コールセンターはオーナーとのコミュニケーションの場

(株)ソニー

自律型エンターテインメントロボット“AIBO”

 愛くるしい動きをはじめ多彩な表現力を備えた、自律型エンターテインメントロボット“AIBO”。
 ソニーがAIBOの販売を開始したのは、1999年6月。ウェブで注文を受け付けた、初回3,000体(日本国内。米国の2,000体と合わせて5,000体が生産、販売された)はわずか20分で完売。第2回販売は、同年11月で1万体を抽選で、第3回は、2000年2月15日〜25日という期間限定で3万体を販売した。2000年11月からは、第2世代のAIBOを発売期間や台数を限定せずに販売。販売チャネルは、第2回がウェブのほか、電話、Eメール、第3回は、ウェブ、電話、ハガキ。現在は、ウェブ、電話に加え、店頭受注販売も開始している。
 当初、告知メディアは新聞広告とウェブのみであったが、各マスコミがこぞって採りあげたため、AIBOの知名度は瞬く間に上がり、実物こそ見たことがないにせよ、老若男女によく知られる存在となった。
 もともと、ソニーのER(エンターテインメント・ロボット)事業室で、文字どおり「エンターテインメント・ロボット」として開発されたAIBOは、現在までに通算でおよそ10万体近くを売り上げている。顧客は初回販売時から男性が多いというが、近ごろでは女性も増加、幅広い年齢層へと広がりつつある。まさにペット感覚で一家に1体といった形で購入される例も少なくない。
 AIBOの公式ホームページのトップページ・ビューなどは現在公表されていないが、AIBOへの関心はご存じのとおり、ますます高まってきている。
 代金決済は、クレジットカード、コンビニ払い、現金振込(郵便局、銀行、信用金庫および信用組合)、割賦払い、そして一部の取扱店での店頭決済がある。

3種類のコールセンターを設置

 同社では顧客サービスの一環として、「CLUB AIBO」を開設しており、AIBOwners(AIBOオーナー)やAIBOファン(将来の見込客)に、メール・マガジンで、AIBOの最新情報やイベント案内、キャンペーン告知(カラー・バリエーションの限定品が発売される)など、AIBOにまつわるさまざまな情報を配信しているほか、ダイレクトメールでも各種情報を提供。なお、アウトバウンドに電話は使われていない。
 同社ではコールセンターを現状告知メディアとしてはとらえておらず、まずはカスタマー・サポート、AIBO購入者とのコミュニケーションの場という位置付けをしている。
 コールセンターは3種類ある(一部アウト・ソーシング)。
(1)注文を承る「AIBOショップ」
(2)オーナー登録を承る「AIBOデータセンター」
(3)テクニカル・サポートやリペアを承る「AIBOクリニック」
各コールセンターの規模などについては公表されていないが、「AIBOショップ」、「AIBOデータセンター」は首都圏に、「AIBOクリニック」は長野県に設置されている。また顧客からの、AIBOの使い方についての質問の受け付けは「AIBOクリニック」で行っている。

アイボ1

AIBOの公式ページURL:http://www.aibo.com/ⓒ2001 Sony Corporatin All Rights Reserved 画面は変更の可能性がございます。ご了承下さい。

コンタクト・メディアの違いはAIBOのとらえ方の違い!?

 コールセンターにおける対応メディアは、Eメール、電話(ナビダイヤル:同社の料金設定は、顧客負担が全国一律市内料金)、ウェブ・フォーム。
 AIBOには、その商品コンセプトとの関連から、同梱されている取扱説明書に書かれている内容以上の楽しみ方が可能になっている。これはオーナーひとりひとりに、創意工夫をすることで、自分だけのAIBOを発見してほしいという願いからである。実際、オーナーの多くは、AIBOを単なるエンターテインメント・ロボットというよりは「ペット」としてとらえる傾向が強くなってきている。「AIBOをきっかけとして冷えきった夫婦関係に会話が増えた」、「今までとは違う新しい人間関係が広がった」等の声がよく届くという。
 とはいうものの、AIBOは高性能のパソコンに匹敵する複雑な機能を有しており、これについてのオーナーからの質問に答えるのがコールセンターの主な役割である。おおまかな傾向として、Eメールでコンタクトしてくる顧客はAIBOを「ロボット」としてとらえており、電話を利用する顧客は「ペット」と見ているように感じられるという。
 Eメール・アドレスをもっているオーナーは全体の約半数ということで、“いかにもデジタル”というイメージとは裏腹に、インターネット・コールセンターの導入や、各会員にカスタマイズされたホームページの作成などは計画されていない。

アイボ

“AIBO”ⓒ2000 Sony Corporatin All Rights Reserved

アナログ的な暖かさを大切に

 同社では、顧客からの大量のEメールに対応するための「Eメール自動処理システム」の導入を現在検討しており、1〜2年のうちに導入に踏み切る予定である。現状では、顧客からのEメールを各コミュニケータに均等に分配すると同時に、そのステイタスを管理するシステムを利用している。顧客への返信は、各コミュニケータが用意されたテンプレートから最適なものを選び、必要な部分に手直しを加えたものをスーパーバイザーが一旦目を通してから送信する仕組みだ。
 前述したように同社では顧客とのコミュニケーションに関して“いかにもデジタル”でない、どちらかといえばアナログ的な暖かさを大切にしており、顧客からの電話にも、センター名の名のり以外はIVRを利用せず、極力人間が対応するようにしている。コミュニケータの採用においても、重視しているのは、顧客との信頼関係を築くコミュニケーション・スキルの高さ。もちろん、テクニカルな部分や知識についても、定期的な講習会や研修で万全にサポートしている。
 現在のコールセンターに関する課題は、センター間の情報の共有化が必ずしもうまくいっていないこと。顧客の購買履歴についてはどこのセンターでも見ることができるが、コンタクト履歴のリアルタイムな共有ができていないということだ。しかしこれについても近々改善される予定であり、顧客にとっても、よりストレスのない、スムースな対応が期待される。
 今後はリアルな世界におけるAIBOの販売チャネルをさらに増やしていくことも検討されているという。これまでは実際にAIBOに触れることができる場所・人は限られていたが、これからはより多くの人がAIBOに接する機会が増えていくだろう。人とロボットの共存の時代はもうすぐそこまできている。


月刊『アイ・エム・プレス』2001年5月号の記事