通信ネットワーク最前線(第12回)

(株)プリンスホテル

国内で77ホテルを有するプリンスホテル。今回は、 同社の予約センターについてお話をうかがった。

電話を利用したリザベーション・ネットワークを構築

 プリンスホテルは 1997 年 4 月より、札幌、秋田、仙台、新潟、金沢、成田、東京、名古屋、大阪、広島、松山、福岡、鹿児島の 13 カ所にある予約センターで、フリーダイヤルによる宿泊の予約や各種問い合わせ受け付けをスタートした。
 この予約センターの歴史は、 1965 年に東京と大阪に設けたセールスオフィスにはじまる。当時、 2 カ所のセールスオフィスにセールススタッフを駐在させ、主に修学旅行など団体の宿泊予約を獲得するための営業活動を行っていたが、交通網の発展にともない全国各地に支店網が広がり、2 カ所のセールスオフィスのセールススタッフだけでは全ホテルをフォローすることが難しくなった。そこで 1982 年 11 月、電話を利用したリザベーション・ネットワーク「PHOENICS (フェニックス)」(全国ネットワーク客室予約および顧客情報管理システム)の構築に着手した。
 「 P H O E N I C S 」 は 、 “PRINCE HOTELS OUT LINE&EXTENSIVE NETWORK INFORMATION CONTROL SYSTEM”の略。全国の予約センターからの即時予約を実現すると同時に、プリンスホテルグループの相互送客、および顧客情報管理を強化、客室利用の促進を図ることを目的としたシステムである。これまでのところ、全国の予約センターと主要プリンスホテル間がオンライン化されている。
 同社では 1995 年 11 月より、プリンスホテルが発行する「プリンスカード」会員(約 5 万人)と、プリンスホテルで挙式を行うと自動的に会員として登録される「菊華会」会員(約 14 万人)専用の宿泊予約ダイヤルとして、全国共通のフリーダイヤル 0120-00-8686 (ハローハロー)を導入。それぞれの会員誌を利用して番号の告知を行った。季節性の高い企画商品であるスキーパックの申し込みからフリーダイヤルによる受け付けをはじめたところ、コール数は予想をはるかに上回る結果となった。この経験を通して、同社では比較的スパンの短い企画商品を販売する場合、集中的に広告を打ち、集中的に受け付けることを狙ったプロモーションの効果をフリーダイヤルがより高めることを痛感したという。

より多くのお客様とのコミュニケーションを実現

 1990 年初頭に起きたバブルの崩壊によって、市場は売り手市場から買い手市場へと変化した。同社に限らずホテル業界全体に、多様化するお客様のニーズにマッチした商品開発が求められるようになった。そこで同社では、予約や問い合わせなどの電話や、宿泊客との対面によるやり取りの中から、お客様のニーズを収集・分析。この結果を開発部門へフィードバックすることで、商品開発に役立てていった。
 そして、1997 年 4 月 1 日、それまで「プリンスカード」会員と「菊華会」会員に利用を限っていた宿泊予約受付フリーダイヤル番号を、一般の個人客はもちろん、旅行代理店や航空会社などの法人客にも開放した。過去 1 年半の実績を踏まえ、主力商品の販売を促進するのが狙いだった。
 フリーダイヤル番号の告知は、新聞・雑誌への広告掲載と各ホテルのパンフレットを活用して行った。また、予約センターの一般加入回線の番号に電話をくださったお客様に「次回のご予約からはフリーダイヤル番号をご利用ください」というアナウンスを行い、フリーダイヤル番号の PR に努めた。

季節性の強い企画商品を新聞広告で告知。フリーダイヤルで集中的にレスポンスを受け付ける
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季節性の強い企画商品を新聞広告で告知。フリーダイヤルで集中的にレスポンスを受け付ける

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ホテルごとのパンフレットの裏表紙には、ホテルの大代表番号と併せてフリーダイヤル番号を記載

予約センターの受付体制

 全国のプリンスホテルへの送客は、先に挙げた 13 カ所の予約センターで行っている。フリーダイヤルの回線数は 13 カ所の合計で 21 回線を数える。これらの予約センターでは、オペレーターによるライブ・オペレーションを行っているが、このほか全国 29 カ所に無人の予約センターが点在しており、これらを含めてリザベーション・ネットワークが構築されている。無人予約センターは、遠隔地からの電話を最寄りの有人予約センターへ転送するための中継ポイント。有人予約センターと無人予約センターは専用線でつながれており、たとえば、青森県内から発信された電話は、まず県下の無人予約センターにつながり、そこから専用線で秋田の有人予約センターへ転送される仕組み。遠隔地のお客様と 13 カ所の予約センターの間に中継ポイントを設け、予約センターと中継ポイントを専用線で結ぶことにより、同社が負担する通話料負担の軽減を図っているわけだ。
 ちなみに予約センターでは、宿泊予約受付のほかに予約状況の問い合わせや予約変更、現地の天候やホテルまでのアクセス方法などのインフォメーション・サービスも行っている。
 受付時間は、東京予約センターのみ年中無休・午前 9 時 30 分から午後 6 時まで。地方の予約センターは、平日の 9 時 30 分から午後 6 時までと、土曜日の午前 9 時30 分から午後 2 時まで。日曜・祭日は休みとなっている。土曜日の受付終了後と日曜・祭日は、フリーダイヤルの受付先変更サービスを利用して東京予約センターが受付時間内で応対している。応対に当たるのは、細分化された価格設定を掌握し、豊富な商品知識を備えた同社の社員。繁忙期には、フリーダイヤル番号下 4 ケタの「8686(ハローハロー)」にちなんで「ハローレディ」と名付けられた臨時、または、契約社員のオペレーターを動員し、受付体制の強化を図っている。
 全予約センターにおける年間のコール数は、インバウンドとアウトバウンドを合わせて約 55 万件。もちろん、そのほとんどがインバウンドで、約 40%が予約申込、約 30%が予約状況の問い合わせや変更、同じく約 30%が現地の気候やホテルまでのアクセス方法などについての問い合わせである。また、東京予約センターの 1 日のインバウンドとアウトバウンドを合わせた総コール数は、フリーダイヤルと一般加入回線を合わせて、多い時で 1,200 〜 1,300 件。夏型、冬型、通年(ビジネス)型と、ホテルの立地により繁忙期が異なるので、これらを合計するとコール数は年間を通じてほぼ一定になる。これが、フリーダイヤルの全国共通番号サービスで番号を統一し、ネットワークをつなぐひとつの大きな意味となっているのだ。
 「お客様からの電話を受けるに当たっては、2 つのことを重視しています。ひとつは 1 件でも多くの予約を受けること。そしてもうひとつは、お客様のニーズを収集することです。そこで私どもでは、自然な会話の中からニーズが読みとれるようなマニュアルを作っています」とは、東京予約センター所長 須摩二郎氏の弁。お客様のニーズを汲んで、よりきめ細やかな商品を開発しようというのがその心だ。
 フリーダイヤルを一般に開放して以来、予約センターでの受け付けコール数は総体的に増えているが、その多くはフリーダイヤルによるもの。ちなみに今年 6 月のフリーダイヤルによる受け付け数は前月比 35%アップの約 3,300 件を記録した。同社ではこれを、マス媒体を活用した告知などにより、フリーダイヤル番号の認知が進んでいるためと見ている。コール数を上げるには、フリーダイヤルと広告の連動が大切だが、そのためには、シーズンごとのきめ細かい宣伝計画に基づいたフリーダイヤル番号の告知が重要なファクターとなっているのだ。


自社サーバーで ホームページを一新

 また同社では今回、フリーダイヤルの一般開放と併せてインターネットによる予約受付の強化を図った。同社では 1995 年 11 月、(株)野村総合研究所のサーバーにホームページを開設していたが、この 4 月 1 日からは新たに自社サーバーを設け、国内 64 カ所、海外 9 カ所のホテル・旅館の各種情報を満載したホームページを開設したのだ。
 ここで提供している情報は、ゴルフやテニスなどのレジャー情報から、ホテルで開催されるイベント情報までさまざま。同時に、婚礼に関する資料請求や、宿泊予約の受け付けも行っている。宿泊の予約方法はいたって簡単。同社のホームページにアクセスして予約画面を呼び出し、宿泊日や出発日、シングルなのかツインなのかを入力するだけ。ホームページによる宿泊予約は夜間にも多いが、夜のうちに蓄積された予約は、翌朝、東京予約センターのオペレーターがチェック。お客様が宿泊を希望しているホテルの空室状況を確認した上で、結果をお客様へ連絡するという方法で対応している。このようにインターネットによる予約受付は、一度に集中して処理ができるため、非常に効率が良いという。
 インターネットでの宿泊予約受付数は、1 カ月約 1,000 ルームにも上る。現在でもその数は右肩上がりにあることから、今後はさらにインターネットでの宿泊予約が増えていくものと予測している。

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4 月に開設した同社のホームページ

今後の展開

 お客様は客室を予約する際、宿泊したいホテルに直接電話をかける「各ホテルの大代表での直接予約」、フリーダイヤルで全国の空室状況を確認して即時予約できる「予約センターでの予約」、宿泊日、宿泊希望ホテルなど必要な情報を入力し、返事を待つ「インターネットでの予約」の 3 つの方法から、自分に合った予約方法を選択することができる。その中で最も多いのが、やはり誰もが一度は経験したことがある、「各ホテルの大代表での直接予約」で、以下、「予約センターでの予約」、「インターネットでの予約」の順。
 今後は、予約センターでのフリーダイヤルによる予約受付を伸ばし、将来的には、現在 13 カ所の予約センターで行われている予約受付を、東京と大阪の 2 カ所に集約する意向。これにともない現在予約センターに配属されているセールススタッフを各地域における商品企画・立案、地元に密着した対面での営業活動に専念させることで役割分担を明確にし、業務の効率化を図りたいとしている。そのためには、まだ告知が十分でない地方にフリーダイヤル番号を浸透させることが先決。全国に隈なく同社のフリーダイヤル番号が浸透したところで、窓口をフリーダイヤルに一本化。電話予約業務に関しては地域に関わりなく、フリーダイヤルの付加サービスなどを十分に活用してダイナミックに統合を図れるようになる。これによってはじめて、前述の「東京と大阪に予約センターを集約」するというビジョンが実現するのだ。
 同社ではフリーダイヤル番号告知手段のひとつとして、フリーダイヤル、および各ホテルの予約大代表の下 4 ケタ 8686(ハローハロー)にちなんだ、「ハローキャンペーン」を全国で展開している。今年はこれまでよりやや販促色を強め、顕在顧客(プリンスカード会員および利用実績のある顧客)と潜在顧客(地元のオピニオン・リーダーおよび見込客)を招待し、全国のプリンスホテルの企画商品を紹介するイベントを企画した。併せて旅行代理店や航空会社などの法人との商談も行われる。スタイルに若干の違いは見られるが、この「ハローキャンペーン」は毎年平均約 25 回開催されており、今年度も 11 月 21 日から大阪で開催される「ハローキャンペーン イン 大阪」をはじめ、来春までに計25回を行う予定。同社では、これを起爆剤にお客様のニーズを収集するためのコミュニケーション力の強化と、送客依頼、地方へのフリーダイヤル番号の浸透を狙う。
 今回行われたフリーダイヤルの一般開放により、ダイレクトマーケティングの確立と、予約業務の効率化に向かって、同社は大きな前進を遂げたのだ。


月刊『アイ・エム・プレス』1997年9月号の記事