1996年にスタートした「新中期経営計画」の中に、“透明度の高い銀行”を掲げている(株)大和銀行。その具現化のために、通信メディアが大きな役割を果たしている。これまでの経緯と、その成果を聞いた。
創業80周年に向けた新たなスタート
(株)大和銀行は、1918(大正7)年5月、「大阪野村銀行」として設立。同年8月から営業を開始した。創業以来、本社を大阪に構え、現在国内に200カ所の店舗、海外ではロンドン支店のほか、香港などアジア各国を中心に22の支店・出張所・事務所を持つ。
創業 80 周年を間近に控えた 1996年4月、同行は改めて経営理念を明確にするとともに、2年間にわたる中期経営計画をスタートさせた。
同行が目指すのは“広く社会の発展に貢献し、お客様とともに歩む銀行”。この具体化の方向として中期経営計画には、お客様に親しみやすくわかりやすい「透明度の高い銀行」、信託を併営する唯一の都市銀行であるということを含めた同行の特色を生かした「特化型銀行」、お客様の信頼を得られる「管理体制が強固な銀行」を掲げている。
この中で特に「透明度の高い銀行」を目指す中核的な取り組みとして、フリーダイヤルを活用したお客様相談窓口「ダイワ・カスタマーセンター」と、インターネットのホームページを挙げることができる。
ダイレクトマーケティングへの取り組み
同行が「ダイワ・カスタマーセンター」(以下、カスタマーセンター)を開設したのは1992年 4月。ダイレクトマーケティングを担当する部署として、営業統括部内に設置された。カスタマーセンターの役割は、営業活動の推進。具体的には①テレマーケティング、 ②各種ダイレクトマーケティングの企画・実施、③メールオーダー申込受付、④営業店支援の各業務を担っている。
同行では1993年5月、顧客満足度の向上を目的として、カスタマーセンターの電話受付窓口にフリーダイヤルを導入。導入当初、フリーダイヤルはメールオーダー・サービスの顧客・見込客を対象とした、申込書の記入方法やサービスの詳細についての問い合わせ受付窓口と位置付けられていたため、電話番号の告知はまず、メールオーダー・サービスの申込書から開始。徐々にほかの商品のパンフレットや広告にもフリーダイヤル番号の掲載をはじめ、現在ではカスタマーセンターとして案内する電話番号はすべてフリーダイヤルに統一している。
さらに1996年12月、同行では顧客データベースと連動した「テレマーケティング(TM)システム」を導入。これに合わせて、1997年 4月、カスタマーセンターの受付体制を変更した。
同行のカスタマーセンターは、大阪と東京の2カ所にある。以前はお客様からの電話は発信地域によって2カ所のセンターに振り分けていた。新システム導入と同時に、これを大阪のみの受け付けに変更したのだ。通話料金が膨らむのを避けるため、東京には交換機を設置。フリーダイヤルの全国共通番号サービスによって、東日本地区からの電話はいったんこの交換機で受け、専用回線を介して大阪につなぐ仕組みとした。
TMシステムは文字通り、電話でお客様と対話をしながらスピーディに必要な情報を引き出して、パーソナルな応対を行うためのコンピュータ・システムだ。顧客氏名と取引店を入力すると、瞬時に住所、電話番号、年齢、勤務先、取引情報などが画面に表示される。これによってお客様とのスムーズで親密な対話が実現されるのだ。
フリーダイヤル番号は、現在 2 種類を併用。語呂合わせをした番号は、うろ覚えでかけて間違い電話となりやすい。そこで「494656」(よく知るコール)の使用を徐々に減らし、ここ 1 年の間には「078689」に統一したい考えだ
詳しい商品知識を持ったスタッフが対応
現在、大阪のカスタマーセンターには6人の専任オペレーターがおり、平日の午前9時から午後 5時まで、交替で応対に当たっている。通常は3人体制、広告出稿直後などあらかじめコール数の増加が見込まれる場合には最大6人まで、フレキシブルに体制を組み直す。コールを1カ所に集中させることによって、このようなスタッフの増減を含むコール・マネジメントが容易になったことに加え、広告効果を測定しやすいなどのメリットも生まれている。
商品の性格上、オペレーターには正確な商品知識と高いコンサルティング力が要求される。このため同行では、経験豊かなプロパー職員を業務に当てているが、将来的には同行のOGなどの経験者をパート社員として採用、新商品などについての再教育を行った上で配置することも検討している。
現在、フリーダイヤル番号の告知は、店頭で配布する商品パンフレットなどのほか、新聞・雑誌広告で行っている。広告出稿は、全国主要5紙、一般週刊誌数誌に平均してそれぞれ月1〜2回の割合で行っている。
寄せられる問い合わせの内容は、メールオーダー、年金などの商品についての問い合わせ、金利案内から、不動産、相続税などに関する相談まで多種多様。通話時間は平均すると約5分であるが、10分以上にわたる場合も珍しくない。1日のアクセス件数は、平均約100件である。ここに寄せられた声はデータベース化し、業務推進のための貴重なデータとして活用されている。
お客様に気軽にアクセスしていただけるフリーダイヤルは、顧客接点の拡大に大きく寄与していると同社では評価している。今後はローンの受け付け・説明・審査、年金相談、不動産利用や財務に関するコンサルティングなどの窓口として、フリーダイヤルのより一層の活用を図っていきたい考えだ。
同行ではディスクローズの手段として、ホームページを積極的に活用していきたい考え。6 月初旬には、このページに決算報告が掲示されている予定
ターゲット層の日中の在宅率が高いことから、年金関連のお知らせは、アウトバウンド・テレマーケティングのヒット率が特に高くなる
インターネットの反応に期待
カスタマーセンターには電話のほかに、郵送、およびインターネットでお客様の声が寄せられる。郵送によるものは、ほとんどがメールオーダーの申し込みで、1日約 200件を受け付けている。1996年 6月に開設したインターネットのホームページではメールオーダーなどの申込書の請求を受け付けているが、今のところ件数はごくわずかだ。
ホームページではほかに「企業概要」「商品・サービスのご案内」や、同行のトピックスを紹介する「What’s New」などのメニューを提供しており、特にダウンロードも可能な最新投資情報などを掲載している「データバンク」のページが人気。また、学生に向けた採用情報も掲載されている。URL は各種商品パンフレットと、新聞、および雑誌広告で告知しており、現在1カ月に約2万5,000 ページのアクセスがある。
同行ではホームページを「透明度の高い銀行」を実現するためになくてはならないディスクローズの手段と位置付け、今後ますます内容の充実に努めていきたい考え。同時に、インターネット・バンキングや、バーチャル・モールと連動した電子決済についても実現に向けて検討を急いでいる
営業店を支援するアウトバウンド・テレマーケティング
カスタマーセンターではインバウンドのほかに、アウトバウンド・テレマーケティングも積極的に推進している。
その内容は主に、年金受取開始時期を控えた顧客に対する受取口座指定のお願い、定期預金の満期日の案内、普通預金の新規口座開設のお礼など。インバウンドとは別に、大阪と東京、2 カ所のセンターに合計15 人のアウトバウンド専任のオペレーターを置き、午前9時から午後 5時まで発信を行っている。
前述の「テレマーケティング(TM)システム」はアウトバウンドにも威力を発揮する。あらかじめ顧客データベースから対象リストをダウンロード。発信相手を画面上で選んでクリックするとシステムが自動発信、相手に電話がつながると同時に顧客データが画面に表れる。
1人当たりの発信数は1日約80件、そのうち相手と話ができるのは約40 件。平均して月に約600人の顧客と直接、コミュニケーションをとっている計算になる。「申し込みをしたい」「もっと詳しい説明が聞きたい」といった要望があった場合には、お客様に来店を促す、あるいは営業担当者が訪問する旨を伝えて、担当営業店にその情報をフィードバックしている。このアウトバウンドによって、ニーズのあるお客様に確実に情報を届けることが可能になっているという。
同行ではアウトバウンド・テレマーケティングを今後さらに強化、オペレーター数を段階的にさらに30人、増やす予定だ。
お客様との3つの接点
ATMやCDコーナーの利用が増え、お客様とフェイス・トゥ・フェイスで対話をする機会が減少している中、お客様とより近く、より親密なコミュニケーションをとっていくために、同行では業務推進を目的としたカスタマーセンターのほかに、2つの窓口を開設している。
そのひとつが、CS推進室。ここでは各営業店で来店客に配布している「店頭ハガキアンケート」を集約、ここに記入された内容を分析して全社にフィードバックしている。「店頭ハガキアンケート」は、より多くのお客様の生の声を収集することを目的に1995年1月にスタートした「グッド・リレーション運動」の一環として行っているもの。CS推進室には年間約 4万通のハガキが寄せられるが、同行ではこれまでこれらの要望・意見をもとに、ATMでの振込方法の変更や画面の改善、同行について詳しく知ってもらうための小冊子の発行などを行ってきた。
もうひとつの窓口は、総務部内に設置されたお客様サービスセンター。ここでは主にお客様からのクレームを受け付けている。電話の受付時間帯は平日の午前9時から午後5時まで。銀行業務全般にわたって豊富な経験を持つスタッフが、常にお客様の立場に立ちつつ、時には弁護士、あるいは同行の法務部門と連携をとりながらクレームに適正に対応、お客様の理解を得るよう努めている。
同行ではそのほかに、半年に一度、支店長が直接、お客様の意見・要望を聞く「お客様座談会」を開催するなどして、顧客とのリレーションシップの構築を推進している。
お客様の視点に立って、新しい都市銀行のあり方を模索する(株)大和銀行。経営中期計画が終了する1998年には、同行の21世紀へのビジョンはより明確になっていることだろう。