ブッフェ方式のミュージック・レストランでデジタルサイネージの効果を検証

渋谷飲食店を利用した実証実験

デジタルサイネージコンソーシアムの指標部会は、東京・渋谷に新規オープンした「SPACE SHOWER TV THE DINER」を舞台にデジタルサイネージ効果検証実験を行った。同実験ではブッフェ・デザートカウンターなどにディスプレーを設置。店内インフォメーション、メニュー・食材インフォメーションなどを放映し、その効果検証を行った。

東京・渋谷のミュージック・レストランでデジタルサイネージの効果検証実験を実施

 デジタルサイネージコンソーシアム(DSC)指標部会では、2010年3月14日から31日まで、渋谷「SPACE SHOWER TV THE DINER(スペースシャワー・ティーヴィー・ザ・ダイナー)」においてデジタルサイネージ(DS)の効果検証実験を行った。
 DSCは「デジタルサイネージ産業が直面する課題の解決と新市場の創出」と「生活シーンにおけるサイネージ経験価値の向上」をミッションに活動を続ける業界団体。会員企業は2010年4月現在、DSにかかわるハードウエア・サプライヤー、媒体社、広告事業者、システム事業者、コンテンツ・サプライヤーなど150社以上に及んでいる。
 その中で指標部会は、DS設置の際の媒体力を評価する指標についての検討など、DSを活用した広告取引の参考となる指標を作成することによるDS広告事業の支援を行う部会として位置付けられている。
 DSCでは、DSの効果を測定するに当たっては、視聴状態や携帯電話のような他媒体への誘導状況などを把握する必要があり、既存の指標では実態に則していないという観点から、Attitude、Information、Contents、Circulation、Timing、Emotionの組み合わせにより構成される「AICCITEモデル」の媒体指標としての確立を目指しており、今回の実験は、その中でも特にInformation、Contents、Emotion 、Timingの各項目について、実際の飲食店で検証を行うことを目的に実施された。
 実験の舞台となった「SPACE SHOWER TV THE DINER」は、2010年3月14日、東京・渋谷にオープンした日本最大級のミュージック・レストラン。運営は衛星放送「スカパー!」およびケーブルテレビ局向けの番組供給などを手掛ける(株)スペースシャワーネットワークの全面協力の下に行われており、店内に設けられたステージでは、同社制作の「スペースシャワーTV」レギュラー番組収録のほか、毎日さまざまなアーティストによるライブを実施。席数は350席で、ブッフェ方式により、常時50種のフード&スイーツを提供している。

Twitterとの連携も実施

 今回の実験では、店舗エントランスとトイレに32インチのディスプレー各1台、ブッフェカウンターとデザートカウンターに19インチのディスプレー計6台を設置。店内に設置したサーバーからローカル・ネットワークを通じて店内インフォメーション、メニュー・食材インフォメーションなどのコンテンツを配信・放映し、さらに、顔認証測定技術により、視認者の人数や年齢、性別の測定も行った。
 実験期間は前半と後半の2期間に区切られ、例えば、前半では静止画コンテンツ、後半では動画コンテンツを放映したり、さらに後半では推奨メニューの露出量を増加させたりするなど、放映コンテンツの内容や量、放映タイミングに変化を付けることで、効果の差を検証した。
 そのほか、店舗エントランスとトイレに設置した大型ディスプレーで、Twitterとの連携を図った点も、今回実験の大きな特徴だ。具体的には、TwitterのAPIを使用してディスプレー内に同店の来店客などがTwitterでつぶやいた内容を表示。街並み背景の中で人型のキャラクターが歩いたり、立ち止まったりしながらつぶやくというスタイルを採用し、さらにトイレに設置したディスプレーでは、洗面台前の鏡に映った文字を読むことを想定し、文字を反転させた鏡体文字での放映を行うなどの工夫も凝らして、視認度の向上を図った。

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店舗エントランスとトイレに設置した32インチのDSではTwitterとも連携

パワープレイにより推奨メニューの販売数が増加

 今回の実験結果については、コンテンツ放映実績と対象メニューの売り上げの関係性、属性ごとの視認・反応状況などについて、定量的な検証が行われることとなっている。詳細については現在、集計・検証作業を進めている段階であるが、すでに、ワッフルやベーカリー、パスタなど、店として“売りたい”メニューについて放映量を増やし、いわゆるパワープレイを行うと、確実に販売数が増加するなどのデータが得られている。
 また、定性的にも、ディスプレーで放映したコンテンツの内容について、ユーザーからスタッフに質問が寄せられ、コミュニケーションの機会が増大するなど、店舗運営においてプラスと考えられる効果が指摘されており、特にブッフェ方式を採る飲食店の運営においては、DSの活用が好影響を与えることが証明されたと言えるだろう。
 そのほか、今回の実験を通じて得られた知見としては、コンテンツの工夫によって反応度が大きく異なることが確認された。例えば、ブッフェ・デザートカウンターのディスプレーでは、当初15秒コンテンツでメニューや食材の細かい説明を行うかたちとしていたが、これをインパクト重視の5秒コンテンツに変更したところ、注目度が高まり、対象メニューの販売数も増加傾向を示したのである。また、店舗側の協力を得て実際のキッチンで撮影した“調理過程の映像化”のコンテンツなど、臨場感のあるコンテンツは特に反応が高く、販売にも結び付くことがわかった。
 なお、「SPACE SHOWER TV THE DINER」では、今回の実験成果を高く評価しており、実験期間終了後もDSの活用を継続することを検討している。また、DSC指標部会でも年2回程度の定点調査を行う意向であり、次回は今年の4月から9月の間に、2回目の実験を行うことを検討しているとのことである。

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ブッフェカウンターとデザートカウンターには19インチのDS計6台を設置


月刊『アイ・エム・プレス』2010年6月号の記事