ダイレクト・セリングのリーディングカンパニー、日本アムウェイ株式会社。そのインバウンド・テレマーケティングの現状と今後の展開について話を聞いた。
時代を先行くリーディングカンパニー
1959年、米国ミシガン州エイダに設立されたアムウェイ・コーポレーションは、37年の歴史を持つダイレクト・セリング・カンパニー。現在では、世界42カ国で事業を展開している。
アムウェイ・ビジネスが日本に上陸し、日本アムウェイ株式会社が設立されたのは 1977 年 6 月。その 2 年後に営業を開始して以来、着々と業績を伸ばし、日本におけるダイレクト・セリングのリーディング・カンパニーに成長した。日本に進出して19年目に当たる1996年8月期の売上高は2,122億円に達している。
同社では、洗剤、調理用器具、栄養補給食品、化粧品、ファッション、ジュエリーといった生活に欠かせない品々を、約 140 アイテム取り扱っている。これらの製品はほとんどが自社で開発、製造され、店舗を介さず、同社からディストリビューター(販売員)を経由して、直接エンドユーザーに販売される。ディストリビューターは同社と契約した個人事業主で、自らが気に入った製品を、適切なアドバイスとともに友人や知人に紹介して愛用者を増やし、販売実績に応じて収入を得ることができる。
1996 年 8 月期の更新ディストリビューター数は109万組に達した。
内容に窓口を分割 24時間ビジネスをサポート
同社とディストリビューターのテレコムメディアによる窓口は、大きく分けて「AMWAY HOTLINE」と「AMWAY DIAL」の2つ。
「AMWAY HOTLINE」は、ディストリビューターから頻繁にある問い合わせをあらかじめ録音し、提供するもの。全国共通のフリーダイヤル番号により、年中無休・24時間体制で運営している。提供情報の内容は、会社概要、ディストリビューター登録の流れといったビジネスに関する基本的なことから、日々のディストリビューターの活動に役立つ製品の上手な使い方に至るまで多岐にわたる。また、ここで聞くことのできる情報は、FAXで取り出すことも可能だ。
一方「AMWAY DIAL」は、問い合わせ 5 項目、受注 5 項目、その他 4 項目、計14項目38番号あり、それぞれの内容に応じてオペレーターが応対するものと音声応答装置によるものに分けられている。
問い合わせは、更新、発注、解約など、アムウェイ・ビジネス全般に関するもの、および、取扱製品全般に関するものを「お客様サービス」で受け付ける。また、浄水器に関する「テクニカル・ホットライン」、アムウェイクレジットに関する「クレジット課」、さまざまなアムウェイ・ビジネス上の相談などに対応する「ビジネスルール・フリーダイヤル」と内容ごとに分かれており、各々、ビジネスや製品に精通したコンサルタントが応対する。
受注窓口は、郵便発注のほか、オペレーターが応対する「オペレーター受け電話発注」、日本語と英語で応対する「自動オーダー・エントリー・システム」、アムウェイ独自の端末を使って発注する「ハンディターミナル」と 1995 年 4 月から新たに導入された「ニュー・ハンディターミナル」、FAX で受注する「ファックス発注」がある。それに付随して、「ニュー・ハンディターミナル」には発注の照会サービスが、「ファックス発注」には FAX の送信を確認できるサービスがある。
このほか、配送に関する問い合わせは、全国4カ所にある流通センターで受け付けている。また「音声応答サービス」では、受注確認、在庫確認、無料帳票送付、再発行依頼、解約書送付、アムウェイ・クレジットの申込状況の確認ができる。「ポイント照会サービス」では自分のポイント(すべての製品にそれぞれ決まったポイントがあり、購入するごとにそのポイントが加算され、1カ月のボーナスなどが決定する)を瞬時に知ることができる。このようなサービスを提供することによって、ディストリビューターの活動を24時間サポートしているのである。
これらの電話、およびFAX番号の告知は、ディストリビューター全員に毎月送られる情報誌「AMAGRAM」、および、ある一定の販売実績を一定期間達成したディストリビューターに配布される隔週発行の情報「NEWSGRAM」と、発注製品に同梱される月刊情報誌「NEWSLINE」で行っている。
受付体制について
次にテレコムメディアによるこれらの窓口の受付体制について説明しよう。
まず、製品などに関する問い合わせは、全国8カ所(北海道、東北、東京、東海、北陸、近畿、中国、九州)にある「お客様サービス」で対応している。問い合わせは全国共通のフリーダイヤル番号で受け付けており、ディストリビューターがこの番号にアクセスすると、発信地域から最も近い「お客様サービス」に電話がつながる仕組みになっている。また、「テクニカル・ホットライン」「クレジット課」「ビジネスルール・フリーダイヤル」への問い合わせにも内容別にフリーダイヤル番号が設けられており、全国からの問い合わせに東京で一括して対応している。
受付時間帯は、「お客様サービス」「ビジネスルール・フリーダイヤル」が、土・日・祝祭日を除く午前9時から午後 5 時まで。「テクニカル・ホットライン」「クレジット課」が、同じく土・日・祝祭日を除く午前9時から正午までと、午後1時から5時までとなっている。これらの問い合わせには、豊富な経験と知識を持った内容ごとに専任のコンサルタントが、データベースを駆使して必要な情報をオンラインで照会しながら対応しているため、ディストリビューターからの問い合わせにその場で的確なアドバイスをすることが可能だ。
次に受注窓口をみてみよう。オペレーターが受注する「オペレーター受け電話発注」は、東京にあるテレフォンセンターで午前9時から午後8時まで受け付けている。告知には東京と神戸2カ所の電話番号が明記されているが、これは一般加入回線を使用しているため、東京より遠方のディストリビューターが負担する通話料を、少しでも軽減するためにとられた施策である。
「自動オーダーエントリーシステム」は、6カ所(札幌、東京、名古屋、神戸、広島、福岡)に音声応答装置を設置。日本在住の外国人の言葉の問題を考慮して、日本語と英語でアナウンスしている。アナウンスにしたがって製品番号や数量を入力すると、オーダーが完了する。慣れてくるとこの方法が最も速いので利用者数が最も多く、「オペレーター受け電話発注」が終了した午後8時以降は同システムによる受け付けがピークに達するという。
「ハンディターミナル」および「ニュー・ハンディターミナル」は東京・神戸の一般加入回線番号で、「ファックス発注」は東京の一般加入回線番号で受け付けられている。ただし、FAX で発注した場合に注文が受け付けられたかを確認できる「ファックス確認」は、やはりディストリビューターの負担が少しでも軽くなるように、東京と神戸に電話番号が設けられている。もうひとつ、受注業務に付随するサービスに「ポイント照会サービス」がある。これも先と同じ理由から東京と神戸の電話番号が設けられている。以上、人が対応しない窓口は、原則として年中無休で 24 時間受付体制を整えている。
ディストリビューターを 24 時間、サポートする電話、および FAX の番号は、月刊の情報誌「AMAGRAM」で告知される
データベースの構築と活用方法
これらの窓口に寄せられた問い合わせ内容や受注データは、構造化され、目的別に細分化されたデータベースに自動的に蓄積されていく。ディストリビューター情報(住所・氏名・電話番号などの基本情報、ピンレベルなどの資格情報、グループリーダーなどの系列がわかるリレーション情報、1カ月の達成ポイント数によって決まるボーナス支払額などのボーナス情報、問い合わせ履歴を蓄積する問い合わせ情報、受注履歴を蓄積する受注情報)がある。
コンサルタントが受けた問い合わせは、いつ、誰が、どのような問い合わせをしたかという問い合わせ情報として蓄積され、マーケティングや営業部門などに定期的にレポートされる。音声応答装置で受けた内容のうち、処理の必要なものは、コンサルタントが受けた問い合わせと同じように、情報としてデータベースに蓄積される仕組みとなっている。
ディストリビューターとの接点の見直し
現在同社では、「ディストリビューター・インターフェース・リエンジニアリング・プロジェクト」の名のもとに、ディストリビューターとの接点、およびそれに関わる組織の、ディストリビューターの視点からの見直しに取り組んでいる。どの接点にどのメディアを利用するか、あるいは電話ひとつをとっても、フリーダイヤル、一般加入回線をどう使い分けるか、ライブオペレーションと音声応答装置をどう使い分けるかなどをもう一度見直し、ディストリビューターと同社の双方で発生するトータルなコストを削減しながら、最大限の価値をディストリビューターに提供する方法を模索していくというのがその考えだ。
そもそも同社がフリーダイヤルを導入したのは、ディストリビューターに通話料金の負担をかけずに、製品やビジネスルールに関する問い合わせなどに適切な対応をするためだった。しかし、この適用範囲を広げることにより、同社とディストリビューターの双方で発生するコストの総和が生み出すスケールメリットによるトータルなコスト・ダウンを実現することもできるだろう。電話の受付体制も然りだ。これまではディストリビューターの近くにセンターを設置するのが経済的との判断から、全国8カ所に電話に対応するスタッフを設置していたが、情報テクノロジーが発達した今日では、必ずしもそれが経済的とは言い切れないであろう。このように、これまで急成長をとげてきただけに複雑になっていたディストリビューターとの接点を、これを機に見直そうというのが、このプロジェクトの狙いなのだ。
現在、全国8カ所にあるお客様サービスでは、①ディストリビューター活動を支援する人的サービス、②製品のショールーム、③電話による各種問い合わせなどの対応業務を行っているが、今後は人的サービスの部分に重点を強化する意向。
インターネットの導入
同社では、1996 年 9 月にインターネットにホームページを開設し、同社のディストリビューターに限らず一般生活者に向けての PR の一環として、会社概要、企業理念、製品などの情報を提供しているが、今後はインターネットの持つ双方向性を活用して、エレクトロニック・コマースや、ディストリビューターに向けたビジネス・サポートを強化していく方針。具体的には、1997年第一四半期から、インターネットによるエレクトロニック・コマース(受発注業務)をスタートするのに加え、逐次ボーナス計算書や、自分の系列のディストリビューターのリストをダウンロードできるなどのビジネスサポート業務を追加する。さらに、同年第三四半期からはインターネットによる決済を模索する。さらに、ビジネスサポートの側面においても、ディストリビューターによるオリジナルのホームページ構築の支援など、ディストリビューター間のコミュニケーションをサポートする、バーチャルな空間の提供を目指す。
これまで社内で活用していた製品やディストリビューターに関する情報は、そもそもディストリビューターが活動することで生まれたもの。そこで、本来の情報の持ち主とこれを共有しようというのがその主旨である。たとえば、各系列のリーダー的存在のディストリビューターは、自分の系列のディストリビューターの氏名、住所、電話番号などをパソコンやワープロに入力している。これは、系列内で開催するイベントやデモンストレーションのインフォメーションを送る際に活用されるわけだが、複数の系列を持つディストリビューターとなると、そのリスト数は何百人にも上る。当然、この情報は社内のコンピューターにも入力されているのだから、ディストリビューターがこれをダウンロードできるようにすれば、何も同社とディストリビューターが、別個に同じ作業をすることはないはずだ。このように同社では、ディストリビューターがこれまで雑務に費やしてきた時間を減らし、本来の活動であるビジネスを熱く語り、伝える時間を少しでも多く持ってもらうために、インターネットを効果的に活用していく意向。
また同社では、1987 年より、すべてのディストリビューターからのダイレクト・オーダーを受け付ける体制を整えたが、発注金額が一定額に満たないと送料を負担しなければならない仕組みのため、グループでのまとめ買いが多いのが現状。しかし、これでは個々のディストリビューター情報の収集にも限りがある。そこで今後は、これまでのアムウェイ・ビジネスを支えてきた人と人によるヒューマン・ネットワークの長所を活かしながらも、インターネットを活用することで、ディストリビューターからのダイレクト・オーダーを促進、個々のディストリビューターの顔が見えるワン・トゥ・ワン・マーケティングを推進していく。「お金(商売)」の流れと、「情報」の流れと、「物」の流れは必ずしも同じである必要はないというわけだ。
同社では、インターネットをディストリビューターと同社を結び付ける大切なキーと 置付け、今後さまざまな機能をこれに付加していくという。これからの日本アムウェイは、ますます目が離せなくなりそうだ。