トライアル的な運用ながら3,200人以上のフォロワーを獲得

福助(株)

レッグウェア全般にかかわるビジネスを幅広く展開する福助(株)。同社では2009年6月からTwitter上で公式企業アカウント「fukuske」を運用している。商品や店舗・eコマースのセール・キャンペーン、主催・協賛イベントなど、幅広いジャンルの情報を発信し、3,200人以上に及ぶフォロワーとのコミュニケーションを図っている。

「とりあえず始めてみよう」という姿勢で取り組みをスタート

 1882(明治15)年に大阪・堺で創業した足袋装束卸問屋をルーツとして、120年以上の歴史を誇る福助(株)。現在では「お客様のハピネス(福)を足もとからアシスト(助)する“ハピネス アシスト カンパニー”」を掲げ、創業以来の伝統である足袋の製造、卸売り、小売りのほか、靴下、肌着、ストッキング、ベビーシューズの卸売り、小売りなどレッグウェア全般にかかわるビジネスを幅広く展開している。特にストッキングの「femozione」やストッキング・靴下・肌着の「満足」などは業界を代表するブランドとなっており、また、近年では有名モデルとのコラボレーションを積極的に手掛けることで、常に業界内外の注目を集めている。
 同社がTwitterの活用を開始したのは、2009年6月末。Webマーケティングにおけるパートナー企業のスタッフから、「アメリカ大統領選挙でオバマ氏がTwitterを活用した」などの情報をもたらされたことがきっかけであった。
 その後、Twitterについて調べたところ、メールマガジンやブログ、SNSなど、従来のインターネット上のメディアと比較して、特に即時性に優れていると判断。また、基本的に新たな設備投資が不要ということもあり、Webの新たな可能性を求めて、「何ができるかわからないが、とりあえず始めてみよう」という姿勢でアカウントを取得。同社におけるTwitterのマーケティング活用への取り組みが開始された。

イベント“実況”の書き込みに多くの返信・RTが寄せられる

 2009年12月現在、同社がTwitterで運用しているアカウントは、公式企業アカウントである「fukuske」1種類のみ。実際の運用を担当しているのは、基本的にeコマース部門の担当者1名である。オペレーション時間は担当者の就業時間に準ずるかたちであり、平日の9時30分~終業時間が基本。ただし、イベント開催時には土日・祝日に書き込みを行うケースもある。
 同社がTwitterを通じて発信している情報は、「とりあえず始めてみよう」という姿勢でスタートしたこともあり、商品に関するもの、直営店舗やeコマースにおけるセールやキャンペーンに関するもの、主催・協賛しているイベントに関するものなど、多種多様である。今後についても特に限定することなく、どのようなツイートに多くの反応が得られるかなどをウォッチしていく方針だ。
 書き込みに当たって特に留意しているのは、さまざまな属性の不特定多数のTwitterユーザーが目にすることを考え、①あまり専門性の高い用語は使わない。②なるべく少ない文字数で簡潔に情報提供を行う。③堅苦しくならない範囲で一定の節度を持った表現とする。という3点を心掛けている。
 フォロワー数は2009年12月15日現在3,200強。6月末の運用スタートから2カ月ほどはあまり伸びなかったが、8月末にTV番組でTwitterが取り上げられ、その中で同社の取り組みが紹介されるなど、マスコミでの露出が増えたことや、日本語版のTwitterサイト上にバナー広告を出稿したことなどをきっかけに、9月頃から増加ペースが加速し、現在に至っている。フォロー数についても、相互フォローを基本としていることから、フォロワー数とほぼ一致している状況だ。
 返信やRTは1日平均10件程度。ただし、例えば2009年12月に同社が協力参加した「Yokohama Bayside Live2009」で“実況”形式の書き込みを行ったところ、会場内外から多くの返信やRTが寄せられるなど、書き込み内容に左右される部分が多いとのことである。
 なお、返信やRTの中でも、質問や問い合わせに関しては、内容に応じて公開、またはダイレクト・メッセージのいずれかで、可能な限り迅速な対応を行っている。
 返信・RT内容の同社ビジネスへのフィードバックについて、現状では組織的な対応は行っていないが、例えば、eコマースにおける福袋の販売や割引クーポンの発行など、販売系のイベントに関するツイートに対しての返信・RTについては、イベントごとにレポート化して担当者に提出し、その後のイベント戦略策定の参考資料としている。

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2009年12月に協力参加した「Yokohama Bayside Live 2009」で“実況”形式の書き込みを行った

将来的には直接的な収益向上への貢献も

 同社では、現時点でのTwitter運用はトライアル段階にあると考えていることから、今のところ、厳密な効果検証は行っておらず、過去の曜日別やイベント別のアクセスデータを基に、今後さらにTwitterユーザーの興味にフィットする企画を模索している。また、実際にTwitterの運用開始以降、eコマースの売り上げが急速に伸びるといった効果も出ていないようだが、この点について同社では「初期のTwitterユーザーは比較的高年齢の男性が多く、フォロワーも必ずしも当社の顧客層とリンクしていないが、国内のネット利用者は女性が半数を占めるとのデータもあり、今後の影響力は楽しみ」と受け止めており、特に問題視はしていないとのことだ。
 一方で、“足袋”のイメージが強い同社が、実はレッグウェア全般を手掛ける企業であるということを、さまざまな層に周知するという意味でのブランディング効果は、確実に発揮されていると認識している。また、Twitterでは気軽なコミュニケーションが可能であることから、例えば、ツイートに対する返信やRTを通して、お客様相談室に連絡するほどではないネガティブな反応を集めることができるなど、これまで顕在化しなかった顧客の声(VOC)を集めるという面でも機能していると考えている。
 同社のTwitter運用においては、これまでのところ特に大きな問題は生じていないとのことであり、今後も当面は現在のかたちでのトライアル的運用を継続していく方針である。ただし、将来的にはeコマースとの連動、直営店舗への誘導など、直接的な収益につなげる施策なども強化していきたい考えであり、並行してコンバージョンの状況などに関する定量的検証ができる仕組みの構築も図っていく意向だ。
 なお、同社では、インターネット上のマーケティング施策として、従来からメールマガジンの配信、企業ブログや“女性の美足を応援する” ポータルサイト「美足(びあし).com」の運営などを行っているが、今後はこれらとTwitterの連動もさらに強化し、相乗効果の発揮を目指していく考えである。


月刊『アイ・エム・プレス』2010年2月号の記事