情報過多の弊害

2007年2月11日

先週の水曜日から3日間、ポスタルフォーラム実行委員会の主催により、
「POSTAL FORUM 2007 ダイレクトマーケティングフォーラム」が開催された。
私は中日の8日に行われた、米国・Direct Marketing Association
バイスプレジデントのチャールス・プレスコットさんの基調講演に参加、
終了後、プレスコットさんへの単独インタビューを行った。
基調講演のテーマは、「欧米におけるマルチチャネルビジネスの現状と課題」。
前半ではDirect Marketing Associationの活動を紹介、
中半ではテーマに即して、米国を中心に、EU主要国における
マルチチャネル化の動向を各国における調査結果を交えて発表、
後半では米・エコー賞の受賞作品の解説がなされた。
基調講演の模様、および単独インタビューの模様は、
月刊「アイ・エム・プレス」4月号(3月25日発行)に掲載する。
基調講演の中で、デジタル時代に生まれた若者と、
それ以前の世代とでは、情報接触時の反応が大きく異なるという
社会学系の研究者による調査結果が紹介された。
この調査結果によると、前者は後者に比べて情報接触時の反応は速いが、
これを思い起こすことは少ないとのこと。
実際に、双方のグループに30秒のテレビCMを見せた翌朝、
内容をどれだけ記憶しているかを調べたところ、
前者の多くがテレビCMの内容を覚えていなかったという。
プレスコットさんはこの話を、単にCMを見せるだけではなく、
何らかの行動を起こさせることが大切と続けておられたのだが、
私はこの話を聞きながら、こうした若者の登場は、
何も海の向こうの話ではないと背筋が寒くなる思いがした。
最近、ひとつひとつの経験を自分の中で体系化していくことが
不得意な若者が増えているような気がするからだ。
処理すべき情報量が多すぎると、頭の中でこれがきちんと処理できず、
結果、記憶が曖昧になるのは、若者に限らず誰もが経験するところだが、
これが繁忙時に固有の一時的な現象ではなく、
情報過多という環境そのものに起因しているとしたら、
人間はいったいどうなってしまうのだろうか?
昨日、美容院に行って、担当の美容師さんにこの話をしたところ、
美容業界でもこうした若者の台頭は顕著なのだと言う。
30代半ばの彼女が勉強していた時代には、
美容学校卒業後、アシスタントとして働きながら、
先輩美容師の技術を盗んで、自分の中で体系化していったものが、
最近では大半の技術がマニュアル化されていることから、
現場経験の中で個々の技術を身につけていくというよりも、
マニュアルを覚えることにばかり力点が置かれ、
結果、いつになっても一人前にならない、
あるいは、なろうとしない若者が増えているのだという。
実際、この美容院に勤めていたアシスタントの女性の中にも、
美容学校卒業後、大手美容院チェーンに入社し、アシスタントを経て、
実際にプロの美容師として勤務することが認められたにもかかわらず、
「自信がない」という理由で大手チェーンを退職し、
現在の美容院に再びアシスタントとして入社した若者がいるという。
この美容院では、週一回勉強会を開催しているのだが、
最近のアシスタントはせっかく教えた技術をすぐに忘れてしまい、
翌週になってまた同じことを繰り返すことも多いらしい。
それでいて、勉強することにはやたら熱心で、まじめなのだという。
昨日の美容師さんとの話は、最終的には地球が温暖化する以前に、
人間の頭が破滅するのではないかというますます怖い話に行き着いた。