お客様の情報を橋渡しすることで“不動産流”のCRMを追求

三井不動産(株)

不動産業界でもブログ活用がはじまった。三井不動産では、従来型のWebサイトにブログ機能を加えた人と暮らしのコミュニティサイト、「みんなの住まい」を開設。お客様との新たなコミュニケーションの形成を目指している。

既存の住宅情報サイトに加えブログを活用したコミュニティサイトを新設

 三井不動産(株)では、お客様にとって付加価値の高い住まいとサービスの提供を目指して、開発から流通、賃貸、管理に至るまで、お客様志向のもと住宅事業に総合的に取り組んでいる。
 こうした中、同社では2005年3月に、多方面から注目されているブログを活用したコミュニティサイト、「みんなの住まい(37sumai.com)」(以下、みんなの住まい)を開設した。
 同社では、従来より、住宅情報サイト「三井の住まい(31sumai.com)」(以下、三井の住まい)を運営しており、2003年7月にはユーザビリティの高いサイトの構築を目指して、同サイトをリニューアルした。ここでは主に物件を具体的に検討している方を対象に、物件情報を中心に住まいに関する情報を提供しており、会員登録したユーザーにはプロフィールに応じたコンテンツも配信している。また、Yahoo! JAPANが提供する地域情報や天気予報など関連情報も利用できる情報サイトとなっている。
 この「三井の住まい」に加えて、お客様との新たなコミュニケーションを図るために開設されたのが、住まいや暮らしについてのコミュニティサイト「みんなの住まい」だ。
 「みんなの住まい」では、同社の住宅の歴史、理念、作り手の想いといった多面的な情報を発信することにより、情報に奥行きと幅を持たせたいと考えた。
 さらに、同社物件の既購入者と住宅購入検討者の情報の橋渡しをすることが、住まい選びをする際にお客様に有益な情報をもたらすひとつの方法であるとの考えに基づき、同社、同社物件の既購入者、住宅購入検討者の3者が双互に情報発信を行う“場”を提供している。

ブログの活用で更新作業の大幅な削減が可能に

 同社住宅事業本部業務推進室業務推進グループ主事の末吉一敬氏は、「私どもでは、従来より、モニター会議やアンケートなどのコミュニケーションを通じてお客様の声を反映した商品づくりを行っています。そして、このコミュニケーション活動をインターネットの世界にも広げ、しかも双方向のコミュニケーションを実現したいと考えました」と語る。
 住まいに関する周辺情報を伝えるだけならHTMLだけで十分だが、双方向のコミュニケーションは実現しない。そこで、急激に利用が拡大しているブログに着目。不動産の周辺情報を発信しながら、お客様とのコミュニケーションを図る仕組みを作った。
 「みんなの住まい」のオープンに先駆けて、同社では、「三井の住まい」や同社とグループ会社の三井不動産販売(株)が共同で運営する「三井ハウジングメイトこんにちはサークル」の会員に向けて告知したほか、同社と同様の顧客層を持つ企業のWebサイトにバナー広告を出稿するなどして告知に努めた。
 コンテンツは、C to C(お客様同士)、C to B(お客様から同社へ)、そしてB to C(同社からお客様へ)の3つのカテゴリーに大別することができる。各コンテンツの詳細は、図表1の通りである。

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 この中でブログを活用しているコンテンツは、「住まいのヒストリー」「創り手の目線から」「暮らしのアトリエ」「楽して楽しいsumaiクリエイション」「Tokyo Interior Watching」「編集後記」の6つ。お客様からのコメントやトラックバックを受け付けているほか、検索しやすいアーカイブ、カレンダーなどを用意し、ブログの良さを積極的に取り入れた作りになっている。
 これにより、お客様が情報に対するコメントを付けたり、自分のブログにリンクを張ることが容易にできるようになった。加えて、見やすくわかりやすい画面構成になったことは、ユーザーにとってのメリットと言える。
 一方で、同社におけるメリットも大きい。まず、コンテンツ管理が容易なこと。HTMLのコンテンツ更新に比べて、大幅に作業を軽減できるという。これにより、よりスピーディーな情報発信ができる環境が整った。

ユーザーが参加しやすいコンテンツを増やすなどアクセス数を伸ばす対策を模索中

 不動産業界においては、ブログをはじめとする次世代のITツールへの対応が遅れがち。そんな業界の中で、同社はこれにいち早く対応したかたちとなった。
 「みんなの住まい」の運営開始から1カ月が過ぎた。同社ではPVや投稿数などの数字を公表していないが、当初はなかなか意見が集まらないのではないかと危惧していた討論会やコンテストにも、オープンから2~3週間が過ぎたころから投稿が増え始めたという。
 また、幅広いインターネット・ユーザーにアクセスしてもらうために、RSSによる更新情報発信を実施し、コンテンツの見出しなどのサマリー情報をXMLを利用して自動的に公開している。今後も、ユーザーが参加しやすいコンテンツを増やすなど、ユーザビリティの高いサイトを目指していく考えだ。
 同社では、今後は住宅に限らず何かを購入するに当たり、ブログを使って自分の意見を発信し、第三者の意見を聞くというコミュニケーションが浸透していくと予測している。また、アクセスログ分析の結果から、以前はお客様が利用しているブラウザの大半がInternet Explorerだったが、最近はファイヤーフォックスの利用が増えていることなどから、お客様のITリテラシーが高まっていることが見て取れるという。
 「現在のブログユーザーが住宅購入を検討するようになる時期は、もうすぐ訪れると思います。その時に住まい探しの一助になってくれればと願っています」(末吉氏)。ブログが不動産業界における新たなリード・ジェネレーションに一役買うことができるのか、今後の動向に注目していきたい。


月刊『アイ・エム・プレス』2005年5月号の記事