顧客接点

2005年3月5日

毎日、出勤時に、御茶ノ水の駅前で、
“ホームレスの仕事をつくり自立を応援する”
「ビッグイシュー」を販売するホームレスのおじさんの前を通る。
かつては、街頭でこれを買う人はほとんど見かけなかったが、
最近では時々、購入者を見かけるようになり、
中でも現在販売中の23号はすでに複数の購入者を見かけたので、
人気が高いのかもしれない。
23号の特集は、「ホームレス、その人々の今」。
かつては、たとえばケビン・コスナーとか、ディック・ブルーナとか、
有名人のインタビューを表紙に大きくフィーチャーしていたが、
ここ数号はこうした特集を前面に打ち出す方向に、
表紙(必ずしも読んでいないので内容は不明)を変更しているようで、
そのほうが売れるという判断があるのではないかと想像している。
有名人のインタビューは、どんな雑誌でも載せるもんな、と思う。
今年に入ってからの特集を見ると、
「2005年の願いと夢」「つくられる生命たちへ」
「告白なんか怖くない 失恋のすすめ」ときて、
23号の「ホームレス、その人々の今」と続いており、
もし23号がヒットしているという私の定点観察が当たりだとすると、
“ホームレスの仕事をつくり自立を応援する”同誌の顧客は、
ホームレスそのものに興味を持っているのではないか、
という仮説に行き着く。
そういう私も同類だ。
現に、これまで同誌は自分自身で買い求めたことはなかったのに、
23号については、数日前の出勤時に、
いつものホームレスのおじさんの前を1回通り過ぎてから、
また引き返して200円のそれを買い求めたのだ。
おじさんは、皮(合成皮革?)の手袋をした手で、
透明なクリアファイルに収められた同誌を持っており、
販売に当たっては、おじさんが差し出したファイルの中から、
お客さんが1冊をピックアップする仕組みのようだった。
同誌をまっとうに読んだのは、創刊号以来のこと。
確か創刊号には、同誌の発刊の主旨とあわせて、
ホームレスの販売者についてのあれこれが記されていたが、
ホームレスということで感じさせてしまう不潔なイメージの払拭は、
同誌にとって大きな課題に違いない。
ホームレスという顧客接点が受け入れられなければ、
いくらコンテンツが良くても同誌が売れることはないからだ。
そして、手袋やクリアファイルはもちろん、
前述した商品の受け渡し方法は、
同誌が抱える課題を解決するそのための戦術なのだろう。
ちなみに、弊社で発行している、
お客さまとの関係づくりを支援するマーケティング情報誌
月刊「アイ・エム・プレス」の次号の特集では、
久しぶりに顧客接点の人材教育を採り上げる。