日本ダイレクトマーケティング学会「トリプルメディア時代の『Web集客戦略』」に参加して

2011年11月19日

昨日は、日本ダイレクトマーケティング協会 次世代Web研究部会主催の
オープンフォーラム「トリプルメディア時代の『Web集客戦略』」が開催された。
月刊『アイ・エム・プレス』では本オープンフォーラムの協力媒体を担っており、
企画から講師のアテンドまでをお手伝いさせていただくと同時に、
月刊『アイ・エム・プレス』11月号でこれと連動した特集
「トリプルメディア時代のWebマーケティング」を展開した。

本オープン・フォーラムは、ビービット 広報宣伝部長 渡辺春樹さんによる
基調講演「トリプルメディア時代のWebマーケティング」と、
インターネット広告効果測定サービス提供企業によるプレゼンテーション、
ネスレ日本と資生堂のケーススタディの三部から構成された。
基調講演では、ウェッブの目的は顧客リレーション・コストの最適化にある、
トリプルメディアが基本であることは昔から変わらないという視点のもと、
講師の前職である本田技研工業の事例を交えてストーリーを展開。
ネット革命の本質を踏まえた自社メディアの戦略的強化や、
コミュニケーション・プロセスの科学的な分析によるチャンスの発見、
自社に必要なものを見極めて他は捨てる勇気の重要性などを訴えた。
第2部のインターネット広告効果測定サービスのプレゼンテーションでは、
サイバーエージェントの「CAMP」、ビービットの「ウェブアンテナ」、
Platform IDの「ADPLAN」の3サービスの基本機能や特徴が紹介され、
1社20分という短時間ながらも、各社が提供するサービスの大枠が把握できた。
その後、15分の休憩を挟んで、第3部のケーススタディがスタート。
トップバッターである、ネスレ日本 ウェブ&モバイル・コミュニケーションユニット
ユニットマネージャーの揖斐理佳子さんの演題は、
「ソーシャルメディア時代のウェブ・CRM戦略~新たな集客の考え方」。
冒頭で集客パターンに関する基本的な考え方を紹介したうえで、
同社におけるインターネット・コミュニケーションの効果指標や
集客のためのコンテンツのあり方を紹介。
集客コンテンツについては、プレゼントなどのオファーに比べて、
CGM(生活者生成コンテンツ)のパワーが大きいとして
“自走するコンテンツ”の重要性を主張。
その一例として、2011年11月9日に一般公開したばかりの
「【ゆずりあいマーケット】ネスレゆずりば」を紹介した。
これに続く、資生堂 マス・マステージブランドユニット 清水英孝さんの演題は、
「資生堂マジョリカマジョルカが仕掛けるクロスメディア戦略
~ブランド価値向上に向けた新たな挑戦とは~」。
マジョリカマジョルカのブランドの概要にはじまり、
2003年7月にブランドを立ち上げてから今日に至るまでの
マーケティング・コミュニケーションの考え方の推移を説明。
現在、注力しているWebコミュニケーションについてビジュアルを交えて紹介した後、
新たなメディアとしての異業種とのコラボレーションや、
ソーシャルメディアへの取り組み事例が発表された。
私自身の感想としては、まず、基調講演講師である渡辺さんの、
「トリプルメディアが基本であることは昔から変わらない」という視点には大賛成。
自動車メーカーのご出身の渡辺さんは、かつてのトリプルメディアの構成を、
Paid Media=宣伝、Owned Media=営業/チャンネル、Earned Media=PR
と紹介されていたが、これを通販会社のケースに置き換えると
事態はさらに明確になるように思う。
これまで通販会社では、マス広告などのPaid Mediaにより開拓した顧客を対象に、
Owned Mediaであるカタログを送付することでビジネスを展開してきたわけで、
現在では、マス広告が担ってきた機能の一部がネット広告に、
そして、カタログが担ってきた機能の一部が自社サイトに置き換わったと考えられる。
そして、ソーシャルメディアなどのEarned Mediaには、
お客さまからの投稿が掲載されたコミュニケーション誌や、
MGM(Member get Member)と呼ばれるお友達紹介制度などが該当するだろう。
つまりは、インターネットの進展とともにトリプルメディアが登場したのではなく、
インターネットの進展によりトリプルメディアの構成が変化したのだ。
そして、ネスレ日本の事例が、今を去る10年以上前から議論されてきた、
低価格帯のパッケージグッズのダイレクトマーケティングの可能性に
ひとつの“解”を提示するものであるとすれば、
資生堂では、やはり昔から議論されてきた、
ブランドマーケティングとダイレクト(顧客)マーケティングの関係を巡る議論を
ソーシャルメディアを駆使することでクリアしつつあるかのように見える。
つまり、今回のオープンフォーラムは、
「トリプルメディア時代の『Web集客戦略』」をテーマに謳ってはいるが、
テーマにかかわる情報や知識を得るにとどまらず、
インターネットの進展に伴い、伝統的なサプライチェーンを通して
ビジネスを展開している大手広告主までもが
マーケティング・コミュニケーションの領域において
ダイレクトマーケティング手法を適用し始めていることを
目の当たりにする貴重な機会にもなったのではないか。
もちろん、ネスレ日本の揖斐さんや、資生堂の清水さんにしてみれば、
自分達がダイレクトマーケターであるという認識はないかもしれない。
しかし、ダイレクトマーケティングの世界で育った私には、
そのようにも受け止められると同時に、ダイレクト VS マス、
顧客 VS ブランド、あるいはオフライン VS オンラインといった
対立軸で考える時代がいよいよ終焉したのだということを痛感させられた。
私自身は日本ダイレクトマーケティング学会 次世代Web研究部会の幹事として、
当日の運営の一部も担い、会場を出たり入ったりしながらの聴講となったが、
本当は1受講者としてじっくり聞いていたかったというのが正直なところ。
今後も、月刊『アイ・エム・プレス』の発行を通して、
あるいは、日本ダイレクトマーケティング学会などとのコラボを通して、
これまでは前述のような対立軸に基づき分断されていたり、
顧客接点ごとに分断されていたグループをつなぎ、
相互のリソースを効果的に連携させることで、
企業とお客さまとのwin-winの実現を支援することに注力していきたいと思っている。
なお、基調講演講師の渡辺さんには、月刊『アイ・エム・プレス』11月号特集の
インタビューにもご協力いただいているので、昨日、ご参加いただけなかった方は、
そちらをご参照ください。
→ 本誌の詳細・お申し込みはこちらから。
また、ネスレ日本の揖斐さんと資生堂の清水さんのお二方には、
弊社がこの9月に発行したCRMシリーズの
『ソーシャルメディア・マーケティング成功事例集』で取材にご協力いただいている。
両社のソーシャルメディアへの取り組みに興味がある方はぜひ、ご参照ください。
→ 本書の詳細・お申し込みはこちらから。