配達員やDMの活用と新サービスの導入で継続的な購入を促す

パルシステム生活協同組合連合会

パルシステム生活協同組合連合会は、関東1都9県の食生活を支えている生協である。近年、安全・安心な食へのニーズが高まっていることに加えて、ライフステージに合わせたカタログ、鮮度の高い青果の提供、取扱商品の拡充などにより組合員のニーズに応えることで組合員は年々増加している。しかし、一方では休眠組合員も多く、これらを活性化させるともに、休眠させないことが課題となっている。

休眠組合員の復活と、休眠させない取り組みが課題

 1990年に首都圏コープ生産者・消費者協議会として設立されたパルシステム生活協同組合連合会(以下、パルシステム)。日本には約600の「生協」や「コープ」があり、各組合がそれぞれの理念に基づき活動しているが、パルシステムは「食・環境・たすけあい・商品・サービスにおいて事業・運動を展開し、全国の生協グループとしての役割を果たすことで、日本の生協運動を発展させる」ことを目指している。活動エリアは、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、茨城県、栃木県、山梨県、群馬県、福島県、静岡県の1都9県。パルシステムを構成する組合員から出資を受け、子会社とともに無店舗個配事業を中心に、共済事業なども展開している。
 近年、安全・安心な食へのニーズはますます高まっている。また、同生協では2010年より、商品の物流を「ドライ」「冷凍」「冷蔵」の3温度帯から、「青果に最適な温度」を加えた4温帯物流に変更して取扱商品数を増やすとともに、収穫から配送までのリードタイムを1日短縮することで青果の鮮度を高めた。同生協では専任職員による訪問営業や折り込みチラシ、インターネットを活用した販促に加えて、テレビCM、ポスティング、雑誌広告、組合員からの紹介により新規組合員を獲得しているが、上記のような背景が功を奏し組合員登録人数は順調に増加。2007年の98万7,000人から3年後の2010年には約115万人にまで拡大している。
 同生協では毎週、決まった曜日に商品を届け、その際に商品カタログとOCR注文用紙を配付し、OCR注文用紙、インターネット、および電話で翌週の注文を受け付けている。カタログの種類は3つ。乳幼児がいる家庭向けの「yumyum」、育ち盛りのお子さんがいる家庭向けの「my kitchin」、少人数の家庭向けの「Kinari」というように、ライフステージに合わせて配布媒体を変えている。組合員の年齢層は幅広いが、中心は30~40代で、3カタログのうち「my kitchin」を利用している組合員が65%と最も多い。
 115万人の登録組合員のうち、毎週、注文書を配付しているアクティブ組合員は約65%に当たる約75万人。注文があるのは毎週約62万人で、注文書配布数における利用率は約82%となっている。休眠組合員50万人の内訳は、①8週間注文がなかったためOCR注文用紙の配付が自動的に停止した組合員、②意思表示をした上で休眠している組合員、③共済のみ加入している組合員で、最も高い割合を占めているのが①である。パルシステムでは①と②の復活を課題としており、休眠組合員の復活に向けた活動を推進。その一方、組合員を眠らせない取り組みも重要であると認識し、具体的な取り組みを展開している。

注文がない時点で配達員が即座にアプローチ

 同生協の休眠防止策は、3ステップで行われている。
 まず、注文がなかった組合員に対して、その組合員のエリアを担当している配送担当がアウトバウンドコールを実施。OCR注文用紙を出し忘れている場合もあるため、1件1件確認している。
 次に、数回続けて注文がなかった組合員には、配達員が再びアウトバウンドコールを実施するか、訪問することで、様子を伺いつつ注文を促している。
 このように、パルシステムでは配達員という既存のリアルな顧客接点を生かして、無注文の期間を最短にとどめるようアプローチしているわけだが、配送担当が電話をかけても、訪問しても、注文が再開されないケースもある。また、配達時に在宅しているケースは約半数で、面会できない組合員もいる。そこで、3ステップ目ではダイレクトメール(以下、DM)を活用。8週間以上が経過した組合員に対してDMを送付して再開を訴求している。休眠組合員向けDMキャンペーンは、主に9~10月に実施されることが多い。同生協では、毎年春と秋にプロモーションを強化しているが、中でも秋のプロモーションに力を入れている。これはこの時期に利用が再開すれば、最も受注高が多くなる年末の利用につながる可能性が高まるためだ。
 これまでの経験から、無注文の期間が長くなればなるほど復活しづらくなることは明らかで、例えば8週間以上注文がない休眠顧客を対象としたDMの場合、1回の施策で復活するのは3%程度。一般的に、休眠顧客を復活させるコストより、新規顧客を獲得したり、既存客を維持したりするコストのほうが安価であると言われているが、同生協も例外ではない。そうであれば、休眠する前に手を打とうと考えた同生協では、自社のWebサイト上で業務品質アンケートを実施。組合員に困っていることや意見、配送に関する評価などを回答してもらった。その結果、「商品の価格が高い」「配達料をもっと安価にしてほしい」といった声(以下、VOC)のほか、取り扱ってほしい商品を聞くこともできた。今後、このVOCを商品ラインナップやサービスに反映させていきたいとしている。

新サービス「パルくる便」で継続的な購入を推進

 同生協では、2011年7月から新たな利用継続策として「パルくる便」を開始した。これは、たまご、豆腐、ハム、牛乳、食パンなど40品目を数える定番アイテムの中から、あらかじめ組合員が登録した商品を毎週自動的に届けるサービスである。毎週欠かさずに特定の商品を購入している組合員の注文忘れや誤注文を防止するほか、注文の手間を省くことで継続的な受注を獲得するのが狙いだ。さらに「パルくる便」では、購入商品点数に応じて、3~5点で5ポイント、6点以上で10ポイントを付与。通常の注文では付かないポイントを付けることで「パルくる便」のメリットを創出し、登録を促している。定番品を数点購入してもらうだけでは客単価は低くなるが、金額の大小よりもまず注文を継続してもらうことを第一に考えているとのこと。つながっていることが大切なのだ。
 「パルくる便」はスタートしたばかりのため、効果検証にまでは至っていない。同生協ではアクティブ組合員の30%に登録してもらうことを目指しており、お届けカタログにチラシを同梱したほか、登録キャンペーンを行って登録組合員数の拡大を図っている。
 これらの施策の相乗効果により、課題である休眠組合員の復活や既存組合員の継続率が高まることが期待される。

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たまご、牛乳、パン、ハム、豆腐、納豆など、定番40品目の注文を事前登録できる、「パルくる便」の利用を呼び掛けるチラシ


月刊『アイ・エム・プレス』2011年9月号の記事