香港お土産話②:「THE GALLERY WALK」に参加して

2016年12月4日
月刊『アイ・エム・プレス』連載執筆者のお一人であるRuth Stevensさんとの打ち合わせ方々、約30年ぶりに訪れた香港のお土産話第二弾は、私が現地に到着した日の夜に参加したイベント「THE GALLERY WALK」の模様です。

「THE GALLERY WALK」では、香港の街を練り歩きながら、40を上回る参加画廊が選りすぐったアート作品を一気に鑑賞することができる
「THE GALLERY WALK」では、香港の街を練り歩きながら、40を上回る参加画廊が選りすぐったアート作品を一気に鑑賞することができる
「THE GALLERY WALK」は、「香港藝術週(HK ART WEEK)」(10月27日~11月9日)の企画の1つとして11月3日の17時~21時に、香港中心部の画廊をネットワークして開催されたアートイベント。主催はHong Kong Art Gallery Associationで、参加画廊は40カ所以上。チケット代は一般390HK$(6,000円弱)、学生250HK$(4,000円弱)で、その売り上げのすべてが同団体の教育プログラムなどへの寄付に充てられるとのことでした。

展示物の中には、トイレットペーパーを利用したアートなど、ユニークな作品も。このトイレットペーパーでは、とてもお尻は拭けませんが・・・
展示物の中には、トイレットペーパーを利用したアートなど、ユニークな作品も。このトイレットペーパーでは、とてもお尻は拭けませんが・・・
チケット代には、街中に点在する参加画廊への入場料や、路上で繰り広げられるアートや音楽のパフォーマンスの費用、各画廊で振舞われるドリンクや香港で注目のレストランが提供するオードブルなどの飲食費が含まれています。このほかスポンサーと思しきAbsolutが、路上にポップアップ・バーを設けて、アートをイメージしたウォッカ・ベースのカクテルを振舞ってもいました。

参加画廊は40カ所以上。開設後間もないと思われる現代的なたたずまいの画廊もあれば、写真のような古い建物内で営まれている画廊もある
参加画廊は40カ所以上。開設後間もないと思われる現代的なたたずまいの画廊もあれば、写真のような古い建物内で営まれている画廊もある
チケット売り場併設の画廊で入場料を支払うと、参加ギャラリーをプロットしたエリアマップと、日本でもイベントやライブハウスでおなじみのブレスレット状のテープが配布され、これをIDに、参加ギャラリーに自由に出入りし、ドリンクやフードを追加料金を支払うことなく、手に入れることができるシステムです。

イベントのマップには、通りの名称と共に参加ギャラリーが番号で記され、欄外に各ギャラリーの住所や開館時間、URL、展示物のアーティスト名などが記されている
イベントのマップには、通りの名称と共に参加ギャラリーが番号で記され、欄外に各ギャラリーの住所や開館時間、URL、展示物のアーティスト名などが記されている
私たちはID代わりのブレスレットを装着するや、まずは入口付近のカウンターでビールをもらい、これを片手に作品を鑑賞。画廊内を一巡して入口に戻ると、今度はワインを飲みながら、彩りも鮮やかなオードブルで小腹を満たした上で、マップを片手に次の画廊に向い、そこで今度はウォッカ・トニックのグラスを手に取り・・・(以下、省略)・・・。

ギャラリー内には、ドリンクやフードのコーナーが設けられている
ギャラリー内には、ドリンクやフードのコーナーが設けられている
「画廊を探す→飲み物をもらう→作品を鑑賞する」という無限ループのような一連の作業を繰り返し、参加40画廊のうち10カ所も回った頃には、すっかり出来上がると同時に、足は棒のように。そこで、Absolutのポップアップ・バーでカクテルを飲みながら、しばし立ち止まって、路上のアート・パフォーマンスを見学しました。

路上で繰り広げられていたアート・パフォーマンス。別途5HK$を支払うと、真っ黒なペンキ(?)に浸した菊の花を手渡され、建物の壁面に描かれた女性の周囲にこれを押し付けることで、作品づくりに参加することができる
路上で繰り広げられていたアート・パフォーマンス。別途5HK$を支払うと、真っ黒なペンキ(?)に浸した菊の花を手渡され、建物の壁面に描かれた女性の周囲にこれを押し付けることで、作品づくりに参加することができる
パフォーマンス終了後、あと1~2カ所・・・と、再びマップを手にして次なる画廊を探していると、今度は高低差の大きい香港ならではの街中にある石段の踊り場で、ホーン・セクションを交えたビッグバンドが演奏しているところに遭遇。国内外から訪れた大勢の観客とともにライブを堪能しました。

街中の大きな石段の踊り場をステージに、ホーン・セクションを携えたビッグバンドがファンキー・ミュージックを演奏中。観客席となった石段は、100人を上回るノリノリの観客で溢れかえっていた
街中の大きな石段の踊り場をステージに、ホーン・セクションを携えたビッグバンドがファンキー・ミュージックを演奏中。観客席となった石段は、100人を上回るノリノリの観客で溢れかえっていた
そうこうしているうちに夜も更け、この街を挙げてのアートイベントも終了。その間、オードブルは口にしても、食事らしい食事はしていなかったことから、帰り道の中華料理店でビールを飲みながら点心を食べ、疲れ切った足を引きずるようにして宿舎に戻りました。

本イベント通して私の印象に残った作品は、インタラクティブ・アートの数々。前述のアート・パフォーマンスは、アーティストが壁面に書いた絵画を顧客の参加により完成させる仕組みだし、写真下の作品は、“顧客が鑑賞する角度によって色紙の見え方が違う”という意味で、インタラクティブ・アートの一種だとか。これらの作品を前に、本サイトのテーマでもあるインタラクティブ・マーケティングとの共通点について、考えさせられたりもしました。

四角い切込みを入れた白い紙の下から、淡いサーモンピンクの下地が覗く作品。角度によって見え方が異なることから、これもインタラクティブ・アートの一種だという
四角い切込みを入れた白い紙の下から、淡いサーモンピンクの下地が覗く作品。角度によって見え方が異なることから、これもインタラクティブ・アートの一種だという
また本イベントは、飲食しながらの鑑賞もOKなら、大半の画廊は撮影もOKとあって、日本におけるアートイベントの雰囲気とは大違い。日本だったら、「作品が汚損する可能性がある」とか言って、こうした飲食を伴うアートイベントには消極的な関係者も少なくないのでは? 加えて説明員はもちろん、参加者同士のコミュニケーションも活発で、私たちもたまたま同じコースを辿っていたアーティスト夫妻とシャンペンで乾杯し、大いに盛り上がりました。

会場となった各画廊では、参加者同士のコミュニケーションも活発に行われていた
会場となった各画廊では、参加者同士のコミュニケーションも活発に行われていた