スキンチェックで自分の肌の状態を知る
(株)ポーラ化粧品本舗は、1989年から、カウンセリング化粧品「APEX-i(アペックス・アイ)」の販売を行っている。
肌の質は三人三様。生活環境によっても状態が変わる。通常、化粧品メーカーは、「乾燥しやすいお肌の方に」「脂性肌の方に」というように肌のタイプごとに何通りかの商品をラインナップしているが、顧客にとっては、自分の肌のタイプがどれなのかを正確に判断するのは決して容易でないばかりか、そのいずれにも当てはまらない場合も往々にしてあり得る。お客様の満足を得るには、まず肌を分析し、ひとりひとりに合ったものをお届けすることが一番の近道であると同社は考えたのだ。
同社では商品開発に当たって、約120万件の肌データを収集。この研究・分析によって、肌のタイプを膨大な数におよぶパターンに分類する独自の分析法を確立した。スタート当初は専門知識を持ったスタッフが目視で計測し、分析に当たっていたが、現在ではデータを入力するだけでコンピュータが結果を導き出すシステムができ上がっている。
同社の商品は全国に約16万人を数える“ポーラレディ”を通じて販売されているが、このうち「アペックス・アイ」の販売窓口となるのは、特定の研修を経た約2万人の“アペックス・アドバイザー”。「アペックス・アイ」の購入を希望するお客様は、まず、このアペックス・アドバイザーの説明にしたがって、自宅や職場などでスキンチェックを受ける。
スキンチェックでは、角質層の細胞を写し取る「角質チェッカー」と、肌のキメの状態を写す「レプリカ」の2種類の分析が行われる。同時に、肌の状態や、肌を取り巻く環境についての26項目からなるアンケートを実施。これらのデータが肌分析センターに送られ、約10日後には再びアペックス・アドバイザーを通じて、分析結果を記した「アドバイスシート」が返ってくる。これには肌の状態の解説とともに、スキンケアやベースメークに関するアドバイス、おすすめ商品などが書かれており、そのおすすめ商品の中の数種類のサンプルもいっしょに届けられる。ここまではすべて、無料のサービスだ。
商品はクレンジング、ローションなどのスキンケア品から、ファンデーション、下地料などのベースメーク品まで揃っており、たとえばクレンジングならジェルタイプ、クリームタイプといったように、剤型の違うものもラインナップされている。また、香料の有無も指定できる。購入申込から約2週間で、アペックス・アドバイザーが商品をお届けする。また、同社は東京・青山に直営店を、都内4カ所の百貨店内にインショップを構えているが、ここでもスキンチェックや購入申込の受け付けを行っている。
肌の状態は気温や湿度に大きく影響されるため、季節の変わり目に合わせて、3〜4カ月ごとのスキンチェックを勧めている。「アドバイスシート」には前回の結果も表示されており、肌の情報を継続的に見守り続けてもらえるようになっている。
「アペックス・アイ 肌相談窓口」のフリーダイヤル番号が記されたパンフレット
若年層に好反応
「アペックス・アイ」の利用者は、テレビや女性誌で展開している広告と、アペックス・アドバイザーによる営業活動、および購入客からの口コミで拡がっており、累計の売上高は1995年度に1,000億円を超えた。スタートから10年を経て固定的なファンが獲得されている。商品価格帯は4,800〜1万9,400円と、同社のほかの商品群に比べると高めだが、リピーターはかなりの割合に上る。スキンチェックによる顧客の肌データは1日に約2,000件が収集されており、98年6月現在で、累計437万6,000件を蓄積した。
同社の中心顧客層は40〜50代女性であるが、こと「アペックス・アイ」に関しては20〜30代の反応がいい。これは、若い女性の中に、環境要因の変化によって肌に悩みを持つ人が増えていること、また、化粧品についての情報ばかりでなく、自分の肌の状態をもっとよく知りたいと考えている人が多いためだろうと同社では見ている。結果として「アペックス・アイ」は、若年層を新たな顧客として取りこむことに成功している。
同社では商品に関する全般的な問い合わせを受け付けるフリーダイヤルの「ポーラ化粧品お客さま相談室」とは別に、「アペックス・アイ」のユーザーからの生の声を収集する、同じくフリーダイヤルの「アペックス・アイ 肌相談窓口」を設けている。ここには「アペックス・アイ」製品の問い合わせや、使用法、肌の悩みなどについてのさまざまな相談が寄せられる。この受付スタッフは、研究員と連動をとりながら、個別の相談にきめ細かな対応を講じている。「アペックス・アイ」の展開によって、同社には、スキンチェックによる肌データとともに、自分に合った化粧品を納得するまで選びたいという意識の高いお客様からの具体的な要望が、日々、収集・蓄積されているのだ。
同社は「アペックス・アイ」を、開発コンセプト、システムともに既存商品とは一線を画す商品群と位置付けている。「アペックス・アイ」がほかの商品群とどのような棲み分けを図っていくのか、また、どのような相乗効果を発揮していくのか、今後の動向に注目したい。