異業種や生活者のパワーをテコに

2010年9月4日

先日、あるネット・マーケティングの支援企業の営業担当者が、
弊社の販促担当にASPサービスの提案に見えたとのこと。
そして、その月額利用料が現在弊社が使用中の競合サービスよりも
高額だったことを受けて、その一部を月刊『アイ・エム・プレス』
購読料で賄うことを提案されたそうだ。
なんだか涙ぐましい話だが、涙ぐましいのはお互いさま。
最近は長引く不況の中で、こんな話が増えている気がする。
このケースは一言で言えば(代金の一部の)バーター取引だが、
このように直接的に何かと何かをバーターにするというだけではなく、
異業種企業同士がそれぞれの経営資源を生かしてコラボレーションする、
という動きも活発化している。
月刊『アイ・エム・プレス』6月25日発行号では、
企業間のコラボレーションによる新規顧客開発を特集したが、
こうした動きが活発化している背景としては、
① マス媒体による新規顧客開発効果がパワーダウンしていること、
② 個人情報保護法施行に伴いパーソナル・メディアによる
新規顧客開拓が難しくなっていること、
③ 意外性のある企業同士のコラボはマスコミで取り上げられやすく、
パブリシティ効果が期待されること、
④ ケータイやインターネットの普及によって、
コラボ施策の展開が容易になったこと、
などが挙げられるようだ。
異業種間のコラボレーションでは、このほか出版をめぐる動きも興味深い。
例えば、ブランドもののバッグなど“付録”を切り札に快進撃を続ける宝島では、
出版流通にフォーカスしてさまざまな取り組みを展開しているし、
逆に雑誌やTVで紹介された商品を販売するサービスも
ここ1~2年で大きな広がりを見せている。
これらの取り組みは取材経験がないことから、
果たしてコラボと呼べるのかどうかはよくわからないが、
異業種企業同士がそれぞれの経営資源を生かして、
新たな分野で協業していることには違いない。
このように企業間のバーター取引やコラボレーションが増加している背景には、
当然のことながら、このところの不況がある。
売上高が右肩上がりの時代には、何も異業種のパワーを借りずとも、
本業のサプライチェーンの中で十分な売り上げを確保することができたものが、
長引く不況の中で、これがままならなくなってきたのだ。
こうした中、異業種間のコラボレーションと足並みをそろえて進行しているのが、
企業と生活者のコラボレーション、すなわちソーシャル・メディアの活用や、
クラウド・ソーシングによる商品開発、ソーシャル・コマースなどである。
異業種とのコラボレーションが他社のブランドやメディア、
ネットワークなどの経営資源を活用する取り組みであるのに対して、
生活者とのコラボレーションは生活者の知恵や情報発信力、
そして友人・知人との“繋がり”などを活用する取り組み。
つまりは、本業が前述のような“涙ぐましい”状況の中で、
異業種や生活者のパワーをテコにこれを底上げしようというわけで、
“leverage”がひとつのキーワードになっているのではないかと思う。
もちろん、不況だから生活者のパワーを借りようというのは、
ちょっと動機が不純な気がするのは否めないが、
それがきっかけになって企業と生活者の関係性の最適化がなされるなら、
それはそれで結果オーライには違いない。
世に言うCRMのリーディング・カンパニーにしたところで、
過去の辛い経験を乗り越えるために、発想を転換したという企業が多いのだから。