イマジネーションの重要性

2006年7月23日

先日、たった1日着ただけの買ったばかりのスーツの襟に、
オレンジ色のヘアマニキュアがべたっと付着してしまった。
クリーニングに出してもかなり色が残っているし、
それではとクリーニング店に染み抜きに出してもらっても、
「完全には落ちないのでお代は要りません」という始末。
ヘアマニキュアはヘアダイと違って落ちやすいので、
よくあることと言えばそうなのだが、かつてないほど色落ちが激しく、
かつ、新調したてのスーツであったことから、
ヘアマニキュアをした美容院にクレームを申し出ることにした。
しかし、美容院では夏場は汗をかくのでやむを得ないとつれない返事。
そこで直接、メーカーに問い合わせることにした。
メーカーの担当者との数回のやりとりを経て、
ひとまずメーカーが美容室から同じロットの商品を回収し、
ロットの異なる商品と比較することで商品不良の有無を確認する傍ら、
襟がオレンジ色になったスーツをメーカーに送付し、
当該メーカー御用達の染み抜き専門店に出してもらうことに。
そして昨日、メーカーの担当者が染み抜きを済ませたスーツと
菓子折りを持って我が家にやってきた。
検査結果は、私が使用した商品は特に不良品というわけではなく、
要は「ヘアマニキュアは時には激しく色落ちするもの」という結論。
また、メーカー御用達の染み抜き専門店は、
私の行きつけのクリーニング店御用達のそれよりも、
高度な染み抜きスキルを持っていることが判明。
完全に色が落ちたわけではないが、ほぼ気にならないぐらいにはなった。
とは言うものの、スーツを着るたびに染み抜きに出していたのでは、
(今回はメーカー負担だが)お金がいくらあっても足りないし、
シーズン中の着られる日数が限られてしまうし、
だいいち、生地に負担がかかるのでスーツがすぐに痛んでしまう。
ま、私はこれを期に、ヘアマニキュアは使わないことにしたが・・・。
メーカーの担当者2名を前に、私はヘアマニキュアの
商品としての完成度の低さ(色落ちする)を指摘すると同時に、
色落ちに関するエンドユーザーへの情報伝達を美容院だけに頼らず、
メーカーとして自ら責任を持って行うべきであると指摘した。
最初に電話で指摘した時にはいかにも不満げな対応をされたが、
さすがに対面の上で、世の中には顧客視点で見ると完成度が低い商品が
たくさんあると事例を挙げつつ懇々と話したところ、
こちらの意図するところをわかってくれたようだ。
先日、湯沸器メーカーの顧客対応の話を書いたが、
理美容院ルートの化粧品・トイレタリーメーカーも、
これと似たようなところがあるのではないか。
いずれもエンドユーザーとの直接の接点が限られており、
前者はガス工事を担う企業、後者は理美容院を通してしか、
基本的にエンドユーザーとコミュニケーションをとっていないのだ。
私はもうかれこれ5年以上ヘアマニキュアを愛用していたので、
その色落ちがその間にちっとも改善されていないこと、
白とかアイボリーとか色の薄い服の場合はリスクが高いこと、
季節ごとでは夏場が特に色落ちが激しいことなどを体験上、知っている。
しかし、ウールの白いスーツを見せつつ季節変化、
および素材による色落ちの違いの話をすると、
担当者曰く「服の素材までは考えたことが無かった」とのこと。
この発言に私は正直、あっけにとられた。
しかし、これは決して他人事なんかではない。
弊社にしても、そしてこれをお読みくださっている貴方の会社にしても、
気がつかないところで同じような誤謬にはまっていないと、
誰が胸を張って断言できるだろうか。
私たちは日常業務の中に埋もれることなく、
常にお客様の、あるいは相手の立場に立って、
イマジネーションを働かすことを忘れてはならない。