最近、スタッフの書く原稿をチェックしていると、
事態が複雑化していることを痛感する。
何の事態かと言うと、企業のマーケティングのことである。
だから、企業の事例であれ、インタビュー原稿であれ、
複雑化する事態をわかりやすく書かねばならないという意味で、
弊誌が創刊した10年前、あるいは私が前職で調査リポートを
編集していたウン10年前と比べると、
文章スキルの重要性が増しているように思う。
なぜ事態が複雑化しているのか? と考えてみるに、
ひとつは、インターネットのおかげで良くも悪くも、
より複雑なマーケティング展開が可能になっていることが挙げられる。
たとえば、ブログのトラックバックセンター。
トラックバックだけでも不慣れな人間にとっては複雑なのに、
これを一堂に会し、かつアフィリエイトをかませるなんてことになると、
わかりやすく、かつ手短に説明するのは容易なことではない。
もうひとつ、CRMなりダイレクトマーケティングなりの導入企業と、
ITやアウトソーシングといった支援企業が、
ボーダレスになりつつあるようにも思う。
弊社が発行する月刊「アイ・エム・プレス」の特集では、
前者、すなわち導入企業の成功事例を取材・リポートしているが、
最近では導入企業が自社のシステムや設備の外販に乗り出すかと思えば、
後者の支援企業側も、生活者向けの商品やコンテンツを開発し、
自社のシステムや設備を活用してCRMなどに乗り出す例がある。
アライアンスやパートナーシップ、コラボレーションといった動きも、
同様の意味で複雑化を促進する一因になっているように思う。
3つ目として、マーケティングを構成する各要素の統合への動きも、
事を複雑化させる一因になっている。
統合と一口で言うが、そこにはマルチチャネル化に象徴される
販売チャネルやコミュニケーションチャネルの統合もあれば、
顧客接点とバックエンドの統合もある。
「マーケティングを構成する各要素を戦略的に統合して」などと言うと、
聞こえはいいものの、実際にどのようにそれを実現しているかには、
組織とシステム、そしてマネジメントが複雑に絡み合っている。
考えても見れば、私が新卒で調査会社に就職した当時には、
その会社にはコンピュータなんてなかったし、
コールセンターのある会社も珍しかった。
また、私が子供の頃は、電子レンジなんてなかったし、
炊飯器も現在のような保温ができるタイプではなかった。
それでも、仕事も生活も、それなりになんとかなっていたのだ。
スタッフの原稿に赤字を入れながらも、
人間はどこまでこの複雑化した事態に耐えられるのか、
なんだか不安になってくる今日この頃である。
複雑化する事態
2006年2月18日