バーチャルモデルハウスで完成形を確認 AUTHENTIC SCENES nature

三井ホーム(株)

納得した上で購入決定を

 三井ホーム(株)では、円高により輸入製品に多くの人々の関心が集まっていた 1996 年 7 月 5 日、輸入住宅「AUTHENTIC SCENES nature」シリーズを発売した。輸入住宅と呼ばれるものの中には内装・設備には国産材を用いている場合が少なくないが、同シリーズは資材のすべてをまとめて輸入することによって、坪当たり約 47 万円という比較的低廉な価格設定を可能にした。これは同時に、個々の顧客の特殊なオーダーは極力我慢していただくことを意味している。

 一般生活者にとって住宅の購入は、一生にせいぜい数回の“高い買い物”。にもかかわらず、注文建築の場合には、購入決定の際に現物を確認することができない。「購入前に、いかにして現物に近いものを見ていただくか、バーチャル体験を提供できるかが住宅メーカーにとって大きな課題」(業務推進部 広告宣伝課長 古徳真人氏)だ。「AUTHENTIC SCENES nature」シリーズのような“完全規格商品” の場合には、そのニーズはなおさら高くなる。
 住宅の“バーチャル体験”は、モデルハウスで行われるのが一般的。だが、同シリーズのモデルハウスは東京・浜松町と神戸市の 2 カ所のみで、決して十分な数とは言えない。
 そこで同社では、同シリーズを紹介する CD-ROM カタログを制作。全国紙、地方紙、住宅専門誌に広告を出稿し、請求を募った。同シリーズのターゲットは、はじめて住宅を購入する“一次取得層”。30 代前半から 40 代前半までの、デジタル・メディアに抵抗感の少ない若い世代だ。集中的に広告出稿を行った 1996 年 7 ~ 8 月の 2 カ月間で 2,000 枚を配布。紙のカタログの希望者も合わせると、広告へのレスポンスは件数にして平均より約 20%多かったという。 CD-ROM カタログはその後もプレスを重ね、これまでに累計で約 5,000 枚を配布した。
 広告には各地区の営業所の電話番号を掲載。カタログ請求者は最寄りの営業所に電話をかけるか、広告に付いている資料請求券を切り取ってハガキに貼り、郵送する。請求者には後日、営業所の営業担当者がカタログを持参、建築計画などをおうかがいするという順序になる。

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CD-ROM カタログの請求を募る新聞広告

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CD-ROM カタログの表紙。中面には操作方法についての説明が記載されている

知りたいことを自由に検索

 通常使われている紙のカタログは、「制作者の意図にそって組み立てられており、個々の見込客が望んでいる情報を、優先順位に即して提供できるとは限らない」(古徳氏)。その点 CD-ROM は、収録できる情報量が多い上、見込客自身がほしい情報をマウス操作でインタラクティブに選び取っていくことができるというメリットがある。
 CD-ROM カタログには「バーチャルモデルハウス」「あなたの敷地プラン」「6 大性能」の大きく 3 つのメニューがある。「バーチャルモデルハウス」は、実写をもとに作られたリアルなモデルハウスの中を自由に歩き回り、あらゆる角度から眺め、確認できる仕組み。ところどころに設備などについての詳しい説明が聞ける“オブジェクトムービー”が組みこんである。「あなたの敷地プラン」では、建設予定地、敷地に面した主要道路の向きなどの条件を入力すると、最も適したプランが示される。「6 大性能」は同シリーズの性能に関する説明だ。営業所やお客様からは「商品について理解しやすい」と好評で、今後、同様の完全規格商品を販売する際には CD-ROM を活用していきたい考え。
 CD-ROM カタログは、「社内の電子武装化を進めるきっかけともなった」(古徳氏)。同社では現在、 CD-ROM を用いた資材や間取りなどのデータベース作りを進めている。商品説明やシミュレーションにこれを活用することによって迅速・的確な顧客対応を実現、顧客満足度を向上させることが目的だ。
 営業担当者とお客様が、目の前でビジュアルに情報を共有化しながら 1 軒の家を作り上げていく…。近い将来にはそんな光景がごく一般的なものになっているかもしれない。


月刊『アイ・エム・プレス』1997年7月号の記事