国境なき医師団からのDM

2010年8月1日

6月20日に、「世界の医療団のクロスメディア型キャンペーン」と題した
ブログをアップしたが、まるでそれに(逆)反応でもしたかのように、
今度は国境なき医師団からのダイレクト・メール(以下、DM)が
届いたのは、10日ほど前のことだろうか。
前者が宛名のないポスティングだったのに対し、
こちらは「ゆうメール」を使用した封書DMで、
封入物は、レター(2枚)、ブロシュア、寄付金の振込用紙の3点。
封筒のサイズは定型郵便物よりひと回り大きい147ミリ×280ミリで目立つが、
色数は封入物を通して、墨、赤、青に抑えられており、
地味なイメージを醸し出している(写真)。

まずレターは、2枚の各々に両面印刷が施された長文のもので、
特に重要と思われる部分に手書き風のアンダーラインが引かれているのが特徴。
最初の3ページは同団体外科医名でのレターで、
自らがイエメンに赴任した時の経験を交えて、
紛争で痛めつけられた地域における医療の実態を紹介。
「30,000円で、1ヵ月分の基本治療セットを1,200人に届けることができます」
などと、私たちの寄付金で何ができるのかを数字を交えて具体的に提示しつつ、
個人や法人に向けて寄付を呼びかけている。
そして4ページ目では、同団体日本会長が自らの志を語ると同時に、
前出の外科医からのレター文面の閲読とあわせて、
再び、寄付を呼びかけている。
次に、ブロシュアの表紙は、担架で運ばれる少年のモノクロ写真の上に
「彼らは来られない。私たちが来るのを待っている。」
というキャッチコピーを赤字で記したデザイン。
中面の見開きでは、1999年度にノーベル平和賞を受賞したという
国境なき医師団の活動内容の紹介とあわせて、
コンゴなどの怪我や病気の子供たちを写真つきで紹介。
裏面では同団体の派遣スタッフ数やその活動エリアを
世界地図を通して具体的に紹介すると同時に、寄付を呼びかけている。
そして最後の寄付の振込用紙は、ゆうちょ銀行・郵便局用の振込取扱票、
その他の金融機関への振込依頼書とフライヤーが合体したようなもので、
振込用紙が簡単に切り離せるよう、ミシン目の加工もきちんと施されている。
フライヤー表面には、外科医からのレター文面に記されていた
寄付金額ごとに何ができるかといった説明を写真つきで再掲載すると同時に、
オファー(感謝状の進呈とニュースレターの送付)の紹介、
裏面には寄付金控除の案内とプライバシーポリシーが記されている。
以前にこのブログで紹介した、世界の医療団のキャンペーンと比較すると、
こちらはDM単体による訴求であり、住所・電話番号・FAX番号はあっても、
ホームページについてはURLの記載さえもないのは残念。
しかしそれだけに、DMそのものには封書を使用すると同時に、
振込用紙を含む複数の封入物を同封することで、
受取人がDMを見るだけで主旨が理解でき、
希望者は振込用紙に記入してもよりの金融機関に出向けば、
手軽に寄付ができるように設計されている。
欧米のダイレクトマーケティングの売上高には、
このようなチャリティ関連のものも少なくないが、
こうして私宛に次々とチャリティ関連のDMが届いたことは、
日本でもこうした分野のダイレクトマーケティングが
本格化する兆しを示していると言えるのではないだろうか。
チャリティ関連というと、最近ではソーシャルメディアを
駆使したキャンペーンが目に付くが、DMであれ、ソーシャルメディアであれ、
人の関心を惹きつけ、行動を動機付けるという基本に変わるところはない。
だから、こうしたチャリティ活動を推進する団体にとって、
先人たちが長年の経験の中で培ってきたダイレクトマーケティングの
ノウハウを身につけることには大きな意味があると言えよう。
月刊『アイ・エム・プレス』においても、
これまでに多くのチャリティ関連の事例やノウハウを紹介してきたが、
中でもオススメは、巻頭カラーページの、
トーマス・コリンズ氏による「DR広告改造屋」だろうか。
これはコリンズ氏が広告を改造し、Before VS Afterの画像を交えて、
改造すべき点を解説するものだが、これまでの50回を上回る連載の中で、
何度もこうしたチャリティ関連の広告を題材にしている。