電気オンチから節電上手に
「電気を大切にね!」のキャッチフレーズでお馴染みの東京電力のキャラクター「でんこちゃん」。おっとりとした、ちょっぴりとぼけた感じのキャラクターだ。作者は漫画家の内田春菊氏である。
「でんこちゃん」がはじめて登場したのは、同社が一般家庭向けに電気の知識を普及するために作成したパンフレット。1987 年のことである。当初「でんこちゃん」は理科系に弱く、電気のことをあまり知らない、ごく一般的な家庭の主婦で、だんなさんが説明する“電気の話”の聞き役だった。
そして、そのキャラクター性から、91 年の1月に“省エネPR キャラクター”としてテレビCM に起用されることに。当時は“朝シャン”が大流行。若者向けに「省エネ」を嫌みなく伝えられるキャラクターが求められており、これに「でんこちゃん」が抜擢されたのである。「ジャン、電気を大切にね!」というキャッチフレーズも軽やかで“受け入れられやすい”ことをポイントに決定したものだ。
「でんこちゃん」の年齢は不詳。子どもでもなく、“おばさん”でもない。「省エネ」キャラクターになってからの「でんこちゃん」は、ずいぶん電気に強くなった。電気の知識をわかりやすくPR するという役割をすんなりとこなしている。
「でんこちゃん」には、だんなさんと、だんなさんのお母さん、お父さんという家族がいる。「でんこちゃん」は、だんなさんと二人暮らしだが、時々だんなさんの両親が登場してくるというシチュエーションだ。このうちお父さんにだけは“分電盤”をもじった「分電 盤太郎」という名前がある。そのほかのプロフィールは不明である。
「でんこちゃん」はテレビCM、パンフレット、リーフレット、ポスター、ホームページ、ラジオ、新聞、雑誌などの、あらゆる媒体に登場する。特に夏・冬の「省エネキャンペーン」では、その本領を存分に発揮している。
でんこちゃんグッズには、ポケットティッシュ、メモ帳、自動点滅器コンセントライトなどがあり、「省エネキャンペーン」や、毎年春と秋に実施する「あなたの声キャンペーン」「ふれあいキャンペーン」などのイベントで、来場の記念品として配布されている。
パンフレットで省エネを呼びかける「でんこちゃん」
「でんこちゃん」は「省エネ」を推進するリーダー
前述のように「でんこちゃん」は、東京電力の“省エネPR キャラクター”。現在同社には、「でんこちゃん」のほかに、穴熊の「バヂャー一家」「デンキくん」といったキャラクターたちがおり、それぞれが個別の役割を担って活躍中だが、「でんこちゃん」は「省エネ」担当というわけだ。
同社にとって「省エネ」推進は大きな課題である。電気を作り出す設備は、電力需要の最大値に合わせて建設せざるを得ない。電気は貯めておくことができないから、最大電力に応じて送電する。だが、電力需要がそれほど多くない時、設備の一部は使用されない。需要の最大値と平均値に開きがあればあるほど、設備の利用効率は悪化する。
同社では“石油ショック”をきっかけに、少々堅苦しいくらいまじめに節電を呼びかけるテレビコマーシャルを展開しはじめた。同社が電力を供給している関東一円では、過去10 年の間に最大電力が1.6 倍になっている。また、季節間や昼夜間での電気使用量の格差は拡大する傾向にある。同社ではこの格差縮小を目指して、「省エネ」をはじめ負荷の平準化に取り組んでいる。
電気の需要量がピークに達するのは、真夏の午後1 ?4 時。「でんこちゃん」は1 年を通じて「省エネ」を訴えているが、最も出番が多いのは電力消費が激しい夏と冬。一生懸命に「省エネ」を呼びかけている。
その効果のほどはいかがなものだろうか。同社が独自に行っている調査結果から、特に主婦層と子どもに「東京電力=でんこ」「省エネ=でんこ」という認知が進んでいることがわかっている。親子でコマーシャルを見ながら、子どもに省エネへの関心を持たせることができると主婦の間では評判も上々だ。また、この調査で、「私たちは家庭で『省エネ』を心がけているのだから、オフィスでももっと『省エネ』を進めてほしい」という意見があったため、最近ではオフィスの「省エネ」を訴えるCM を増やしている。
また広告認知度調査の結果を見ても、「でんこちゃん」によって「省エネ」への理解が深まっていると同社では評価している。
「でんこちゃん」のテレビCM への起用から今年で8 年目。同社は、持続が認知度を高めるとの考えから、今後も「でんこちゃん」を使った広告展開を継続していく意向だ。