消費者志向経営とお客さま相談窓口①
お客さま相談窓口の変遷と今日的意義

2019年12月28日
本号から1年間の予定で「消費者志向経営とお客さま相談窓口」と題した連載を執筆させていただくことになった。初回は、本連載を執筆するに至った私自身のバックグラウンドをご紹介すると同時に、お客さま相談窓口の日本における歴史を振り返ってみたい。

私は大学卒業後、マーケティング・リサーチ会社勤務を経て独立。その間、一貫してダイレクトマーケティング、CRM ※1、コールセンターなど、お客さまとの対話に基づく双方向のマーケティング(以下、インタラクティブ・マーケティング)に関するリサーチ、およびメディア/コンテンツの企画制作に携わってきた。現在は、これまでに手がけたコンテンツの一部を「インタラクティブ・マーケティングまとめサイト」に公開する一方、同サイト上にコラムを執筆している。

私がマーケティング・リサーチ会社に就職した1970年代後半、(当時、日本ではそうした言葉は用いられていなかったが)ダイレクトマーケティングと言えばDMやカタログを使ったオフラインの通信販売であり、CRMと言えば小売業の友の会やメーカーの製品愛用者組織であり、コールセンターと言えば消費者窓口であった。それから40余年が経過した今日、ダイレクトマーケティングでは、通信販売がオフラインからオンラインに移行すると同時に、営業支援や販売促進など通信販売以外の領域での展開が活発化。CRMはWebサイト会員やポイントカード会員を対象に展開されるようになり、コールセンターは商品購入に先駆けてのレコメンデーションから購入の申し込み、そして購入後のサポートに至るまでさまざまな役割を担うようになってきた。

そもそも日本において消費者窓口の開設が活発化したのは、高度成長の歪みが表面化し、企業に対してさまざまな問題提起がなされるようになった1970年前後のことであった。業種・業態別に見ると、当初は製造業、中でも食品や化粧品・洗剤、自動車など、使い方次第では私たちに悪影響を及ぼす可能性がある製品を取り扱っている企業が先行する形で開設が進み、1975年前後に大手製造業による開設が一段落すると、それまでは店舗という顧客接点の存在に甘んじて消費者窓口の設置に消極的だった小売・サービス業による開設が活発化していった。

消費者窓口の業務内容は当初、①消費者からの苦情・問い合せなどへの対応、②消費者への啓蒙活動、③関連官庁・団体とのコミュニケーションなどであったが、インターネットや携帯電話、さらにはパソコン、モバイル端末、デジタルカメラなど複雑な製品の普及に伴い、1990年代後半以降は購入後のカスタマーサポートの需要が増大。こうした商品・サービスを取り扱う企業においては、従来からの消費者窓口を拡充、あるいはこれとは別立てでカスタマーサポートセンターを開設する動きが活発化した。

消費者窓口やカスタマーサポートセンターなど、いわゆるお客さま相談窓口(本連載では以下、この名称で両者を総称する)におけるお客さまとのコンタクト・チャネルも、この数十年の間で大きく変化してきた。当初からの電話・郵便・対面にFAXが、そしてeメールが加わったかと思えば、今日ではTwitterなどのソーシャルメディアやチャット、LINEなどのコミュニケーション・アプリへと拡大の一途を辿っている。今後はさらに、IoT ※2 やAI ※3 の普及により、お客さま相談窓口の形態は大きく変化していくだろう。

以上、述べてきたように、1970年前後に開設が始まった消費者窓口は、今や商品・サービスの購入前から購入時点、購入後に至るまでのさまざまな用件に、さまざまなチャネルで対応するお客さま相談窓口へと進化を遂げている。そして今日、このお客さま相談窓口は、単にお客さまの用件に対応するだけではなく、「いつ」「誰から」「何について」「どのような」コンタクトがあったのかという履歴を蓄積・分析し、これをVOC ※4 として社内に発信することで、「消費者志向経営」の推進役となることが求められているのだ。

本連載では、私自身が長年に渡り取材・調査を続けてきた企業のお客さま相談窓口の新たな可能性について、インタラクティブ・マーケティングの観点から考えてみたい。

<注>
※1 Customer Relationship Management:顧客関係管理
※2 Internet of Thing:モノのインターネット
※3 Artificial Intelligence:人工知能
※4 Voice of Customer:お客さまの声

初出:消費と生活社『消費と生活』2018年9・10月号