レスター・ワンダーマンの訃報に触れて

2019年1月9日、Wundermanの創設者であり、名誉会長でもあるレスター・ワンダーマン氏が98歳で老衰のために逝去されました(訃報はこちら)。“ダイレクトマーケティングの父”の異名を持つ氏は1958年に、広告主に売り上げをもたらすという新たなコンセプトの広告会社を設立、これが今では3兆ドルの市場規模を誇るダイレクトマーケティングという産業が誕生するきっかけとなったのです。

私が1995年~2014年に発行していた月刊『アイ・エム・プレス』という雑誌では、2009年4月号~2014年1月号のコメンテーターをお引き受けいただいた藤田浩二さん等にお力添えいただいて、ワンダーマン氏へのインタビューや書籍紹介、セミナー・リポートなどの記事を掲載してきました(このほかにもワンダーマン氏の言説を引き合いに出した記事は枚挙にいとまがありませんが、下記には氏に直接的にかかわる記事のみを挙げました)。
ワンダーマン氏のインタビュー、書籍紹介、セミナーリポートを掲載した月刊『アイ・エム・プレス』
ワンダーマン氏のインタビュー、書籍紹介、セミナーリポートを掲載した月刊『アイ・エム・プレス』
■「レスター・ワンダーマンの新刊を読む ダイレクトマーケティング成功の19のポイントとは」、電通ワンダーマンケイトージョンソン 取締役副社長 藤田浩二氏、月刊『アイ・エム・プレス』1997年5月号

■SEMINAR REPORT「 “ダイレクトマーケティングの父”レスター・ワンダーマンが語るマーケティングの革新」、月刊『アイ・エム・プレス』1997年6月号

■I.M.press独占インタビュー「10~20年後にはダイレクトマーケティングが世界を凌駕する!!」、ワンダーマン社 名誉会長 レスター・ワンダーマン氏、月刊『アイ・エム・プレス』2004年4月号

中でも私の印象に残ったのは、私自身が氏にインタビューさせていただき、原稿にまとめ上げた「10~20年後にはダイレクトマーケティングが世界を凌駕する!!」という記事。インタビューを行ったのが2004年2月なので、今はまさにその“10~20年後”に当たるわけですが、果たしてダイレクトマーケティングは世界を凌駕したでしょうか? 

2004年4月号掲載のインタビュー記事のPDFファイルを特別公開中!!

2010年代になると、マーケティング・コミュニケーションのインフラとしてインターネットが一般化してきたことに伴い、“すべてのマーケティングはダイレクトマーケティング”などと取りざたされるようにはなりましたが、一方ではダイレクトマーケティングという言葉を耳にする機会は減少している感があります。これは“すべてのマーケティングはダイレクトマーケティング”になったので、この言葉を敢えて用いる必要がなくなったということなのかもしれません。

ワンダーマン氏がダイレクトマーケティングという言葉を最初に使ったのは、1961年にマサチューセッツ工科大学で行われた講演でのこと。一般には「ひとつ、または複数の広告メディアを用いることにより、効果の測定できるレスポンスを発生させ、商取引をどんな場所でも行うことができる双方向のマーケティング」と定義され、今日に至るまでにCRMやOne to One、近年ではデータドリブンなど、様々な類似概念が誕生しては、その違いが議論されてきました。

ワンダーマン氏の訃報に触れて改めて振り返ってみると、ダイレクトマーケティングの本質は “インタラクティブ” と“データドリブン”にほかなりません。これはとりもなおさず、昨今のデジタル時代のマーケティングに欠かせない要素であり、それこそが“すべてのマーケティングはダイレクトマーケティング”と言われる所以でもあります。

そんな時代に残された私たちには、この世界の先駆者達が積み上げてきたノウハウに学ぶと同時に、企業が提供するメッセージの質やお客さまのプライバシーに配慮しつつ、これを適切に運用していくことが求められている。そしてそれこそが、“ダイレクトマーケティングの父”への供養に繋がる。約15年前のインタビュー当時の記憶を辿りながら、そんなことを思わせられました。

※本コラム公開時には、1月11日に逝去されたと記しておりましたが、正しくは1月9日でした。お詫びと共に訂正いたします(記事は修正済みです)。