種苗の通信販売

2006年6月6日

昨日、弊社オフィス1Fのエレベーターホールに
アマリリスの鉢植えが飾ってあるのが目に留まった。
弊社が入っている聖台ビルには、今でも管理人の老夫婦がおり、
奥さんが毎日、四季折々のさまざまな植物を
エレベーターホールに飾ってくれているのだ。

出勤時にエレベーターホールでたまたま彼女とすれ違ったので、
満開のアマリリスを指して「すごいですね!」と声を掛けると、
彼女は嬉しそうに、3年前に通信販売で球根を買って、
丹精込めて育ててきたのに、当初2年間はまったく花を付けず、
今年になってようやく花が開いたのだと、
これまでの苦労をちょっぴり自慢を交えて語ってくれた。
彼女はこの通信販売会社の社名は覚えていないようだったが、
考えても見れば、彼女はこの会社からアマリリスの球根を購入後、
3年を経てようやくこの商品に満足感を覚えたことになる。
そしてこの会社は、3年の歳月を費やすことなしには、
顧客満足度調査をしようがサンキューコールをかけようが、
自ら販売した商品にお客様が満足しているかどうかを
伺い知ることができなかったわけだ。
この慌しい時代に3年をかけてお客様の満足を獲得し、
さながら種苗を育てるかのようにお客様との関係を築いていく現実に、
私は眩暈を覚えると同時に、ノスタルジーを感じた。
ちなみに、私が前職の調査会社に勤務していた当時の上司である
故・大友聰氏によると、日本の通信販売のルーツは、
飛脚制度の発足当時までさかのぼるが、
近代に入ってこれを手広く始めたのは種苗会社であり、
1880年頃から農業雑誌を媒体として、
農家に改良品種の通信販売を行ってきたのだという。
そして、こうした種苗会社の多くは、
今では一般生活者向けの通信販売も手がけている。