ショールームへの集客とブランド構築の一翼を担う

ビー・エム・ダブリュー(株)

メルセデス・ベンツとともに高級車ブランドとして知られるBMW。日本国内での輸入車ブランドの人気調査では、第1位に挙げられることが多い。同社では、ショールームへの集客を主な目的にDMを活用しているが、その一方でBMWブランドのイメージを崩さないために、そのクリエイティブの完成度には細心の注意を払っている。

輸入車ブランドの人気調査では常に高い評価を受ける

 トヨタ自動車(株)が2005年8月に、高級車ブランド「レクサス」を国内に導入することで、国内におけるメルセデス・ベンツやBMWといった高級車ブランドとの競争に注目が集まっている。
 ビー・エム・ダブリュー(株)(以下、BMW)は、ドイツ南部のバイエルンに本拠を置く。クルマ作りに関してはメルセデス・ベンツと対極にあるメーカーとして知られている。車両重量の前後配分を50対50の均等か、それに近い設定にこだわりを持つ。高性能なエンジン、軽快なハンドリングや操縦安定性に優れたシャシーなどによって、運転することの楽しさを追求したスポーティーなクルマ作りを徹底。日本では販売台数こそVW(フォルクスワーゲン)、メルセデス・ベンツに次いで第3位に位置するが、輸入車ブランドの人気調査では第1位に挙げられることが多い。2004年秋には1シリーズが発売され、ラインナップの幅を広げるなど、ここ数年同社の動きは世界的に注目の的となっている。
 BMWの日本法人の設立は1981年。現在、社員数は268名(関連会社含まず)。総売上は約2,234億円(2003年)に上る。正規ディーラー・拠点数はBMWが186拠点(77社)、MINIが85拠点(61社)、モーターサイクルが75拠点(59社)だ。

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毎回手に取って飽きさせないDMがモットー

 各自動車メーカーでは、ディーラー支援というかたちで新車の告知や出張補修の告知などにDMを活用しているが、同社の場合は、ショールームへの集客にDMを利用することが多い。
 2004年の全日本DM大賞製造業部門で金賞を獲得した「ニューBMW Z4デビュー・フェア 告知DM」は、発表会をショールームで行うので、その集客のためのDMであった。「DMのメインの目的は集客ですが、同時にお越しいただけないお客様にも新しいZ4という2人乗りのクルマが発売されたことを告知する狙いもあります」と語るのは、同社マーケティング・ディビジョン ディーラー・マーケティング シニア・プロモーターの林恵一氏だ。
 BMWでは、発送元のディーラーに月平均2回、年間最低30種類のDMを提供しているという。そして、これらすべてについて、“毎回手に取って飽きさせないDM”を心掛けている。「封筒の文字だけを変えて、『今週は3 シリーズのお知らせです。今週はX5のお知らせです』ではなく、イベントのトピックを全面に表すようなクリエイティブを施しています。封筒を開けてみたら中身が同じではつまらない。製品を細かく説明するものに関しても、写真を合成したりして、なるべく同じ写真は使わない」と林氏は語る。
 例えば、「ニューBMW X3」のDM制作に当たっては、雑誌やテレビで「どの季節でも、どんな道でも楽しめるBMW」という同車の特性に合わせたビジュアルを使用していたので、それをベースにクリエイティブを考えたという。例えば、広く機能的な室内をアピールするのに、「全長〇〇×全幅〇〇×全高〇〇mm」と単にスペックを表記するだけではなく、「マウンテン・バイクやサーフ・ボードも楽に運べる」というコンセプトに基づきコピーと写真を組み合わせ、ライフスタイルと絡めた説明をする工夫が凝らされている。7月に2日間行われたデビュー・フェアでは、全国の正規ディーラーに1万8,000人のお客様が来場し、年内目標を大きく上回るX3の販売に貢献した。
 また「1シリーズ」の場合は、ターゲットをグループに分けてキャンペーンを行った。ひとつは、新しいユーザー向け。もうひとつは、現在BMWに乗っていてセカンド・カーは国産車などに乗っているお客様向け。そこで、イベントを2週に分けて行い、DMも2種類用意した。1週目のDMは、BMWにすでに乗っているお客様にセカンド・カーとして購入を促進させるために、5シリーズと1シリーズが一緒に並んで映っているビジュアルを使用。2週目のDMは、新しくBMWに乗っていただきたいお客様のために、走っているBMWのダイナミックなイメージを見せるビジュアルを制作している。
 また新車発表などがないときには、BMWがスポンサードしているF1やヨット、ゴルフといったプレミアムスポーツを絡めたイベントをフックに、ショールームへの集客を図るケースもある。例えば、グアムでのゴルフ・ツアー招待、F1のオリジナル時計やアメリカンズ・カップのオリジナル・バッグなどが当たる試乗キャンペーンを展開、 DMにより告知するといった具合だ。
 こうしたDMの制作に当たっては、クリエイティブの完成度に特に注意を払っている。例えば、合成写真を作成する場合、不自然さが見受けられればBMWのクオリティに対して、疑問を持たれかねないからだという。

ディーラーと顧客の接点を増やすためにDMを活用

 同社ではDMをショールームへの集客に活用しているが、ひとりでも多くのお客様が来場すればいいのかというと、必ずしもそうとは言えない。試乗車数にも限りがあるし、商談できる時間にも限りがある。「1シリーズ」のイベントを2週に分けた理由は、ターゲットを絞り込むことでキャンペーンの効果をアップすると同時に、1日当たりのショールームへの集客数をセーブすることで、高質な接客サービスを維持することにある。「大々的に行おうと思えば、1回にまとめてしまえばいいことですが、適正な集客量がありますので、あえて新規と既存にお客様を分けたわけです」と林氏は説明する。DMのレスポンス率は、新規顧客に関しては3%の来場を目安にしている。一方で、既存顧客はレスポンス率が高く、7%から最大で10%ぐらい。
 一般的にDMは成約率を高める目的で活用されることが多いが、同社ではディーラーとお客様との接点を増やすことを目的にしている。「クルマは高額な商品ですから、来場=成約というケースは稀です。何度もショールームにお越しいただき、ディーラー/営業マンとお客様の関係が深まった末に、成約につながることが多いのです」(林氏)
 同社の場合、「製品=ブランド」ととらえているので、DMの中身も製品のカッコ良さ、運転する楽しさなどを毎回新鮮なビジュアルにし、お客様に訴求していくことが最も効果的と考えている。
 同社にとってDMは、ショールームへの集客とともに、ブランド構築の一翼を担っていると言える。

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「毎回手に取って飽きさせないDM」を心掛けている。同社にとって、DMはブランド構築に欠かせない存在である


月刊『アイ・エム・プレス』2005年2月号の記事