「CXフォーラム2021 “組織のReborn”と“CXの進化”」に参加して

2021年11月13日
この数年間、東洋経済新報社、およびラーニングイットの主催により開催されている「CXフォーラム」ですが、第5回目となる2021年は「“組織のReborn”と“CXの進化”」をテーマに、10月6日から1カ月間にわたりオンライン形式により配信されました。

今回のプログラムは、CCMC バイス・チェアマンのジョン A. グッドマン、および日立製作所 フェロー 兼 ハピネスプラネット 代表取締役CEOの矢野和男両氏の基調講演に続き、SPC Financial、AARPの海外事例、及び、JCB、長谷工グループの国内事例、NTTマーケティングアクト、セールスフォース・ドットコム、富士通コミュニケーションサービス、TMJによる講演の計10社・13名の講師によるプレゼンテーションにより構成。これまでのCXフォーラム同様、ラーニングイット 代表取締役 畑中伸介氏がナビゲーターを担っておられました。ちなみに畑中さんは、弊誌のコメンテーターとして長年にわたりご尽力いただいた方でもあります。

冒頭の畑中さんのご挨拶では、まずは今回のプログラムを紹介。引き続き1970年代のCX1.0(VOCの導入)から、1990年代のCX2.0(CRM)、2010年代のCX3.0(収益貢献)へというこれまでの20年周期での変遷を振り返ると共に、来るべきCX4.0(デジタル化)を見据えてのCXの進化と未来について解説することで、後に続くグッドマンさんの基調講演「CX3.0の進化と挑戦」への流れを構成されていました。

冒頭での畑中さんのプレゼンテーションによると、CXは1970年代以降、20年サイクルで変化してきたという
冒頭での畑中さんのプレゼンテーションによると、CXは1970年代以降、20年サイクルで変化してきたという
グッドマンさんのご講演は、企業の経営と現場の双方の視点から、CXの今後を見据えたもの。まずは「(日本国内における)トレンドとその影響」として、新型コロナウィルスの流行や、多様な業界におけるCXへの注目の高まり、テクノロジーの進化、セグメントごとにパーソナライズされたサービス提供の重要性、企業の社会的責任への注目などを挙げた上で、カスタマーサービスにおいてはこれまで同様、コストを削減するよりも優れたカスタマーサービスを提供しないことによる収益の損失を抑えることが重要であるとして、①トラブルを未然に防ぐ、②積極的に苦情を申し出てもらう、③顧客対応を強化するの3つの戦略を提示されました。

次に北米企業による戦略的シフト(顧客のオンボーディングプロセスの整備、満足からディライトの追求へ、CX機能の社内連携)、オペレーション上の変化(従業員エンパワーメントとフィードバック、チャネルの変化とAI、VOCの発生源と影響の強化)のそれぞれについて事例を交えて紹介。最後にCX3.1への進化として、今後の課題に言及されました。その全容をここでご紹介することはできませんが、「まとめ」のパワーポイントには、①CX、EX、DXはすべて互いに関係しあっている、②顧客教育とオンボーディング、③従業員のエンパワーメントとフィードバック、④満足からディライトへ、⑤デジタル化を推進し、顧客には柔軟な対応でCXを強化、⑥定量化と測定が重要という6点を掲げておられました。

これに続く矢野さんのご講演テーマは、「CXを可能にする組織とは」。矢野さんは日立製作所で20年近く前からデータ分析を手掛けられ、人々の行動を分析することを通して、真の幸せとは何か、それはビジネスの生産性とどのようにつながっているのかにフォーカスして研究活動を展開されてきた方。かつては曖昧な概念だと置き去りにされがちだった幸せが、今では意図的に作れるものであり、CXを高めることにも直結してるということがわかったとして、今日に至るまでの研究成果を紹介されました。

こちらも「幸せになる力を、ともに。」というまとめとも言えるパワポから抜き書きすると、今回のご講演のポイントは、①不幸せが業績・不祥事等への最大の企業リスク、②不幸せのリスクは、1日1分の組織習慣で改善できる、③21世紀は実験と学習に基づく新しい組織へ、④企業は人の心でできており、不幸せは企業価値に直結の4点。将来的には、「幸せを生んでいるのか」が、就職先、商品・サービス、居住地域などを選択する際の尺度になってくるとして、これらを人間中心に設計し直すことができるのではと語っておられました。

私の感想としては、まずグッドマンさんのご講演では、昔から変わらないカスタマーサービスにかかわる基本的な主張をしっかりと抑えながらも、昨今のトレンドにかかわる実例をこれでもかとばかりに詰め込んだプレゼンテーションに圧倒された印象。また矢野さんのご講演では、ここ数年来、ビジネスの世界でも語られる機会が増えていた人間の幸せのビジネスにもたらす影響が科学的に解明されつつあることに、未来への大きな可能性を感じました。