2018年3月6日
2月も残りわずかとなったある日の夕方、友人の職場が六本木1丁目のアークヒルズサウス内にオープンして間もないシェアオフィス「wework」に移転したというので、情報交換方々、見学に行ってきました。「wework」は、「ただ生きるためではなく、『人生』を満たすために働ける世界を創造する」をミッションとする企業。世界21カ国、62都市でロケーションを提供しており、利用企業数は2万5,000社以上、メンバー数は17万5,000人以上に達しているそうです。弊社もシェアオフィスを利用していますが、日本ローカルのシェアオフィスと世界のワークスペース業界のリーダーを標榜する「wework」ではどこが異なるのか、この目で確かめてみようと思ったのです。
まずエントランスを入ると、フローリングの床にさまざまなカラー、スタイルの家具がいわば無造作に置かれたお洒落なスペースが広がっており、入り口正面の受付では、2名の女性が次々と訪れる来客にテキパキと対応していました。友人の話によると、彼女らは単なる受付嬢ではなく、「コミュニティチーム」と呼ばれるスタッフなのだとか。というのも、来客対応のみならず、キッチン回りで毎日のように開催されるイベントの運営等を通してメンバー間のコミュニケーションを促進したり、コーディネイトを行ったりするのが彼女たちの役割だからです。
このスペースは、エントランス・ロビーやコミュニティ・スペースとしての機能に加えて、メンバーのワークスペースとしての機能も兼ねており、私が訪れた時にも、多くのメンバーが椅子に腰掛けて机上のPCに向かったり、立ったままで打ち合わせをしたり、ソファーに正座して膝の上のタブレットをのぞき込んだり、それぞれのスタイルで仕事をしていました。弊社が利用しているシェアオフィスにも類似のスペースがあるのですが、そこでは私語は禁止されており、イベント開催時以外はさながら図書館にでもいるかのように黙々と仕事をしているのが大きな違いです。
またこのスペースのもうひとつの特徴は、中央が吹き抜けになっていて、上の階に上る階段が設けられていること。「wework」の世界各国での運営経験から、ワークスペース内に階段を設けてフロア間を気軽に移動できるようにすることが、メンバー間のコミュニケーションの活性化に一役買うことがわかっているそうです。このほかBGMには、仕事の生産性を上げることが検証済みだという環境音楽が用いられていました。
メンバーの専用ブースやミーティング用スペースが立ち並ぶエリアに入ると、今度はブースの壁面が透明なガラス製で、周囲から働く様子が丸見えであることに驚かされます。これも弊社が利用しているシェアオフィスには見られないことですが、「wework」で働いて2日目の友人によると、「最初はどうなるかと思ったけど、慣れれば気にならない」とのこと。透明のブースには、メンバー間のコミュニケーションの促進効果が期待されているのかもしれませんが、うっかりしていると他社のメンバーや来客にまで「〇〇社は机上が汚い」などと言われかねないと思ってしまうのは、いかにも日本人的な発想でしょうか。
ミーティング用スペースとしては、会議用テーブル&チェアが置かれた会議室とソファー&センターテーブルが置かれた応接スペースが随所に点在している格好。照明器具や家具の一部は部屋ごとにさまざまで、とかく統一性を重視しがちな日本のオフィスとはコンセプトが大きく異なっていることがうかがえます。また、会議室壁面にはディスプレイが設置されており、プロジェクターを使うことなくPC上のデータを投影可能。これらミーティング用スペースは、メンバー専用のアプリを使って予約、あらかじめ購入したクーポンにより利用料を支払う仕組みになっています。
冒頭でも述べた通り、「wework」は、「ただ生きるためではなく、『人生』を満たすために働ける世界を創造する」をミッションとする企業。換言すれば、単にワークスペースをシェアするだけではなく、メンバーのコミュニティの活性化をサポートすることを通じて、メンバーのビジネスを活性化すると同時に、働く意義を提供することを目指していると言えそうです。そしてこのコミュニティの活性化をサポートしているのが、ワークスペース全体の設計であり、コミュニティチームの存在。さらには世界各国のメンバーを対象としたソーシャル・ネットワークやアワードも用意されているそうです。
今回、私が訪れたアークヒルズサウス内の「wework」は、スタートアップ企業の本社、地方に本社を置く企業の東京営業所など一般的なシェアオフィスのユーザーのほか、大手企業におけるデジタル・トランスフォーメーションにかかわるプロジェクトでの利用も目立つとか。ワークスペースを起点に、世界21カ国の17万5,000人以上のメンバーと繋がるコミュニティをサポートする「wework」が、日本人の働き方改革やガラパゴスとも言われる日本のビジネスのありように一石を投じることになるのか、今後も継続的にウォッチしていきたいと思います。