積極的なターゲット・プロモーションを展開

米・Wells Fargo & Company社

データ分析の精度・スピードが格段に向上

 全米第10位の銀行持ち株会社、Wells Fargo & Company(ウェルズ・ファーゴ&カンパニー)は、これまでにも成功を収めてきたターゲット・マーケティング戦略をさらに発展させるために、今年8月、SASのデータマイニング・ソフト「Enterprise Miner」を導入した。アメリカでは銀行をはじめ、電気通信企業、小売業、通信販売業者などがデータマイニング技術を採用し、データ分析を自動化することによって、意思決定者の時間を節約している。同行のコマーシャル・バンキング事業部で顧客情報分析担当副社長補佐を務めるカマル・ラジャン氏は、「データを企業活動に有効な情報に変えるデータマイニングは、業務からデータを収集できるすべての業態にとって必要条件となる」と考え、今回の「Enterprise Miner」導入を決定した。同氏は「金融産業はまさに、収益向上にデータマイニング技法を利用する時代を迎えている。全ポートフォリオにこうした技法を導入しない金融機関は、数年以内に、すでに導入済みの金融機関の後塵を拝することになる」とも述べている。
 データマイニング・ソフトの活用によって、情報の分析・提示のスピードが格段に向上し、また情報の正確さが増す。この機能を最大限に生かすことで、年間に数百万ドルのマーケティング・コストを節減できると同行は期待している。
 同行のビジネス・アナリストは、「Enterprise Miner」で、企業顧客のポートフォリオについての予測モデルを実行し、特定の顧客が「優良顧客」か、あるいは「名簿から削除すべき顧客」かを識別する。そして、その結果はターゲット・プロモーションに生かされる。アナリストは、数週間ではなく数日という短い期間に、何種類ものモデリング技法を構築し、テストすることができるようになった。加えて、ひとつのグラフ上で個々のモデルのシミュレーション結果のパフォーマンスを一括して視覚化、比較することが可能になった。前掲のラジャン氏は、「会計士にとってExcelのようなスプレッド・シート・ソフトが必要不可欠であるように、統計分析家にとってEnterprise Minerは欠かせないツールだ」と評価している。
 特定のビジネス課題を解決するために、顧客の取引データ、人口統計データ、ライフスタイル・データの中にある隠された関係を明らかにするデータマイニングは欠かせない手法である。これによって、顧客維持、ロイヤルティの向上、獲得顧客数の拡大、顧客のライフ・タイム・バリューを最大化するタイムリーなアップセリングやクロスセリングの実施などが可能になる。同行では、データマイニングに基づいたこれらの施策によって、カスタマー・リレーションシップ・マネジメントを推進していく考えだ。


月刊『アイ・エム・プレス』1998年10月号の記事