郵政民営化を前に切手について考える

2007年9月29日

昨日、あるダイレクトマーケティング関連団体の委員会で、
通信販売における商品の販売代金を切手で回収する方法に話が及んだ。
ダイレクトマーケティングのコンサルタントでもある委員のお一人が、
「通信販売において代金を切手で払えるようにすることで、
注文を促進することができる」と発言されたのがことのきっかけ。
大昔、そんな話を聞いたことがあるなと記憶の糸を辿っている間に、
現在ではそうして集まった大量の切手の利用範囲が制限されているとか、
チケットショップでは切手は額面通りには買ってくれないとか、
その場に参加した委員からさまざまな発言が取り交わされていた。
通信販売において代金を切手で払えるようにすることで、
注文を促進することができるというのは、
恐らく、それが現金ではなく切手であることによって、
人々の購入に至る障壁が下がるということを意味しているのだろう。
振り返って見れば大昔、少年・少女雑誌に載っていた
ブロマイドや記念切手などの通信販売では、
代金を切手で送るという仕組みのものも多かった。
少年・少女雑誌など久しく見ていないのだが、
果たしてあの昔懐かしい通信販売は、今はどうなっているのだろうか。
委員会の席上で議論されていたのが企業向けの書籍の販売であったことから、
私は企業における切手の保管方法に思いを巡らせた。
私自身は大企業に勤めた経験がないことから、
切手は総務部門が保管していても、比較的自由に利用できるのが常だった。
しかし、大企業にお勤めの2人の委員にお伺いしてみると、
各社では切手は総務部門が鍵をかけて保管しており、
郵便を持参して出してもらうことはできても、
それ以外の目的で切手を持ち出すなんて、まず考えられないようだ。
ましてや、それは大企業なのだからして、
総務部門まで足を運ぶにはそれなりの時間を要するに違いない。
Bto Cに目を向けてみても、切手を巡る環境は大きく変化している。
ケータイメールやeメール全盛の今、手紙を出す機会は大きく減少した。
今でも一般的な家庭には、切手がストックされているのだろうか?
自宅に切手のストックがあるという前提抜きには、
代金を切手で払えることが注文を促進するなんてことはないのでは?
私の場合は、近くにあるコンビニが郵便を取り扱っているので、
そこで投函する都度、1枚、1枚、切手を購入することが多い。
勢い、自宅に保管してある切手は大昔のものばかりで、
使い勝手の悪い金額のものがデッドストック化しているのが実態だ。
こうして思いを巡らせて見ると、代金を切手で払えるようにすることで、
注文を促進できるというのは、古き良き時代の夢物語なのではないか。
それどころか、切手の存在自体が、なんだか昔懐かしい気さえしてくる。
あの、ミシン目にそって切り離し、裏に水を付けて貼るという行為は、
この便利な時代に取り残されたアナログの極みのような気がする。
今や鉄道の切符さえPASMOやSUICAなどのICカードに変わり、
さらには鉄道会社の壁を超えた相互利用が実現しているのだから、
今後は、切手もICカードに変わり、ポストが切手の自動販売機になるのか??
そして大企業には、もしかして、さながらコピー機のように、
部門ごとの利用をカードで管理できるシステムが設置される??
前出の委員会での議論をきっかけに、切手のことを考えてみたが、
気が付けば郵政の民営化はもう秒読み段階。
先に述べたのは私の夢物語に過ぎないが、
もしもそうなった時、あの美しい記念切手だけは、
送り先への心を込めた手紙の証として、コレクターズアイテムとして、
いつまでも残っていって欲しいものである。