ロイヤル・カスタマーがターゲット
ネスレ日本(株)では 1997 年 2 月 1 日から 1998 年 1 月 31 日まで、基幹商品である「ネスカフェ・エクセラ」で、セルフ・リクイデーションの「ネスカフェ・エクセラ Trust Your Taste コレクション ’97」を展開中だ。
1年間という長期にわたるキャンペーンはあまり多くない。「ネスカフェ・エクセラ」の場合も、これまで、コーヒーシーンを演出するテーブルウェアをプレゼントする郵送によるクローズド懸賞を、2 ~ 3 カ月の短期間で年に数回実施してきた。また、ネスカフェを中心とした大型のオープン懸賞として、1995 年秋に「ネスカフェ 100 人に 100 万円プレゼント」を実施した。セルフ・リクイデーションに関しては「ネスカフェ ゴールドブレンド」が数年前から行ってきた実績があるが、こちらは数カ月間の単位で期限を区切っての展開だ。キャンペーン長期化の狙いは、一時的な売上増ではなく、継続購入を促し、ブランド・ロイヤリティの向上を図ることにある。
「ネスカフェ・エクセラ Trust Your Taste コレクション ’97」を告知する雑誌広告(下)とパンフレット(右)
「Trust Your Taste コレクション ’97」で購入できるグッズは、家の中でくつろぐための「リラックス・テイスト」、アウトドア・ライフのための「アクティブ・テイスト」、夏を楽しむための「サマー・テイスト」の 3 つのシーン に各 4 アイテム、合計 12 アイテムが用意されている。商品の選定に当たっては、購買決定権を持つ女性、特に 20 ~ 30 代の既婚女性を意識した。申し込みには、購入証明として商品パッケージに付いている“ネスレマーク”1 ~ 5 枚が必要。負担金は「情熱の赤マグ ペアセット」の 600 円から、「フリースジャケット」「とってもバッグ」の 6,000 円までと幅広い。現在、最も人気があるのは、マーク 1 枚と 2,000 円で購入できる「超ビッグタオル」。商品は顧客の反応を見ながら追加生産をかけており、品切れなどもなく、受け付けの約 1 カ月後には申込者の手元に届く。
スタート当初は主に、店頭に設置した POP、ポスター、申込ハガキ付きパンフレット、および、商品に貼付したステッカーでキャンペーンを告知。5 月からはこれに加えて、テレビ CM を大量に投入したため、一気に申込数が増えた。ほかに女性誌を中心とした雑誌広告や、新聞広告も展開している。
広告パターンは季節ごとに変化をつけ、スタート当初は赤と黒をテーマにした「リラックス・テイスト」を、5 月以降は白とブルーを基調とした「サマー・テイスト」をモチーフに展開してきた。店頭設置の POP や応募ハガキ付きパンフレットについても同様だ。
問い合わせにはキャンペーン事務局内に設けたフリーダイヤルで平日の午前 10 時から午後 5 時まで対応するほか、インターネットのホームページでも詳しい情報を提供している。
ファンを組織化
同社では今年から「ネスカフェ・エクセラ」のロイヤル・ユーザーを対象としたクラブ、「ネスカフェ・エクセラ フレンズクラブ」を組織。年 3 回発行の会報誌『ネスカフェ・エクセラ フレンズクラブ』には「ネスカフェ・エクセラ」に関する話題や情報(たとえばプロモーションの告知や、テレビ CF の裏話など)、また、女性が日々の生活において興味を抱く情報を中心とした記事を掲載、これを通じて語らいの場を提供することを目指している。ハガキに「ネスカフェ・エクセラ」のラベルに付いている“ネスレ鳥の巣”マークを貼り、住所、氏名などを記入して送るだけで、誰でも簡単に入会できる。同社では「Trust Your Taste コレクション ’97」への応募者に対しても、クラブの案内や会報誌を送付することを計画している。
一口に“コーヒー”と言っても、人によって、また、シチュエーションによって、ニーズはさまざまに異なる。それらのニーズに応えるため、同社ではソリュブル(可溶性)・コーヒーのほかにも、ボトルコーヒー、缶コーヒーなどいくつもの種類のコーヒーを取り扱っている。さらに同じネスカフェ・ブランドでも、製品ごとに味・香りなどの特徴は異なる。ニーズに合わせ、適切なブランド、適切な情報を提案するために、同社では「フレンズクラブ」とは別に、「ネスカフェ ゴールドブレンド」ファンを対象とした「上質を知る人倶楽部」キャンペーンを実施。また、オフィスで「ネスカフェ・エクセラ」や「ゴールドブレンド」を愛飲している女性向けには、情報誌『ネスカフェ・ブレイク』を発行している。
1961 年の発売以来、ソリュブル・コーヒーのトップ・ブランドであり続けてきた「ネスカフェ」。このブランドの“カラー”を繰り返し認識してもらうために、キャンペーンが果たしてきた役割は大きい。さらにキャンペーン応募者をクラブ会員として取りこみ、コア・ユーザー層を拡げながら継続的にブランド・メッセージを発信し続けることによって、「ネスカフェ」のブランド・エクィティはますますその価値を高めていくことだろう。