日本ダイレクトマーケティング学会 第9回全国研究発表大会に参加して

2010年7月4日

昨日は、日本ダイレクトマーケティング学会の
第9回全国研究発表大会に参加してきた。
午前中の3会場に分かれての計9つの研究発表に続いて、
午後からは神戸大学 名誉教授 田村正紀氏による基調講演、
「ネット通販のインパクト:その将来展望」と、
ソフトバンクモバイル プロダクト・マーケティング本部
副本部長 蓮実一隆氏による特別講演、
「いまケータイに、何が起きているのか?」が行われた。
研究発表の中でも私が興味を持ったのは、
(株)オプトの長谷川氏が発表した
「ユーザ行動分析を基にしたダイレクトアプローチ
—画期的な分析手法とターゲティング」。
本研究の目的は、検索連動型広告において、
目標とするCPA(1人当たりのユーザ開拓コスト)を
クリアしているキーワードの検索回数自体が少なく、
広告予算を消化しきれずに売上高が伸び悩むという課題を解決するべく、
潜在ユーザに効率よくリーチするためのマーケティング戦略を策定し、
自社ユーザとして取り込むためのキーワードの運用方法を開発すること。
同社では、本研究を開始するに当たって、
自社サイトにアクセスしてこない潜在ユーザの行動データの分析を実現するべく、
IE用のツールバーなどを通して集めた、ブラウザ経由でアクセスしたURL、
アクセス日時、ブラウザIDなどの行動履歴を収集。
これをもとに、ネットユーザーを“懸賞生活”など13のクラスタに分類、
クラスタごとのユーザ数と含有率を算出した。
これにより、自社サイトと競合サイトにおける
各クラスタへのリーチ状況を分析して、ターゲティングの参考にする、
ターゲット・クラスタへのリーチをKPIとして広告の効果を検証する、
あるいは、口コミサイトなどがターゲット・ユーザに及ぼす影響を
可視化することなどが可能になったという。
この研究発表を聞いて私が思い出したのは、
今を去る20年以上前にカタログ通販各社が取り組んでいた
顧客リストの共同利用やアバカス社のサービス。
アバカス社は昨年、すでに日本から撤退しているが、
これらの取り組みも、自社顧客と他社顧客を重ね合わせることで、
自社顧客の実態を立体的に把握したり、
自社の見込客を抽出してDMやカタログを送付するという意味で、
その目指すところには共通する部分があると言っていいだろう。
しかし、個人情報保護法の施行や、インターネットの進展など、
ダイレクトマーケティングをめぐる環境が大きく変わる中、
分析対象データが購買履歴からネット上での行動履歴に変化したり、
分析結果の落としどころが個人情報の活用を前提とするDMやカタログから、
これを必ずしも必要としないWeb戦略に変化したりと、
戦術ベースでは、双方に大きな違いがあるのも事実だ。
ところで、今回の大会テーマは、「ダイレクトマーケティングの拡大と
変容の可能性—その戦略的課題—」である。
今大会の基調講演・特別講演はそれぞれ、
ネット通販とケータイにフォーカスしていたが、
今後、ダイレクトマーケティングの概念は、
インターネット、さらにはソーシャルメディアを巻き込んで、
ますます拡大していくのだろう。
そもそも、ダイレクトマーケティングを、
顧客DBに基づく双方向のマーケティングと捉えれば、
ネット上での行動ターゲティングは、
ダイレクトマーケティング以外の何者でもないのではないか。
そんなことを考えさせられた発表だった。