運んでいるのは「信頼」

2006年9月6日

昨日、弊社は、宅配便のトラブルに見舞われた。
というのは、朝、社員が出勤すると、一昨日、配送会社に渡したはずの荷物が、
1階のエレベーターホールに置き去りにされていたというのだ。
何でもその日は同じビル内からの集荷物が多く、
1Fのエレベーターホールで荷物を台車に積み直した時に、
弊社の荷物を積み忘れてしまったというのだ。
私は所用を済ませてから出勤したので、
私が会社に着いた時には、すでに社員が配送会社に連絡し、
担当のドライバーの先輩が不始末を詫びると同時に、
置き去りにされていた荷物を再度、集荷し終えていた。
問題の荷物は、弊社が受託した業務の成果物の納品にかかわる重要書類。
本来は到着日が1日遅れるのは許されないところだったのだが、
その点についてはすでに担当社員があちこちに交渉して、
何とか事なきを得ていた。
事態の報告を受けた私は、配送会社に、口頭で詫びるだけでなく、
文書で提出してもらうように社員に指示。
社員からの電話を受けて、再びドライバーが今度は単身でやって来て、
書面は出せないと言っているというので、
折りしも入稿を控えて社内で校閲をしていた私が玄関先に向かった。
が、問題のドライバーは再び(三度?)深々と頭を下げた上で、
「今回のような荷物の置き忘れは、あくまでもドライバーの責任であり、
会社として責任をとることはできないとのことなので、
個人ならともかく、社名入りの文書で詫びることはできない」と言う。
えーっ? 驚いた私は、このうら若きドライバーに
これ以上、何を言ってもしょうがないと判断。
本社のお客様相談室に電話をかけると伝えたうえで、
ドライバーには引き取ってもらった。
104で調べて、お客様相談室らしきところに電話を掛け、
弊社が出荷した荷物が置き去りにされていたこと、
これに伴い、文書での謝罪を依頼したところ、
会社としては責任をとれないと言われたことを伝えたところ、
相談室の女性は荷物の置き忘れもさることながら、
その後の自社の対応にもあきれ返った様子で、
丁重に詫びると同時に、即刻、事態を調査することを約束してくれた。
その後ほどなく、東京地区全体を受け持つとおぼしき地域拠点から電話が入り、
本社からの連絡を受けて、担当ドライバーに
「お客様が納得されるような対応をするように伝えた」とのこと。
文書で謝罪してもらえるのかを確認したところ、
「通常はそうしたことはしないのだが、それも含めて、
お客様が納得されるような対応をするように伝えた」と、
同じことを繰り返し言われた。自分はきちんと伝えたのだから、
それで自分の仕事は終わったと言わんばかりの対応が間尺に合わなかったが、
取りあえずの連絡とのことだったで、ひとまず電話を切った。
受話器を置いて10分経ったか経たないかで、
問題のドライバーと、そのドライバーが所属する最寄の拠点の責任者が
再び弊社を訪れ、荷物を置き去りにしたことについて、
再三、頭を下げると同時に、その責任者名での詫び状を出すと約束してくれた。
しかし、私がこの時点で最も腹が立っていたのは、
荷物を置き去りにしたことではなく、「会社としては責任はとれない」と、
あくまでもドライバー個人の責任を主張するこの配送会社の態度。
責任者にそのことを指摘すると、この配送会社ではドライバーを指導する上で、
日々、個々の責任を強調していることから、今回も同じ方針の延長線上で、
行き過ぎた指示をしたことを認めた。
私がこの一件を通して思ったのは、以下の2点。
配送会社は、単に荷物を配達しているのではなく、
いわば送り主の信頼を運んでいるのだということ。
今回の場合も、置き去りにされた荷物の中には、
クライアントから受託した業務の納品にかかわる重要書類が入っていたわけで、
万一、1Fのエレベーターホールに放置されているうちに、
誰かが持ち去ってしまっていたら、
弊社としては損害賠償を請求される事態になっていたかもしれない。
ドライバーの皆さんは、自分達は単なる荷物の運び屋ではなく、
お客様の信頼を運んでいるんだという意識を持って、
業務に臨んで欲しいものだ。また、人間だから間違いはあるだろうが、
半日以上にわたって荷物を置き去りにして気が付かないという体制にも、
改善の余地があるのではないだろうか。
もう一点は、先ほどから何度か触れた、
ドライバー個人の責任を主張するこの配送会社の姿勢。
もちろん、最終的には会社として、
こちらの望む対応をしてくれることになったわけだが、
ここに紹介したやりとりの端々に、
やはりどこか疑問を感じさせられるところがあったのは事実。
顧客接点を担う人間の日常的な指導方針と、
お客様からのクレームが発生したときの対応は、やはり異なって然るべき。
何かあったときにどのような対応ができるかにこそ、
企業の品格が現れるのではないかと思った。
間違いはどこの会社にもあるのだから、これは決して他人事ではない。
私自身も今回の体験を教訓に、自らの襟を正さねばならないと思った。