大衆薬通販規制に思う

2009年6月13日

今月1日から施行された改正薬事法により、
一般用医薬品の通信販売が規制されたことを受けて、
医薬品・健康食品のネット通販を手がけるケンコーコム、ウェルネットが、
国を相手に販売の継続を訴える訴訟を提起している。
今回の改正薬事法の施行に伴い、新設される「登録販売者」を置けば、
薬剤師を置かずとも風邪薬など大半の大衆薬が販売できるようになったわけだが、
その傍らでは省令によって、ネットを含む通信販売においては、
一部を除く医薬品の販売が制限されてしまったというのが事の次第。
これに先駆け、厚労省が提示した経過措置の省令案に集まった
パブリックコメントでは、「経過措置に賛成」と答えた比率は0.5%に過ぎず、
「経過措置に反対」と「郵便等販売の規制をするべきでない」の合計が
9割以上に達していたにもかかわらず、厚労省に押し切られた格好だ。
ちなみに、この経過措置とは、向こう2年間に限って、
薬局・薬店のない離島に住む人と、
同じ店舗で同じ医薬品を継続購入・使用している人を対象に、
副作用リスクが中程度の大衆薬の通信販売を認める内容。
わざわざ省令に対するパブリックコメントまで募集しておいて、
これを無視するその心はまったくもって理解に苦しむが、
そこにもうひとつ問題点として浮き上がってくるのが、
ネット販売を含む通信販売に対する差別的意識の存在だ。
改正薬事法の一件に触れたケンコーコムのブログでは、
医薬品は副作用リスクがあるので安全が最も重要であり、
安全な流通のためには対面販売が求められることから、
ネット販売を含む通信販売を禁止するという厚労省のロジックには、
致命的な欠陥があると警鐘を鳴らしている。
今や“商品の購入に先駆けてネットを検索する”のはごく一般的な行動。
その先にある購入ボタンをクリックしてそのまま商品が購入できれば、
一般消費者にとって、中でも体調が優れない人にとっては便利に違いない。
もちろん、便利さを安全性の確保と引き換えにすることはできないが、
対面販売でないから安全でないというのはどういう理屈なのか。
そこで思い出したのが、今から20年ちょっと前に、
通信販売や訪問販売が“特殊販売”と呼ばれていたという事実。
念のためにネットで検索してみると、今でもいくつかのページにそうした記述が。
この“特殊”というのは、果たしてどういう意味なのか?
今回の経緯を見ていると、そこには行政による
通信販売への差別意識が横たわっている気がしてならない。
今や商品・サービスをどこで(=ブランド)、
どのように(=チャネル)購入するかは、顧客自らが選択する時代。
求められているのは、店舗か通販かといったチャネルを問わず、
安全性を確保し、顧客に選択されるための企業努力であり、
店舗か通販かといったチャネルの問題ではないことは明白ではないだろうか。