デジタルカメラに専用ソフトをパッケージ
(株)日立製作所は 1997 年 2 月、DOS/V 機対応デジタルカメラ「MPEG カメラ」の販売を開始したが、この 6 月末には「MPEG カメラ」で撮影した写真を編集するための数種類のソフトウェアを一斉発売した。このソフトウェアの販売促進を目的に、同社では NTT テレマーケティング(株)が提供する「miTa-KaTTa(見たかった)サービス(CD-ROM『鍵』 サービス)」を活用している。
「miTa-KaTTa サービス」は、CD-ROM にあらかじめ暗号による“鍵”をかけた状態のコンテンツと、その体験版を収録しておき、CD-ROM を手にしたユーザーが購入したいコンテンツの“鍵”をオンラインで「miTa-KaTTa センター」から取り寄せる仕組み。利用には、あらかじめ公衆回線を通じて「miTaKaTTa センター」に氏名や自分で決めたパスワードなどを伝え、会員登録をしておくことが必要。これさえ済んでいれば、購入申込からクレジットカードの与信、“鍵をあける”作業までには数十秒とかからない。
(株)日立製作所が「miTa-KaTTa サービス」を利用したソフトウェア販売「FLORA CD Shop」を展開するのは、今回が 2 回目。同社では昨年、 通販組織である日立ダイレクトを通じて販売したパソコンのうち 1 万台を対象に、“鍵”をかけたソフトウェア約 70 本を CD-ROM でバンドル。これをパソコン販促のフックとするとともに、パソコン販売後のソフト販売を促進することによって客単価アップを図った。この時には他社製のソフトを含めてゲームからビジネスユースまで「総花的に品揃えをしたため、かえってレスポンスに結び付きにくかった」(PC 本部 ソフトウェア設計部 主任技師 蜂屋進氏)という反省点があった。
「FLORA CD Shop」のトップページと商品紹介ページ。簡単な操作で希望のソフトを試したり、購入手続きがとれるように工夫されている
先進ユーザーを対象にした世界初の商品「MPEG カメラ」の商品説明パンフレット
そこで今回は 1 回目とは趣を変え、世界初の商品である「MPEG カメラ」用ソフトにぐっとフォーカスを絞りこんだ。この 6 月からスタートする「MPEG カメラ」キャンペーンで、同カメラに興味を持つ人を中心に MPEG 編集用ソフトを収録した「FLORA CD Shop」をプレゼントする計画。これには無料の “お試し版”とともに、希望小売価格の約 60%の価格設定をした販売用ソフト 5 本が収録されている。
あらかじめハードとソフトをセットで販売するという手段もあるが、「必要なソフトウェアは個々が相対しているフェーズによってさまざまに異なる。一方で『いざ必要』となったらすぐさまほしい」(蜂屋氏)のがユーザーのニーズ。特に「MPEG カメラ」はパーソナルユース、ビジネスユースが約半々である上、クリエイターなどの先進ユーザーが思い思いに活用方法を開発している段階にある新しい分野の商品。メーカー側が使い方を特定するのではなく、顧客に幅広い選択肢を提供することが望ましい。インターネットはその解決策になり得るが、セキュリティの問題と、ひとつのソフトをダウンロードするのに何十分もかかるという点で、あまり現実的ではない。これらの問題を一挙に解消したのが「miTa-KaTTa サービス」だった。
今後の課題はソフト販売方法の整理。従来の店舗販売に加え、「miTa-KaTTa サービス」、また、インターネットを利用した販売などが併存する中で、ソフトの性格やユーザーのニーズによって最適な販売方法を設定することが必要になってくる。このキャンペーンの結果が、今後を占うひとつの大きな指標となることは間違いないだろう。