日本ダイレクトマーケティング学会の全国研究発表大会に参加して

2009年7月5日

昨日は、日本ダイレクトマーケティング学会
「第8回全国研究発表大会」に参加した。
明治学院大学で第1回大会が開催されてからもう8年も経ったかと思うと、
時の流れの速さに愕然とさせられる。それから今日に至るまでに、
なんと月刊『アイ・エム・プレス』96号分を世に送り出したということか。
今大会の基調講演は、慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授・研究委員長、
慶応大学ビジネススクール校長、商学博士の池尾恭一氏による、
「デジタル消費社会のマーケティング戦略」。
まずは経済環境の進展を振り返った上で、戦後消費社会の特徴として、
買い手の未熟性、リスク回避志向、人的情報源の重視を提示。
これに対応した日本型マーケティングの特質として、
企業名ブランド、同質的マーケティング、連続的新製品投入、
囲い込み流通チャネルの形成の4点に言及された。
続いて、顧客の判断力が高まってきたことに伴い、
日本型マーケティングの革新が求められているとして、
個別ブランド、大胆な差別化、正確なニーズ把握、開発スピードの維持、
オープン型マーケティング、そして選択と集中を提示された。
革新が求められる背景としては、判断力が低い顧客には
信頼の証としての企業ブランドが求められるのに対して、
判断力が高まるにつれ、識別手段としての個別ブランド求められることや、
判断力を高めた顧客に同質的マーケティングを展開すると、
結果的に価格競争を引き起こしてしまうなどの説明を付加。
また、囲い込み流通チャネルにおいては品揃えはフルライン戦略、
すなわち小売現場での顧客へのOne Stop Solutionの提供につながるが、
これと製造側の視点から指摘される選択と集中をいかに同時実現するかが
課題であるとした上で、オープン型マーケティングの展開に言及された。
次に、マッチングビジネスと顧客囲い込みとして、
販売代理業から購買代理業へ、マッチング・ビジネスとしての販売業、
データベースによる顧客囲い込みの3つの切り口を説明された。
これに続くエピローグでは、ネット販売でのマーケティングについて、
ロングテールの概念や発展プロセスなどを通して紹介。
最後は、需給マッチングの重要性として、
①テールにおける雑音除去フィルタの重要性、
②データマイニングによるマッチング、
③モジュール化とマス・カスタマイゼーションの3点を提示。
上記①の雑音除去フィルタとしては、アマゾンにおけるコメント・チェーン、
強調フィルタリング方式のリコメンデーション、専門家の知恵などを例示された。
私自身は、日本型マーケティングのお話に興味津々だったと同時に、
戦後消費社会の特徴のところで提示された人的情報源の問題についても、
いろいろと考えさせらるところが多かった。
先生はオープン型マーケティングの展開のところで、
顧客の判断力が向上すると人的情報源の価値が低下する点に言及されていたが、
Web2.0時代はそもそも、この人的情報源の一部を顧客が担う時代であり、
ロングテール戦略を推進する場合にはなおさら、テール部分の情報源として、
口コミが重要な役回りを担ってくるということだろう。
ところで、人的情報源の重視が日本の戦後消費社会の特徴だとすれば、
そのことと、現代日本のブロガー人口の多さの背景には、
何らかの共通の国民性が横たわっているのではないだろうか?
私は池尾先生の著書である「日本型マーケティングの革新」
読みそびれているので、夏休みにでも読んでみようかな。