コンタクトセンター最前線(第67回):サービスとサポートの総合窓口としてお客様の利便性と満足度を高める

(株)穴吹工務店

分譲マンション 「 サーパスシリーズ」 を供給している(株)穴吹工務店では、自社およびグループ会社に設けていたすべてのお客様からの問い合わせ窓口を集約。 分譲マンションディベロッパーとして業界で初めて24時間・365日、年中無休のお客様総合相談室「穴吹コンタクトセンター」 を開設した。 問い合わせ窓口を集約することにより、お客様の利便性と満足度の向上を追求している。

コンタクトセンターにすべての窓口業務を集約

 全国47都道府県で自社開発の分譲マンション「サーパス」を供給する(株)穴吹工務店。1905年に建築業として創業した同社では、マンションを商品ではなく「作品」と呼び、住まいは人を育てる「命の器」であるという思いを礎に、用地取得から企画・設計、施行、販売、アフターサービスまで自社およびグループ会社で手掛けている。この用地取得からアフターサービスまでを手掛けるアナブキ・トータル・ディベロップメント(ATD)システムにより、すべての工程において生活実感に基づいた意見を反映でき、高品質かつ低価格な住まい作りが可能。品質、価格ともに顧客満足を最優先に考えた「作品」が多くの方に支持され、2005年12月には1,000棟を達成した。
 サーパスマンション購入者と同社との本当のお付き合いは、鍵を渡してから始まる。こう考える同社では、高品質マンションの建築と同様に、サービスとサポートを重視。マンション管理、アフターサービス(住まいのトラブル対応)、インターネットサービス、生活用品の宅配、マンション・リフォーム、借り上げ保証システム、穴吹コンタクトセンターなどで構成されるプラスACGシステムにより、入居後の暮らしをサポートしてマンションの付加価値を高めている。
 穴吹コンタクトセンターは、プラスACGシステムの総合窓口であると同時に、マンション購入を検討中のお客様から住まいに関する質問や相談を受け付ける窓口機能も併せ持つ、すべてのお客様と同社との貴重な接点と位置付けられている。これまで全国の支社やグループ会社で個別に行っていた受付業務を集約するかたちで、2004年4月、東京に開設した。
 同社がコールセンターではなくコンタクトセンターという呼称を採用した背景には、お客様との対話を通じてサービスを提供する中核拠点という意味がある。また同様の理由から、応対に当たるスタッフをコミュニケーターと呼んでいる。

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穴吹コンタクトセンターのイメージ

ライフスタイルなどの変化に応じて年中無休で運営

 窓口集約の目的は、窓口を明確にして利便性を向上させ、ひいてはお客様の満足度を高めることにある。グループ会社全20社でサービスを提供していることから、従来は窓口が複数あり、問い合わせに当たってはお客様が用件ごとに連絡先を判断しなければならなかったのだ。同社では、同センターの開設に当たり、新たに覚えやすい電話番号0120-365-384(365日サーパス)を用意し、これひとつですべての用件を受け付けるようにした。電話回線には、NTTコミュニケーションズのフリーダイヤルサービスを使用。携帯電話からの着信も可能にしている。
 また、共働き夫婦や単身者のマンション購入増加などに伴い、平日に相談や問い合わせをすることが難しい方が増えたことから、同センターの開設を機に受付時間を拡大。24時間365日・年中無休での受付体制を整えた。24時間受付というと、日中のみ有人対応を行い、深夜は自動応答装置で対応するケースもあるが、同センターでは時間帯を問わずコミュニケーターが対応に当たる。
 年中無休・24時間体制でお客様総合相談窓口を開設したのは、分譲マンションディベロッパーの中では同社が国内初となる。
 覚えやすいフリーダイヤル番号の採用と受付時間の拡大により、お客様の利便性と満足度を高める一方、窓口の集約は同社にもメリットをもたらしている。これまで個別に行っていた問い合わせ内容の分析を一元化できることから、新たに建設・販売するサーパスマンションの企画やサービスの開発に、より一層お客様の声を反映させることが可能になったのである(図表1)。さらに、苦情にも集中的に対応することで、リスク管理にもつながっている。

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スピードが満足度を左右する

 同センターにおける対応の流れは図表2の通り。お客様からフリーダイヤルやWebメールを通じて問い合わせが寄せられると、あらかじめ用意されているQ&Aや応対履歴に基づき、コミュニケーターが適切な回答を行う。同センターから回答することが難しい内容の場合は、該当する部署やグループ会社に対応方法の指示を仰ぎ回答。該当する部署やグループ会社から直接回答したほうが良い場合は、担当者から直接回答する。さらに受け付けた内容はDBに蓄積し、すべてを日々eメールで穴吹工務店の該当部署およびグループ各社に配信している。

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 対応に当たり、同センターが留意している点はスピードだ。
 住まいは日常生活に密接に結び付いているため、例えば水周りや錠前が故障してしまうと、日常生活に不自由を感じることは避けられない。従って対応にはスピードが要求され、それいかんでお客様の満足度が左右されるのである。
 同センターでは、フリーダイヤルのオプションサービスのひとつであるウィスパー機能を利用して、通話開始前に発信エリアを絞り込んで対応に備えている。このほか、曜日や時間帯に応じて変化するコール数と問い合わせ内容を踏まえて総合的に最適な人員配置を実施。いつ、どのような問い合わせが寄せられてもスピーディーな対応ができるよう努めている。

積極的に業務に関する知識を提供

 もうひとつの留意点は、コミュニケーターの教育である。
 冒頭で述べたように、同センターでは購入前のお客様と購入後のお客様の双方を対象としていることに加えて、同社が提供するサービスメニューがバラエティーに富んでいるがために、ありとあらゆる問い合わせが寄せられる。そのため、対応に当たっては応対マナーやコミュニケーションスキルに加えて、住宅ローン、リフォーム、インターネットなど、各分野の知識が必要となるのだ。
 同社では、これらに関する勉強会を通してFAQ作成および事例を周知。このほか、コミュニケーターとの意見交換会を開催し、積極的に教育に取り組んでいる。

新サービスにおいても重要な役割を果たす

 穴吹コンタクトセンターの開設から3年が経過した。同社ではこの間にもサービス内容を拡充しており、この4月には「サーパス子育て相談サービス」をスタートさせた。
 これは、同社とミキハウス子育て総研(株)とのコラボレーションにより実現したサービス。核家族化に伴って、生活経験の乏しい若年層世帯が増加する中、同センターに寄せられたお客様の声からも、子育てに関するサービスへのニーズは高いと考え、開始に至った。
 同社では、かねてよりユニバーサルデザインなど乳幼児を抱える世帯にも優しい仕様を開発・導入してきた。その取り組みを客観的に評価しようと、ミキハウス子育て総研による「子育てに優しい住まいと環境」物件の認定制度を活用。随時、認定証の取得を進めている。認定済み物件数は、2007年2月1日現在で13物件。このうち、2007年4月からのサービス開始は、千葉県船橋市のサーパス船橋山手と岡山県岡山市のサーパス新保の2物件となっている。
 サービスの流れは以下の通り。まず、相談者がeメール、ファックス、ハガキで相談内容を送ると、それを同センターが受け付けて相談内容のみをミキハウス子育て総研へ送付。同センターでは、ミキハウス子育て総研からの返事を待って、eメール、ファックス、ハガキで相談者に回答を送る、という流れ。利用に当たって申し込み手続きは不要で、料金は相談のための通信費のみとなっている。既存のサービスと同様に、穴吹コンタクトセンターが子育て相談サービスにおいても、お客様と同社をつなぐ重要な役割を果たしていることがわかる。
 同社では今後、この8 月には岩手県盛岡市のサーパス津志田、9月には石川県金沢市のサーパス鳥飼七丁目で同サービスの提供を開始する予定。2008年以降も引き続き対象物件を拡大していく計画を打ち出している。同センターは、今後ますます多忙になりそうだ。

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年4回発行される入居者向けの情報誌「さーぴすと」。プラスACGシステム関連の記事には、必ずフリーダイヤル番号が記載されている

お客様の声が次のビジネスの羅針盤

 同センターにおける課題は、受付体制や教育など複数に及ぶが、中でも今、最も大きな課題となっているのは、同センターに集まったお客様の声の活用である。お客様の声の中には、より良い住まい作り、より利便性の高いサービスの開発に役立つヒントが隠されている。冒頭で述べた通り、同社は用地取得からアフターサービスに至る全工程を自社およびグループ会社で手掛けるという特徴を持つ。これが、全工程においてお客様のニーズをスムーズに反映させることができるというメリットを創出しているわけだが、このメリットを一層、活かすことで、お客様のニーズに応え続けていきたいと考えているのだ。
 同社にとってお客様の声は、次になすべきビジネスを示す羅針盤と言えよう。同センターの今後の進化に期待したい。


月刊『アイ・エム・プレス』2007年6月号の記事