと、日曜日の午前9 時から午後5 時まで。問い合わせは、月?土曜日の午前9 時30 分から午後5 時まで。日曜日は休日となっている。
これに加えて、FAX でも注文を受け付けているほか、ライブオペレーションによる受け付けが終了した午後7 時から翌日の午前9 時まで(日曜日は午後5時から午前9 時まで)は、音声応答装置を用いた自動受信システムを稼働させ、夜間でも同じ番号(0120-252525)で注文を受け付けている。このように、複数のメディアを用いることで、年中無休・24 時間、フリーダイヤルで受注を行う体制が整えられている。
応対に当たるのは、17 名のオペレーターと1 名のスーパーバイザー、計18 名。普段は7~8 名のオペレーターを配置しているが、カタログ発行後2 週間と、新聞に折り込みチラシを入れた日から3 日間は17 名全員がオペレーションに当たる。お客様からの電話を取りこぼさぬよう、予測コール数に合わせてシフトを組んでいるのだ。それでも呼が溢れてしまった場合には、しばらく時間をおいてからかけ直していただくよう、自動音声応答装置を利用してメッセージを流している。
回線数は、フリーダイヤルが、受注20 回線、問い合わせ2回線、FAX1 回線の計23 回線。一般加入回線が、受注1 回線、問い合わせ1 回線の計2 回線。フリーダイヤルと一般加入回線で合計25 回線を確保している。それぞれの受付コール数は、フリーダイヤルの電話では、オペレーターによる受注が約2 万1,000件/月、自動受信システムによる受注が約50 件/月、問い合わせが900 ?1,500 件/月。フリーダイヤルFAX での受注が150?200 件/月。一般加入回線では、受注が200 ?300 件/月、問い合わせが約150 件/月となっている。
6 年ほど前、オペレーターが電話を受けながらその場で受注内容を端末に入力できるようシステムを整備してからは、とりあえず受注フォーマットに手書きし、あとでまとめて入力するという行程が省略され、業務の効率化が実現したのはもちろん、お客様からの注文や問い合わせへの迅速な対応が可能となった。
受注内容を端末に入力しながらスムーズにオペレーションを展開している
新聞広告を見て企業モニターに応募
NTT では97 年1 月、横浜・名古屋・福岡の3 地域で「ナンバー・ディスプレイ(発信電話番号表示サービス)」の試験提供を開始するに当たり、企業モニターを募集した。これを新聞広告で知った同社は、社内で検討。その結 、97 年2 月、「発信電話番号表示サービスの試験提供」の企業モニターとして、コールセンターにナンバー・ディスプレイを導入することになった。お客様が注文のたびに、名前や住所、電話番号をオペレーターに伝える手間を省くことができれば、短時間で的確な対応をすることが可能になり、顧客サービスにつながると考えたからである。
今回の導入では、ディスプレイにお客様の電話番号を表示するまでにとどめたが、これだけでも、入力作業が効率化し、1(いち)、7(しち)、8(はち)など聞き間違いしやすい数字の誤入力を防ぐことができるなど、導入の効果は決して小さくないという。
余談だが、ナンバー・ディスプレイには予想外の効果があるという。
お問い合わせの電話の場合、オペレーターが電話に出るなり用件を言いはじめるお客様が多い。このような時には、なかなか名前や電話番号をたずねにくいものだ。しかし、ディスプレイに表示された電話番号を見れば、顧客データベースを検索して、お客様が誰なのか、いつ何を注文したのかを知ることができる。このように、ナンバー・ディスプレイは、相手が誰かもわからないままに手探りで対応を進める必要がないという点で、お問い合わせを受けるオペレーターの精神安定剤の役割を果たしているわけだ。
また、お年寄りのお客様が自宅の電話番号を忘れてしまった時に、逆にオペレーターがお客様の電話番号をお教えして、大変驚かれたというエピソードもある。
しかし、同サービスは、97 年10 月から、横浜・名古屋・福岡の3 地域で実用化されたばかり。サービスが一般生活者に浸透するまでにはまだまだ時間を要するであろう。名乗ってもいないのに、自分が誰なのかを相手に知られていることに拒否反応を示すお客様もいないとは限らない。お客様のプライバシーの問題も含めて、サービスの利用に当たっては、充分な告知が必要であろう。お客様との信頼関係を第一に考える同社では、現在、ハウスカタログを利用してナンバー・ディスプレイ利用の告知に努めている。
お客様にも企業側にもプラスになるシステムを目指して
ナンバー・ディスプレイについて、同社では、現在の活用方法をファースト・ステップと 置付け、着信と同時にディスプレイに表示される発信者の電話番号を目で確認するところまでにとどめている。
今後同社では、セカンド・ステップとして、PBX と顧客データベースを連動させ、着信と同時にシステムが自動的に顧客データベースを検索し、オペレーターがオペレーションに入る前にお客様の情報をポップアップさせる体制を整えたいとしている。つまり、これまで個別に取り扱っていたコンピュータ・システムと通信システムを統合的に管理するCTI 化を図ろうとしているのだ(図表1)。
さらにサード・ステップとして、CD-ROM の電話番号データベースを使用することで、新規のお客様であっても世帯主の名前や住所が表示できるようにし、入力作業を簡略化していく意向。これにより、現在1 件の受注につき150 ?180 秒かかっている通話時間を5 ?10%程度短縮できると予測している。
また、名前や住所を偽って注文をする、いたずら電話の防止につながるという期待もある。ディスプレイに表示されている番号と、お客様からうかがった番号を見比べるなどして、いたずら電話である可能性が高いと思われる場合には、注文内容をうかがってからいったん電話を切り、後日電話をかけ直して、そのお客様が本当に注文をしたかどうかを確認することもできるわけだ。
同社では、お客様にとっても同社にとってもメリットのあるシステム作りを目指し、1999 年春にサード・ステップまでを実現する計画。
いかなる場合にも、顧客満足度の向上と、これにともなう自社の繁栄を追求し、お客様、自社ともにメリットのあるシステムでなければ導入は無意味という考えを持ち続けてきた同社にとって、ナンバー・ディスプレイは最適なサービスと言えるだろう。