AISASとコールセンター

2010年2月28日

もう先々週のことになるのだが、(社)日本テレマーケティング協会の
「JTAコンタクトセンター・セミナー」が開催された。
この中で、電通総研 コミュニケーション・ラボの美和晃さんが
「クロスメディア時代のコミュニケーション環境とコンタクトセンター」
と題した基調講演をされたのだが、それを聴いていてふと思ったことがある。
まず、美和さんの基調講演は、下記の5つの項目から構成。
1.データでたどる生活者のメディア接触行動変化
2.2010年代:第2の激変期を迎えたメディア環境
3.クロスメディア時代のコミュニケーション心理
4.クロスメディア環境における消費行動への対応と
コンタクトセンター業務の焦点
5.まとめにかえて
1.では、視聴行動のクロスメディア化=ながら視聴、
広告主サイトのメディア化・ソーシャルメディアの影響力増大・
検索の伸びなどに代表されるインターネット利用構造の変化、
モバイル利用時間の増大などの調査結果から、
クロスメディア環境への取り組みの必要性に言及。
電通が2004年から提唱する消費行動モデルAISASに基づく
コンタクトポイント設計の考え方を説明。
※AISASはAttention、Interest、Search、Action、Shareの頭文字を取ったもの。
2.では、2010年のインフラと端末の変化、
中でもゲーム機やスマートフォン、音楽プレーヤー、電子辞書、
モバイルノートPCなど電子携帯端末市場の
携帯電話・PHS以外への広がりなどに触れた上で、
マーケティング商流の変革の可能性に言及。
3.では、クロスメディア=みんなが知っている時代であり、
時代を牽引するメディアとメッセージスタイルは、
生活者との対話の中で進化していくということ、
そして、クロスメディア時代の消費プロセスを理解するためには、
いつ、どんなきっかけで、ある商品(が購入に値すること)を信じたのかを、
解きほぐして、整理していくことが重要と主張。
4.では、これを受けた形で、
不透明な消費プロセスに対応するための取り組み課題を、
①顧客接点と販売活動の統合、
②ブランド投資の短/中長期バランス管理、
③アフターセールス施策の拡張、
④購買動機形成プロセスのコントロールの4つの観点から提示し、
各々を調査結果や事例を交えて説明。
5.では、コールセンターは、顧客に購買理由を聞くことができる
店頭以外では唯一の顧客接点であるとして、その重要性を強調。
行動サイエンス隆盛の陰に隠れてしまった「意味」の次元に、
再度、光を当てる取り組みが必要であるとして、講演を締めくくった。
私自身、美和さんの講演を聴いたのは2回目なのだが、
毎回、圧倒されるのは豊富なデータとカバー範囲の広さ。
おぼろげに感じていた事柄にデータの裏づけを得たり、
今後、弊誌がカバーしていくであろう領域を
データを交えて俯瞰できたのは、大きな収穫であった。
冒頭で述べた「ふと思ったこと」というのは、
AISASとコールセンターの関係について。
AISASというと、Searchがインターネット検索、
Shareがソーシャルメディアをイメージさせるだけに、
とかくインターネットの話であるかのように思ってしまうが、
よく考えてみれば、コールセンターに電話をすることだって、
生活者にとってはSearchの1形態なのかもしれないということだ。
こうして考えてみると、現在、多くの企業が実施している、
コールセンターにおけるVOC(顧客の声)のWebサイト上への公開も、
コールセンターに寄せられた生活者の声を、
他の生活者にShareさせるための取り組みと見ることができるだろう。
生活者が主体的に発信するソーシャルメディアとの違いは、
企業の手を介して、企業のサイト上に掲載されるという点。
そういう意味では、ある程度の編集は不可欠とはいうものの、
せっかくのUGC(User Generated Contents)の魅力が失われないよう、
配慮することが必要といえそうだ。