良質な遊具・玩具を導入したキッズランドで顧客満足度を向上

トヨタカローラ横浜(株)

トヨタカローラ横浜(株)戸塚下倉田店では、(株)ボーネルンド提供による遊具・玩具を導入した広く充実したキッズランドを設置。高い顧客満足度を実現するとともに、子ども連れの来店客が安心して商談できる環境を整備することで、業績の向上にもつなげている。

ショールームや展示会への集客が営業上のテーマに

 トヨタカローラ横浜(株)戸塚下倉田店では、店内に(株)ボーネルンド提供による遊具・玩具を導入した、広く充実したキッズランドを設置し、子どもにも喜んでもらえるショールームを実現している。
 トヨタカローラ横浜は、横浜市東南部や三浦半島など神奈川県東南部をテリトリーに、新車店舗19店、UCar(中古車)店舗2店を展開するトヨタ系列のカーディーラー。同社がテリトリーとするエリアは神奈川県の中でも人口の伸びが停滞しているエリアであり、その中に数多くのカーディーラーがひしめいていることから、自動車販売における激戦区となっている。さらにテリトリーの約半分は同じく神奈川県に本拠を置くトヨタカローラ神奈川(株)との併売地区となっていることから同ブランド内での競合もあり、自動車販売全体が停滞する中で、同社を取り巻く環境は非常に厳しい。
 その中で戸塚下倉田店は、「地域のお客様に気軽にご利用いただける」店舗を目指して、2006年8月、横浜市戸塚下倉田町にオープンした同社の基幹店舗のひとつ。1,600坪を超える敷地の中に地上2階建ての新車店舗、地上1階建てのU-Car店舗、地上4層5階建ての駐車棟を設けており、さらにU-Car部門の戸塚商品化センターも併設している。
 近年、自動車販売においては、営業スタッフによる戸別訪問を中心とするプッシュ型の営業から、ショールームや商業施設内の展示会などへの集客をベースとするプル型の営業への転換が進んでいる。同社でも1980年代前半までは、例えば新人営業スタッフに1日100件の新規飛び込み営業を課すなど、プッシュ型の営業手法を採っていたが、共働き世帯の増加などに伴う昼間在宅率の低下によって効率が悪化したことから、徐々にプル型営業への移行を進め、現在ではいかにショールームやテリトリー内の商業施設などで開催される移動展示会への集客を図るかが、営業上の大きなテーマとなっている。
 その中で同社では、土・日曜日の予約来店客に無料で洗車・ワックスサービスを提供するなどの施策を展開しているが、さらにスペース的に余裕がある戸塚下倉田店のオープンに当たって、セルフ方式のガソリンスタンド併設などとともに実施したのが、広く充実したキッズランドの設置なのである。

快適なショールームの一要素として広く充実したキッズランドを設置

 同社では「来店時にいかに快適に過ごしてもらうか」に注力しており、例えば、自販機のドリンクの無料提供を行ったり、レストルームの設備やアメニティを充実させ、こまめに巡回・清掃を行うことで快適な環境を保ったりするなどの施策を展開している。広く充実したキッズランドの設置はその流れに沿うものであり、さらに、トヨタカローラ店においては、主力車種がワゴン車の「ノア」や「エスティマ」など子育て世代をメイン・ターゲットとしていることから、子どもが安全に楽しく遊ぶことができる環境を用意すれば、子ども連れの来店客が安心して商談できるのではないかという意図に基づいたものでもある。
 実際にキッズランドを設置するに当たって、同社がパートナーとして白羽の矢を立てたのが(株)ボーネルンドである。
 ボーネルンドは1981年に設立された教育玩具、育児用具、遊具などの輸入・開発・販売会社だ。同社が手掛ける遊具や玩具は、世界の幼児教育の専門家や母親が実際に選び、使用しているものの中から、素材、デザイン、色、形などあらゆる観点から厳選した、高品質でオリジナル性の高い商品。同社ではそれらを直営の「ボーネルンドショップ」で販売するほか、全国各地で、運動大国デンマークの最新体育理論に基づいて開発された運動遊具が楽しい「プレイジム」と、“ごっこ”遊びや組み立て遊びを楽しめる「プレイタウン」を組み合わせた有料のアミューズメント・スペース「KID-O-KID(キドキド)」としても提供し、好評を博している。
 トヨタカローラ横浜では、ボーネルンドの玩具の品質の高さに注目し、2000年前後からショールームへの導入を行ってきたが、新たに戸塚下倉田店をオープンするに当たって、ボーネルンドの遊具・玩具を全面的に導入したキッズランドを設置することを企画し、ボーネルンドに協力を要請したのである。

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明るく開放的なキッズランド 大小さまざまな遊具・玩具がいっぱい

スペースづくりの企画やデザインをボーネルンドのスタッフに委嘱

 戸塚下倉田店のキッズランドは、新車店舗1階のエントランスのすぐ近く、同店の中でも最も目立つ場所に設置されている。このような場所は、通常のショールームにおいてはその時点で最も注力している車種を展示するスペースとして使用されることが多い。しかし、同社ではこれをあえてキッズランドとして使用することで、顧客の来店時の快適性を追求していることを前面に押し出す戦略を採った。そして、実際のスペースづくりにおいては、企画やデザインをボーネルンドのスタッフに委嘱。同社の豊富な経験を生かし、子どもが安全に楽しく遊ぶことができる環境をつくり上げた。
 このような施策の結果、来店客を対象に行っているCSアンケート調査では「子ども連れで行っても困らない」といった回答が数多く寄せられており、もちろんキッズランドだけの評価ではないものの、2009年7~12月調査で、同店は総合満足度において全トヨタカローラ店平均の58.3を大きく上回る73.3という高いポイントを獲得している。さらに保有顧客数なども順調に伸長しており、業績面への反映も顕著である。
 同社でも、同店におけるキッズランドの効用を高く評価しており、2008年5月には金沢店、同9月には横須賀中央店、2010年4月には南店において相次いで同様のキッズランドを設置。今後も店舗のリニューアルや新設の際には、事情が許す限り、設置していく考えである。
 なお、同店のキッズランドはボーネルンドのショールーム的な意味合いはあるものの、販売やパンフレットの設置・配布などは行っておらず、ボーネルンド製遊具・玩具を導入していることに関しても積極的な説明や訴求は行っていない。しかし、教育熱心な母親層などを中心に「ボーネルンドの遊具・玩具を使っているのですね」といった反響や、「この遊具・玩具はどちらの製品ですか」といった問い合わせが寄せられている。さらに新規性の高い店舗づくりがTVの情報番組などに取り上げられることもあったことから、ボーネルンドにとっても、実際に同社の遊具・玩具に触れる機会を創出するという意味で、広報活動の一環という要素があるようだ。
 自動車販売と遊具・玩具の輸入・開発・販売という、ある意味かけ離れた業種間のコラボレーションが、両者にとって有効に機能した好例と言えるだろう。


月刊『アイ・エム・プレス』2010年7月号の記事