この7月、「パソコン インフォメーションセンター」 にフリーダイヤル200回線を導入。カスタマーサポートの充実で他社との差別化を図る日本電気(株) にお話をうかがった。
パーソナル・ユースへの対応
PC98 シリーズで、日本のパソコン市場を切り拓いてきた日本電気(株)。同社がパソコン・ユーザー、および見込客からの、パソコン、パソコン周辺機器、ソフトウェアに関する問い合わせに対応する電話窓口、「パソコン インフォメーションセンター」を開設したのは、15 年前のことであった。
製品パンフレットや広告などに、東京、東北、名古屋、大阪、九州の全国 5 カ所の一般加入回線の電話番号を記載、利用者が最寄りの地域の電話番号をダイヤルすると、地域によってはさらに専用回線で複数のセンターに振り分けられ、実際には全国 13 カ所のセンターで対応するという仕組み。合計 300 人の技術スタッフが、150 回線を使い、平日の午前 9 時から午後 5 時まで対応に当たっていた。
数年前まで、パソコン・ユーザーの大半は企業であった。そのため、カスタマーサポートも、企業の通常の営業時間帯をカバーしていればほとんど問題がなかった。ところが 1995 年 11 月に「Windows95」が発売された頃から、インターネット・ブームとも相まって、パソコン・ユーザー層は急速に拡大した。特にパーソナル・ユースの需要が増え、「帰宅後に問い合わせをしたい」「土・日曜日も対応してほしい」といった声が、同社に数多く寄せられるようになった。
かつて、これほど多くの機種が市場に出回っていなかった時代には、製品の機能そのもので市場の優位性を保つことが充分に可能であった。しかし競争が激化している現在のパソコン市場において優位性を維持していくためには、ユーザー・サポートをはじめとするサービス面の充実が欠かせない。
そこで同社では「パソコン インフォメーションセンター」の受付時間帯を土・日曜日に拡大することを決めた。これと同時に受付窓口をフリーダイヤルに変更。さらに回線数を200回線に、スタッフ数を 400 人にそれぞれ増強した新体制を、7 月 1 日からスタートさせている。
地道な告知活動を展開
フリーダイヤルの導入について、同社ではまず 6 月 16 日に、新聞各紙への記者発表を行った。翌 6 月 17 日、7 紙にこれに関するパブリシティが掲載され、記事中にフリーダイヤル番号が掲載された。また、同じく 6 月 16 日から、「パソコン インフォメーションセンター」の営業時間外に流すメッセージに電話番号が変わる旨の予告を入れた。
初日の 7 月 1 日には、読売と日経に全面広告を出稿。インターネットのホームページと、同社が運営するパソコン通信「BIGLOBE」それぞれのトップページでの告知も開始した。ほかに製品に同梱しているアフターケアに関するパンフレット『98 あんしんサポートガイド』と、製品パンフレットにも電話番号を記載している。
また 6 月末まで、センターに寄せられた相談の最後に必ず、「次回からはフリーダイヤルにおかけください」と番号を案内した。
同社がこれまで出荷したパソコンは累計で 1,000 万台を超えており、現在、少なくとも数百万台が稼働していることから、「告知活動は今後数年間は継続していかなければならない」(パーソナルC&Cカスタマーコミュニケーション本部 第二カスタマーサポート部 カスタマーサポート専任部長 木下茂春氏)と同社では考えている。
パソコン関連の雑誌に掲載する商品広告の中にも、「パソコン インフォメーションセンター」のフリーダイヤル番号を記載している
利用状況に応じて受付体制を変更
フリーダイヤルの代表番号、 0120-60-9821 に寄せられた電話は、全国 13 カ所のセンターのうち、発信地域に最も近いところに振り分けられる。さらに最寄りのセンターの空きがない場合には、フリーダイヤルの「広域代表サービス」によって、自動的にほかのセンターに転送される。またセンターによっては土・日曜日は営業していないところもあるため、「受付先変更サービス」を利用して、平日と土・日曜日で受付体制を変えている。
これらフリーダイヤルの付加サービスを利用することによって、コールを 5 つの代表番号からさらに複数のセンターに転送していた従来の方法よりも、シンプルで効率的なオペレーション体制を組むことが可能になった。また同社では、今後は、フリーダイヤルの「カスタマーコントロール」サービスを活用し、平日と土・日曜日の 2 パターンだけでなく、その日のセンターの稼働状況に合わせてフレキシブルに受付体制を変更していくことも検討している。
ここで受け付けられる相談は、平均して 1 日に約 3,500 件。その内容は、機能などを確認する購入前相談、ソフトウェアのインストール方法など設定に関するもの、操作方法についてがそれぞれ約 1/3 ずつ。平均通話時間は平日で 8 ~ 9 分、土・日曜日では 10 分を超えるという。
「パソコン インフォメーションセンター」の電話応対風景
ピークタイムは午後 4 時から 5 時の間。比較的、電話が少ないのは正午から午後 1 時まで。以前は月曜日にコールが集中していたが、土・日曜日の対応を開始してからは、月曜日の混雑はかなり緩和している。
「パソコン インフォメーションセンター」はユーザーと見込客の双方に開かれた窓口であることに加え、これまでに同社が扱ってきた約 500 機種、約 2,000 モデルにおよぶ製品すべてに関する問い合わせへの対応を一手に担っていることから、スタッフには相当量の知識と、高度なスキルが求められる。同社ではスタッフの教育・研修に力を入れる一方で、手元のコンピュータ端末から製品に関しての必要な情報を瞬時に検索できるシステムを開発。これによって問い合わせへの即答率は 90%以上をキープしている。
対応スタッフには、利用者の氏名、電話番号などのパーソナル・データをできる限り聞くように指導している。これをデータベース化することによって、次回の問い合わせの際に、過去に交わされた会話の流れにのっとったスムーズな対応が可能になるのだ。顧客満足度が高まり、通話時間を短縮できるというメリットも生まれる。
どのセンターで誰が受けても均質でパーソナルな対応が行えるように、製品情報、利用者データはともにスタッフ全員の間で共有されている。
「パソコン インフォメーションセンター」は、同社にとって、情報受信基地としての意味合いも持っている。問い合わせの内容は、これまで、マニュアルやパンフレットの表現方法の改善などに役立てられてきた。
電話をつながりやすくするために
利用者数が多く、通話時間も長いパソコンのサポート・デスクでは、話中をいかに減らすかが大きな課題。木下氏が「来年 3 月までに、3 回のうち 1 回は必ず電話がつながる体制を整えたい」と語るように、同社にとっても電話の混雑緩和は重要な課題となっている。
「パソコン インフォメーションセンター」ではフリーダイヤル導入に当たって回線数、およびスタッフ数を大幅に拡充したため、多数の利用者から「電話がつながりやすくなった」という声が聞かれている。現在のところ、フリーダイヤルの導入にともなうコール数の顕著な増加は見られないが、今後、フリーダイヤル番号の認知とともにコール数が増えていくことは充分に考えられる。目下のところはスタート間もない新体制の基盤固めが第一義であるが、状況を見ながら、さらなるセンターの拡充も検討していきたいとしている。
また、「フリーダイヤルを利用するメリットのひとつは、発信地域別の正確なデータが得られること」(木下氏)。このデータをもとにフレキシブルに受付体制を変更することによって、少しでも電話がつながりやすい状況を作り出すことが可能になる。
広がる情報提供メディア
4 ~ 5 年前まで、新製品発売などを告知する広告出稿直後には、「パソコン インフォメーションセンター」へのアクセス数は通常の何倍にも跳ね上がっていた。しかしインターネットにホームページを開設し、ここで新製品のスペックなど詳しい情報を提供するようになってからは、広告の出稿によってコール数が激増するという現象はほとんど見られなくなっているという。ホームページでは製品情報のほか、「パソコン インフォメーションセンター」に寄せられる問い合わせ内容をもとに作成した操作方法についての“Q&A”を紹介している。また、これらの情報は、パソコン通信「BIGLOBE」や、FAX 情報 BOXの「パソコン情報FAXサービス」でも提供されている。
“人”が直接対応する必要のない問い合わせ、あるいは、パソコンを使い慣れたユーザーからの問い合わせが電話窓口からホームページに移行しているにもかかわらず、「パソコン インフォメーションセンター」へのアクセス件数が依然増加を続けているのは、パソコン・ユーザーが大変な勢いで増加を続けていることを意味している。
特にビギナーにとっては、知りたいことに肉声で応えてくれる電話窓口は心強い存在。気軽にアクセスできるフリーダイヤルは、購入を検討中の見込客と “パソコン”の間の垣根を低くし、ユーザー層の拡大により一層拍車をかけるに違いない。
ホームページでもフリーダイヤル番号を案内